第10話 野良犬ポチット、ポチット現る。
都内にいる47匹の野良犬の頂点に君臨している野良犬の中の野良犬。野良犬であれば誰もが知っているポチット。野良犬だけにはとどまらず、本当に犬好きの人間であれば誰もが知っている、名犬ポチット。
ポチットに助けられた人間は100人や200人ではない。ある者は川で溺れかかったとき、ある者は山で遭難しかけたとき、ある者は車に轢かれかかったとき、そしてある者は公園のトイレに駆け込んで、一唸り後、紙がないことに気がついたとき、どこからかポチットが現れ助けてくれたのであった。
ポチットについての神話は数限りなくある。メキシコのサボテンの横にいたサソリと戦っていた。アフリカのサバンナで20頭のライオンを引き連れて歩いていた。インドの虎の背中で昼寝をしていた等々、その真実は定かではない。
しかし、警察犬を差し置いて、凶悪犯人を見つけ出す。誘拐犯を追い詰め、子供を助け出した。麻薬や盗品を探し出すなどは真実である。したがって警察犬からはこの野良犬チワワはよく思われていない。
野良犬だから、見つかれば捕まり処分されてしまう可能性もある。
誰もがポチットをよく思っているわけではない。野良犬だから早く捕まえて処分をしようとしている者もいる。
このチワワ犬野良犬ポチットを見つけ出そうとしている一人が我らの居眠狂五郎警視庁本庁捜査五課長である。
「なんとか、ポチットを警察犬に仕立て上げ、俺の膝の上に乗せておけば、俺の仕事も半減するはずだ」
半減したらほとんど仕事がなくなってしまうにも関わらず、まだ仕事を減らそうと取り組んでいるのであった。
さて、久利西瓜が清だら爺の首根っこにとびかかろうとした瞬間、ポチットが久利西瓜のズボンに噛みつきズボンを引きずり下ろし、むき出しになった尻にさらに噛みついた。
ギャーといった叫び声に、通行人が一斉に110番に電話をした。
「尻をむき出しにした、おかしな人間が騒いでいる」
といった内容の通報が、110番に同時に10件寄せられた。
パトカーが現場に急行する。
グログロイムズの掟で、絶対に警察には行ってはいけないことになっている。それは、たとえ財布を落としてしまっても、道に迷ってしまっても、この掟は忠実に守らなければならなかった。
もし警察に捕まった場合は、その時点である恐ろしい行為を、自分に行わなければならなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます