第13話6か月(噛みながらカミングアウト)-1

 週末にはそれぞれが実家に帰る事になった。

静流の家は両親揃って元教師。特にお義父さんは校長まで務めた事がある。いわゆるインテリで厳格な家庭だ。その義両親がこの事を聞いてどう思うだろうか?


「ただいま~」

「お帰り、お姉ちゃん」

静流が実家に帰ると、結婚して離れて住んでいる妹の美千歌みちかがいた。

「どうしてあんたがここにいるのよ?」

「お姉ちゃんが帰ってくるってお父さんから電話があったから」

「博之さんはどうしたのよ?」

「仕事あるから置いて来ちゃった」

博之というのは義妹の旦那でやさしく、子煩悩で男の俺から見ても大変出来た人物だった。

「おばちゃ~ん!遊んで~!」

「あしょんで~!」

五歳と三歳の甥っ子達が静流に群がった。

「こら!『お姉ちゃん』って呼びなさいって言ってるでしょ!」

美千歌が子供のいない静流を気遣って『お姉ちゃん』と呼ばせているのだ。

「良いのよ、おばちゃんには変わりないんだし」

そんな風に言う静流に美千歌は目を丸くした。

「どういう風の吹き回しかしらねぇ。いつもだったら『おばちゃん』なんて呼ばれたら眉間にしわを寄せて嫌がってたのに」

眉間にしわを寄せて不思議そうに笑う美千歌に静流ははっとした。

(自分に子供が出来たから気持ちに余裕が出来たのかな?)

「だけど、どうしたの?お姉ちゃんが実家に顔出すなんて珍しい。……まさかっ!」

静流はどきっとした。

「まさかお姉ちゃん……」

美千歌の顔が近付いてきた。

「まさか……」

「な、何?」

「理さんが……」

どんどん詰め寄ってくる。

「お、お、理くんが?何?」

(何?何?もしかしてバレてるの?)

「理さんが浮気でもしたとか!」

(何だ~バレてた訳じゃないのか)

「もう!どうしてあんたはそう女性週刊誌にでも載ってそうな下世話な事ばっかり想像するのよ!」

「違うの?何だつまんない」

「つまんないって、あんたねぇ……」

「じゃあ、何しに帰って来たの?」

「……何しにだって良いじゃない。何か無いと帰って来ちゃいけない?」

「そんな事無いけど……。前はお姉ちゃん、帰って来る度にお父さん達に子供はまだか、子供はまだかって言われるから帰って来るの嫌だって言って実家に寄りつかなかったじゃない」

「それでも……、何も無くってもたまには帰って来たって良いじゃない」

「そう?何か隠してるようにも見えるけど、本当に何も無い?」

美千歌は意外と勘が鋭かった。

「あのねぇ、そんな事ある訳ないでしょ!テレビとか週刊誌の見過ぎじゃないの?」

(言えない!理くんが妊娠したなんて……!)

「ねえ~、おばちゃん、遊ぼうよぉ!」

静流は美千歌の子供達に呼ばれてリビングに行った。

「『お姉ちゃん』、でしょ!」

廊下を美千歌の声が響き渡った。

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