episode 2
目を覚ますとレインが此方を心配そうに覗いていた。
「おはよう。」
先程の心配そうな顔は消え、優しい笑顔に戻っていた。
「おはよう。レイン。」
私も口を開く。そして私は朝ごはんの為にリビングへと向かう。
「あれ?」
ふと出た言葉はこれだった。なぜあれ?なのかと言えば私とお父さんと笑顔の優しいレインの様な女性が映っている写真があったのだ。みんな思い思いの精一杯の笑顔を浮かべていた。でも自然にそうなった様な気もした。母の面影も母の匂いも母の味も母の姿も忘れ消えた私には母とは思えなかった。元々母なんて伝説私は父と祖母からよく聞かされていたけど母の死後二人は母のいる写真は全部捨てたり消したりして残念ながら私は一度も母の死後から母の写真を見ていないのだ。如何して父と祖母は私に母の顔や色々な物を見せないのかは不思議だが。
ことんと机の方から音がして振り返ると朝ごはんが置かれていた。
「そこに突っ立ってないでこっち来て。一緒に朝ごはん、食べましょ?」
レインはそう言いながら手招きしていた。確かにお腹が空いてリビングへと来たのだから食べないと始まらない。私はうんと、レインに言って席に着いた。
今日の朝ごはんはご飯に、塩鮭に、味噌汁に、おひたし。なんか懐かしいメニュー。頂きますと言って、私はご飯を口にする。昨日はカレーと食べていたから気にしていないけれども、ご飯も家で食べた様な味だった。でも最近じゃなくてもっともっと前に口にした様な味だった。全てにおいて見たことのある、または食べたこと、口にしたことのある様な味など、初めてというより懐かしいと思う物、事、味だった。如何しても気になって食べて、片付けをした後ピアノの置いてある部屋へと入ってみた。そしてピアノの前に座り思い出せる限りの曲を弾いてみる。
動く手。不思議だった。最初に聴いたあの曲を私の手が弾いているなんて。
音が…懐かしい綺麗な音が聞こえる。
見えた。
見えた気がする。
母のメッセージ
が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます