第7話1か月(取り急ぎ子宮)-5
それから数日後、さらに詳しい検査で子宮の状態が良いという事でそのまま手術が始まった。二回目の腹腔鏡手術はあっという間に終わった。その時に検査した結果を教授が詳しく話してくれた。
「キミの子宮の場合、子宮としては問題なく機能しているんだが卵巣が多少未熟でね。妊娠した場合、やはり定期的にホルモン注射をする必要があるみたいだねェ」
「妊娠って子宮だけじゃダメなんですか?」
「うん、子宮というのはこういう形で、こう卵巣があって……」
教授はカルテに絵を描いて説明してくれた。
妊娠という物は、思っていたよりも複雑な物らしい。
「とにかく妊娠を維持するにはプロゲステロン、つまりは黄体ホルモンが欠かせないんですよ」
「その、プロ……何とかが不足するって事はどういう事になるんですか?」
「流産になる確率が高くなるねェ」
「もし流産なんて事になったら……」
そこで実験が終わるのか?そんな事を期待していた俺を教授の言葉が恐怖へ導いた。
「すぐにでも開腹手術しないと出血多量で死んじゃうだろうねェ」
「は?!どういう事ですか、それ?!」
「流産した場合の血液や胎児、胎盤の逃げ道が無いからだよ。女性ならば膣があるから普通の生理同様排出出来るけど、キミは子宮と卵巣はあるが膣があるわけではないからね。お腹の中で出血すると血は止まりにくいんだよねェ。だから一刻を争う事になるね。もちろん普通の女性だったとしても大変な事だよ。すぐに処置しないと命の危険を伴う事だって有るし、身体的にも精神的にも大変なダメージを受けるよね。私が言っている事、わかるね?」
「はい……」
実は結婚してまもなく静流は一度妊娠した事があったのだ。当時忙しい部署にいた事もあって無理がたたって流産してしまった。
その時、静流は三日間部屋から出てこなかった。俺もどうしていいのかわからずに部屋の前でじっと待っていた。時々おにぎりを部屋の中に差し入れたが、一口ずつ齧ってあるだけだった。
三日目が過ぎた朝、静流は部屋から出てくると泣き腫らした顔で「おはよう」とだけ言った。その後は何も無かったかのように普通に振る舞った。そんな事もあって、さすがの俺も最近まで子供の話をあまりしなくなっていた。
「まあ、ホルモン注射と言っても定期的な検査のついでといった感じだからね。そんなに面倒でもないと思いますよ」
漠然と妊娠しなければ良いなぁと思ったが、同時に絶対妊娠するんだろうなぁとも思った。
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