第20話7か月(痛いぞ、胎動)-1

 こうして晴れて(?)妊娠が学校公認となり、みんなの知るところとなった俺はそれだけでも気が楽になった。

今までのようにバレやしないかとハラハラしなくて済むし、思いのほか生徒達が(特に女子生徒が)やさしかった。


ただ一人、相川を除いては。


「もう~!いい加減にしてくれよ!」

「センセーの裏切り者~!」

「だからなんで俺が裏切り者なんだよ!」

「ぅわ~~~ん!」

朝礼で妊娠を告白した後からずっとこの調子で付きまとっている。

「裏切り者~~~!」

始終俺の後ろを泣きながらついて来る。

「人聞きの悪い事を!俺が何かしたみたいじゃないか!誤解されるだろう!」

「何もしてくれなかったクセに~~~!」

「意味がわからん!」

相川がずっとこの調子なので有らぬ噂が立ち、俺はまたまた校長室に呼ばれた。

「多田先生……あなたまさか……」

「ちっ、違います、違います!神に誓って何もしてません!」

「それなら、良いんですけれどね。デリケートな問題ですから、中には感受性の強い子が相川さんのように何かしら問題を起こすかも知れません。注意して他の生徒の様子も見ていてくださいね」

「はい」

「それと多田先生」

「はい?」

「本当に相川さんとは何も無いんですね?」

「当り前じゃないですか!相川は以前から何かと俺の事を敵対視していてですね、今回の事もどういう嫌がらせなんだか……」

校長は目を丸くさせて聞き返してきた。

「嫌がらせ?」

「嫌がらせですよ。嫌がらせ以外の何物でもないじゃないですか」

「嫌がらせねぇ」

俺には校長が何を言わんとするのかがわからなかった。

「多田先生」

「何でしょう?」

「あなた、とんでもなく鈍いですね」

「……はい?」

「いえ、何でもないです。わからないならそれで結構です。多田先生はそのままが良いのかも知れませんねぇ」

校長の言っている事がよくわからない。わからないまま部屋を後にした。


「ぅわ~~~ん!」

校長室から出て来た俺の後ろを、相川がカルガモのヒナの様に泣きながらついて来た。

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