Q2.最初に苦労したことは? A.やっぱり、先輩たちとの付き合い方(苦笑)①
淹れてもらった紅茶を飲み終わると、パーティション迷路を抜けて榊さんのデスクまで連れてこられた。
彼女のデスクには、ムキムキマッチョなアクションフィギュアがいくつか置かれ、謎のレスラーマスクが飾ってあった。なんでレスラーマスクなんだよ。
「あのー、榊さんって、プロレス、好きなんですか?」
榊さんはバキバキとパーティションをひっぺがして動かし、隣のデスクと自分のデスクとを、つなごうとしていた。
「そうよー。まぁ好きって言っても、下手の横好きだけどね」
そうなんだーって下手の横好きってなんだよ。やってる側ってことかよ。
まさか。……まさかな。
それより、今は、勝手につながれていく、隣のデスクだ。
「あの、いいんですか? 隣のデスク、その――」
「ああ、いいのいいの。大石くん、異世界行かされちゃったから、しばらく戻ってこないしね。それに一週間じゃ、デスクでやることもそんなにないだろうからね」
榊さんの手によって、彼女のデスクと隣――異世界に行っちゃったらしい大石さん――とのデスクの間の壁が、取り除かれた。大石さんのデスクは綺麗なもので、榊さんみたいな趣味のものは一切なかった。
しかし、異世界に行かされちゃったって言葉の意味がわからん。
「異世界に行かされちゃったって、ハネられたってことですか?」
「あー、ちょっと違うかな。まぁ、その辺の話は追々ね」
榊さんは、大石さんのデスクをビシっと指さし、一言。
「さ、そこ座っちゃって」
まぁ、今は言う事を聞いておくべきだろう。
言われるがままにデスクにつく。
自分のデスクの椅子に座った榊さんは、ぐわんと足を組み、ついでに腕も組んだ。そして、足先をプラプラさせて、何か考え始めた。
何をやればいいのか言われていない俺は、どうしたらいいのか分からないまま。
「えっと、とりあえず俺、どうしたらいいんでしょう?」
むむむ、とうなった榊さんは、何か思いついたようにファイルを取り出し、こちらに差し出してきた。
「ちょっとこれ見て。感想をどうぞ」
「はぁ」
言われた通りにファイルを受け取り、開いてみる。
男の写真とプロフィール。紙一枚のうっすいうっすい人生。俺と同じ。
名前は
最終学歴は高校中退。中退理由は、登校拒否。なんだか可哀そうだ。しかし、その後に続く補足、『自分のような才能には高校など不必要であると主張』の文言が、一瞬浮かんだ同情を打ち消してくれた。
収入なし、仕事なし。親の援助で自宅で生活。金をせびってネットゲーム生活。よくやるゲームは……パンテオン? どマイナーなゲームなんだろう。知らない。
普段は半引きこもり。一週間に一回、週刊誌を買いに外にでる。あとは自宅住所と電話番号。それに交際履歴? まぁ、当然なしと書いてある。
うーん。ちょっとうらやましい気もする。そうでもないか、独り者だし。
「なんていうか、ダメっぽい感じすね」
腕組みをしている榊さんは、目を瞑ってうんうん頷いた。
「やっぱ最初はそう思うよね」
違うのかよ。ダメな人じゃないのか、この人。
こっちの困惑を無視するように、榊さんはもう一つ別のファイルを取り出し、差し出してきた。受け取って中を開くと、美人のお姉さんと……なんだっけ、イタリアの方の建築物の写真。
「なんすか? この建物」
「パンテオン」
ああ、この宮殿のような神殿のような建築物はパンテオンって言うのか。
……って、まさか。
「あの、このファイルって……」
「そう、異世界側のファイル。細かい概要、書いてあるでしょ? まぁ、別に実行部には関係のない書類なんだけど、一応ね。明日その男がコンビニに出るから、そこで私たちがドカンとやって、パンテオンって異世界に送るってわけね」
マジかぁ。明日トラックでドカンとやるのかぁ。
「あの、俺は、その、今日は何をすればいいんでしょうか……」
榊さんはまたうんうん頷き、立ち上がる。
「じゃあ、明日に備えて、ちょっと練習、しておこうか」
練習って、トラックでドカンとやる練習をするってことか。まぁ、他にやることないっていうなら仕方ないけど、まだ現実感がないぞ。
榊さんはすでに横で「立って立って」のジェスチャーしてる。腰をかがめて、両手で「こっち来い」みたいな、なんでそんな大げさなジェスチャーしてんだ。
あんまり心象悪くしたくないし、疑問は口に出さずに、行くしかないだろう。
よっこらせっと立ち上がり、榊さんの後ろについていく。
するするとパーティション迷路を抜けて、エレーベーター。明日からこのパーティション迷路、迷わずに抜けられるだろうか。
一階に降りた俺たちは、受付嬢ちゃんの横を素通り駐車場へ。
正面からは分からなかったが、ビルの駐車場は無駄に広くなっていた。そこには大量の軽トラが並んでいる。しかし、よく見るとナンバーが全部黄色くない。なるほど、軽じゃねぇのか。
ダークグレーのジャケットのポケットに手を突っ込み、ゴソゴソしてい榊さん。鍵を取り出し、一台に近づく。
扉を開けて振り返り、一言。
「これが『異世界送り六号』私たちの、お仕事道具ってとこね」
これかぁ、ってこれでどうすんだろ。
「ま、とりあえず乗って、まず、練習場に連れてくから」
言われるがままに助手席に乗る。なんか『異世界送り六号』そこら中ベコベコに凹んでるんだけど。
これって要するに、歴戦の異世界送りの結果ってことなんだろうか。
無駄な疑問を浮かべている隙をつくように、運転席に座る榊さんがサクっとキーを差し、捻った。
――キュキュキュ、グウォオオン。オオン……
……これ、軽じゃないとは思っていたたけど、どう考えてもヤバい系排気量だ。低回転系。なんでこんな大パワーがないといけないんだよ。
「あの、これ、すごいエンジンっすね……」
他の言葉が見つからない俺に、榊さんは妙に可憐なにっこり笑顔を向けてきた。
「異世界に送るのに重要なのは、低速トルクの太さなのよ」
低速トルクの太さって。つまりあれか、見つけた瞬間に急加速して、一気にハネ飛ばす必要がありますよ、ってことなのか。
ぐぐっとアクセルが踏みこまれるアクセル。車はスムーズに走りだし、駐車場を後にする。『この後どうなるんだろう』という俺の疑問を駐車場に残して。
田舎道をすいすいと、やたら低い音を立てながら走る、我らが『異世界送り六号』。どこに向かっているのかはさておいて、こっちはあまりに手持無沙汰。
赤信号にひっかかり止まったところで、榊さんがこちらを向いた。
「ちょっと音楽かけていい? そんな遠くないし、すぐ着いちゃうんだけどさ」
音楽ねぇ……沈黙が続いて気まずいよりは、趣味に合わなくても音楽があった方が一〇〇倍マシか。素直に従っておこう。
「あ、いいっすよ。もう、バンバンかけてもらって――」
俺が言いきってしまうより早く、榊さんはなにやらガチャガチャやってた。
……ああ、これ、ラジオとか、オーディオとは言っても、カセット式なのか。カセットテープなんて、教授の研究室以外で見たの、初めてだよ。
軽トラのスピーカーがガリガリ音を鳴らして、軽快な音楽を流し始めた。
――チャッチャー、チャチャッチャッチャ、パラリロパラリロ……
なんだっけ、これ。子供の頃なんかで聞いたことあるぞ。あー思い出せねぇ。
――ブローン、ロアァァァン……
ス○イハイだこれ! あの昔の、有名だったらしいマスクを被ったプロレスラーの入場曲! この人、車の運転するとき、ス○イハイ聞くのかよ!
困惑する俺の顔ををちらりと見た榊さんは、なんか鼻歌まで歌って上機嫌。
「いいでしょ、この曲。あんまり若い人は知らないだろうけどねぇ。ミル・○スカラスっていうレスラーが入場曲に使っててねぇ……」
若い人って、多分そんなに年齢変わらないでしょうよ。見た目からして。
その後、上機嫌な榊さんは、伝説のマスクレスラーについて語った。それが終わると、今度はフライングクロスチョップの凄さについてが始まった。それらの語りは山中の採石場に着くまで続いた。俺は、すでにちょっとだけ辞めたくなってきていた。
採石場の一角に、掘立小屋みたいなプレハブと、私有地と書かれた看板。なんでここに来たんだっけか。ぷらんちゃーのためだっけか。
「――カンパーナなんかはバカにする人もいるけど――」
今はルチャにおける関節技の重要さについて語っている榊さんに、聞いてみる。
「あの、すんません」
「……なに?」
やべぇ、超不機嫌になった。
なんで仕事の話しようとしたのに、睨まれなきゃいけないんだよ。大体、ジャベだかサブミッションとか語られても困るんだよ。俺そんなにプロレス好きじゃないよ。
でもまぁ、誰だってノッてる時に止められたらムっとするか。仕方ないわな。
「すいません。その、なんで採石場に入ってきてるのかなって思いまして……」
「練習だってば。車降りて」
こちらに顔を向けたまま、ハンドルを指先でトントン叩く榊さん。
やべぇ、轢かれる。
流石にそんなことはなく、榊さんと共に掘立プレハブに入っていく。
掘立小屋には色々なサイズのベコベコにされた跡が残るダミー人形が、打ち捨てられたかのごとく乱雑に置いてあった。
「コレ、なんすか?」
「『異世界送られ君』……まぁ、いわゆるダミー人形というか、練習用の道具よね。明日やるのは身長一六八の体重五八キロだから、それでいいわ。足持って」
言われるままに中肉中背の『異世界送られ君』の足を持つ。ダミー人形にしては妙にやわらかい感触があった。まぁ練習で車壊したら元も子もないし、そういうものなのかもしれない。
俺と榊さんの初の共同作業によって、プレハブ小屋から連れだされる『異世界送られ君』。結構な距離を歩かされ、俺はちょっとイラっとした。
「ここらへんでいいわよ」
指示に従い、立てる。おお、すげぇ自立するよ、こいつ。
こいつ、うごく……はしないよな、流石に。って榊さんいねぇ。
キョロキョロ辺りを見回すと、いつの間にか人形から少し離れた所に移動していた榊さんが、俺を手招きしていた。
「んじゃ、コンくんはここで立って、ちょっと見ててね」
言われるがままに立って待つ。
榊さんは、なんかトテトテ車の方に走っていった。走る後ろ姿はちょっと可愛い。……でも、足はえぇし、尻の筋肉が発達してるんだよなぁ……
榊さんがこっちに振り返り、手を振りながら叫ぶ。
「行くよー!」
手を振り返して、分かりましたの合図。
榊さんは車に乗りこみ、エンジンスタート。車が走り出してくる――
ってやべぇ、ものっそい勢いでこっちに向かって走ってくる。怖い、怖い、怖い。
――グワッシャ
目の先で吹き飛ぶ『異世界送られ君』。一〇メーター近く吹っ飛んでいく。
……というか、空中で縦に一回転は、ヤバいだろ。
清々しさを感じる笑顔を浮かべ、榊さんは車から降りてきた。車の中から漏れている、妙に古い音楽。またなんかプロレスの曲だろう。JBってなんなんだ。
「さぁ、コンくんも一回やってみようか!」
「あ……はい」
二人で吹き飛んだ異世界送られ君を引っ張り、改めて立てる。
今度は榊さんが助手席に乗り込み、俺が運転席。ちょっと緊張。
JBJBJB……
「あの、曲止めていいっすか? ちょっと気が散って」
「まぁ、人によって、好みってあるしね」
「ほんと、ご迷惑おかけします」
榊さんは一瞬だけ眉を寄せた。しかし、特に怒ることもなく、曲を止めてくれた。意外と、ちゃんと話せば分かってくれる人かもしれない。常識人ではないが。
ちょっと車を動かして、『異世界送り六号』の特性を掴んでおこう。
……やたらとアクセルワークが難しい。まぁ低速域でドッカン加速なのだから、当たり前ではある。でも、下が砂利だからか滑る。すごい滑る。ちょっと踏むとタイヤが空転する勢い。
視線を感じて運転席を見ると、榊さんが心配そうな目をこちらに向けていた。
「大丈夫? もしかしてペーパー?」
「や、そういうわけでもないんですけど、この車、すごく運転が難しくて」
そうだ、ちょっとよいしょをしとこう。
「榊さん、よくこんな難しいの、すいすい動かしますね」
ニンマリ榊。この人、プロレスから離れると子供っぽいなぁ。
「まぁ、慣れよね、慣れ。とにかく一度、送ってみましょう」
言ってる事が無茶苦茶だから、前言撤回。
ちょっと距離を取って、アクセルを踏む。タイヤが空転しないように気を使って……って、思ったより速度上がらない内に『異世界送られ君』が――
グジャ
やべぇ。『ハネた』っていうより『轢いた』だ、これ。
「ま、最初はこうよね。分かってても、踏めないもんだし」
言葉とは裏腹に、超冷めた目をしている榊さん。絶対怒ってるよ。
「えっと、俺、異世界送られ君、立ててきますね……」
「まずバック。異世界送られ君、車の下よ?」
だから、怖いよ。初めてなんだから、もっと優しくして。
そこからの訓練は、思ったより時間がかかった。倒しては起こし、轢いては立てて、なかなか上手いこといかない。とにかく車のパワーに対して、路面が滑る。そして何より異世界送られ君の前まで来ると、どうしてもアクセルを抜いてしまう。
倫理観が邪魔。恐怖が邪魔。そして、隣で口にこそだしていないものの、イライラしているのが丸わかりの榊さんの気配が、超邪魔。熱すら感じるわ。コワイ。
それは、練習を開始してから、かれこれ二時間は経過してからだった。
怒りが積もった榊さんがとうとうブチ切れ、バカン、と俺の後ろ頭を軽く叩いた。
痛みは一切感じられなかったが、音は凄かった。
「すんません……」
「あのね、アクセル抜くなって何回言えば分かるの!? 相手は人形! ぶつかっても車は壊れないし、誰かが死ぬってわけじゃないの! いい!?」
あんんまりよくないです。すごい怖いよ、これ。
ぶつかった衝撃でフロントガラス突き破ったりしてきそうで、どうにも踏み続けるなんて出来ないって。むしろ、なんで踏めるんだ、アンタ。
腕組みをして、片足でタンタンタンタン地面を叩く榊さん。うなだれる俺。
「……まぁいいわ。もう一回だけやってみて、ダメなら今日はやめときましょ」
「あい……」
再び乗り込み遠くに見える悲哀すら感じられる『異世界送られ君』を睨む。チャンスは後一回。いい加減決めないと、折角のインターンシップが泡となりかねん。
助手席の方を見ると、榊さんがカセットテープをデッキに入れていた。何度か再生と早送りを繰り返して、止める。何やってんだろう、今度は。
「それじゃ、曲かけるから、曲に合わせて踏んでみて」
なんだよそれ。どういうことだよ。でもまぁ、散々迷惑かけてるし、従おう。
「あい」
走り始める車。榊さんの手によって押されるデッキの再生ボタン。
流れはじめるス○イハイ。
車はどんどん加速して、『異世界送られ君』に接近する。あ、これ、サビ部分を出そうとしていたのか。
――カイハァァァイ
アクセルペダルを、音に合わせて踏み切る――
グワッシャ
吹っ飛ぶ『異世界送られ君』。
宙を舞い、空中で伸身の月面宙返りを見せ、地面を滑った。
「やった! 完璧よ、完璧!」
ウグイス嬢ならぬ、『完璧とコールする嬢』と化した榊さんの弾む声。
マジか。パーフェクツだったのか、今ので。なんか俺、すごい罪悪感と言うか、やっちまった感が体を支配してるんですけど。どう考えてもこれ、できるようになっちゃいけない奴なんだけど。
「……そっすか」
やべぇ。返事にも気合い入れられねぇ。なんかすごく凹む。
っていうかこの練習方法って、軍隊とかでやる殺人の抵抗感を減らす訓練とかいうのと同じだ。なぜ射撃練習場では人形の的を使うのか、とか、そういうヤツ。
……まぁいいわ余計なことは考えない。とりあえず榊さん喜んでるし、流されておこう。
その後は、二人でダミー君を倉庫に戻し、榊さんの運転で会社へ戻ることに。しかし、帰路の途中で腹が鳴ってしまった。古いプロレス入場曲テープをやたらと色々流して上機嫌の彼女は、小さな蕎麦屋に入ってくれた。ちょっと遅すぎる昼飯だ。
その古ぼけた田舎の蕎麦屋は、なんというか、昭和だった。ビニールカバーをかけたサイン色紙が超ベタベタになってて、なんか手形とか一杯あった。
店に入るなり榊さんが、おばちゃんに向かって慣れた発声。
「モリ一つ」
終わった。この時点でモリソバ以外は食えなくなった。店の店頭サンプルで見た山菜蕎麦とか超美味そうだったのに。高速、低価格、安心、安定、モリ、確定です。
「じゃあ、俺も同じので」
「いいのよー。なに頼んでも。今回は奢ってあげるし」
喜ばないし、騙されない。これは罠だ。じゃあぼく、天ぷら蕎麦! なんて言った瞬間に、車の中で言ってたカベルナリアとかいう痛そうなのを食らわせられる。
だから、ここはいい子ちゃんを突き通す。
「やー、まずは先輩と同じものって感じで、そっからっすよぉ」
露骨に嫌そうな顔をする榊さん。なんでだよ。なんでそんな嫌そうなんだよ。
「なんか狙ってるの? 言っておくけど私、ノータッチ・トペ・スイシーダを出来る人以外とは、付き合ったりとか、ないからね?」
ノータッチ……なに? なんだ、その痛そうなの。採石場に行く途中で語ってた技の中にもあった様な気がする。しないし、まずどんなのか分からないよ。
「ははは……」
笑っとけ笑っとけ、と思いはしても、口から出るのは愛想笑いより酷い、乾いた笑いだけだった。
――ドグァン
目の前に雑に置かれるモリソバ。なんでそんな雑に置くんだよ。
目を向けると、顔が完全にしかめっ面になってる婆。
怒っているのか小刻みに体が震える婆は、榊さんにジロリと目を向けた。
「ヨウちゃん。この店ではシュートとストロング以外の話は禁止のはずだよ」
意味分からねぇ。しかも、知り合いかよ。
榊さんは真剣な目を婆に向けた。
「ルチャにだって、シューターは一杯いる」
もっと意味分からねぇ。
俺の知ってるシューターってシューティングゲームが好きな、気の良い兄ちゃんだけだよ。絶対榊さんの言ってる意味とは違うだろうけどさ。
もういいや。折角冷水で締められた蕎麦が、温くなっちまう。緩い盛り蕎麦は嫌いなんだよ、俺は。にらみ合いを続ける婆と榊さんを放って、蕎麦を啜った。
心を無にして、周囲の状況を完全にシャットアウトしたまま食事を終える。
トイレに行って帰ってくると、婆と榊さんは謎の意気投合をしたようだった。
なんでも、俺の分のモリ蕎麦は奢りになったそうだ。二人とも同じもの頼んでるんだから俺のも榊さんのもないだろうに、俺の分のモリは奢りと強調された。
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