第6話実技訓練
今日は近接戦闘の実戦訓練だ。
今回の教官は…。残念ながらアレン大尉だ。それだけで気分が滅入るな…。
「さぁ。お前達。今日は筋肉バカなおまえらに正しい体の使い方を教えてやる。心して聞け。」
相変わらず偉そうだな…。
「しかし、大丈夫か?今日の授業サボっても良かったんじゃあ…。」
心配そうにジャックが聞いてくる。
確かに目が見えないなら、近接戦闘なんて無理だろう。相手がどこに居るのか、どういう動きをしているのかも、分からないからな。
「大丈夫だよ。心配すんな。」
「なら、良いんだけどよ…。アレン大尉の嫌がらせがあるかも…。」
と、言ってるそばから俺の名前が聞こえた。それもハゲの男から。
「お前ら。よく聞け。今回は優秀なフェルメール君が実技を見物させてくれるそうだ。こんな機会は滅多にない。好きなだけ相手してもらうと良い…。」
予想通り…か。
ニタニタと笑う顔が目に浮かぶ。
そして…、周りの奴らもそんな感じみたいだ。俺の事が気にくわないらしいな。
まぁ、当然だ。新人のくせにいきなり、少尉だからな。
「ああ。失礼ですが、フェルメールは俺と組むんで、代わりに俺が実技を見せますよ…?」
心配性なジャックが庇ってくれる。
が…。
「いや?そんな物は必要ない。私はフェルメール君に言ったんだ。なぁ?フェルメール少尉よ。快く承諾してくれるよなぁ?」
おいおい。口調変わってんじゃねぇか…。
ほんとに嫌な教官だ。
こういう奴はとことん潰してやらねぇと気が済まない。
やってやるさ。存分に。
「ええ。構いませんよ。」
「おい!?フェルメ…。」
俺は焦るジャックに合図を送る。
昨日、俺たちで決めた合図。
「心配するな。」
と。
「うむ。実に良い…。それでこそ、我が軍のホープだ。」
ふん。よく言うよ。そんな思ってもないことをさ。
俺はウォーミングアップをする。
すると、ざわざわと周りの声が聞こえてくる。
「あの馬鹿、絶対負けるな…。」
「さぁ、どうする?とてもとても優秀なフェルメールさんは…。」
確かに不利だ。だが…。
父に教えられたのだ。不利な所から勝つのが1番強い奴だと。
その勝つ方法も教わった。
(目に物を言わせてやるよ…。)
俺は心の中で言うと、実戦へと向かう。
そこに立っていたのは筋肉ムキムキの男だった。それもゴッツイ。
血の巡りから見ても体格差は歴然だ。
「さぁ。オールディス・ジョーン上級曹長。君が相手をしたまえ。」
「ええ…。光栄です。教官。」
そう言うと、おれに握手を求めた。
かなりの力を込めて握って来る。
そして、ぐっと近づき囁く。
「殺してやるよ…。フェルメール。」
「…………。」
どうやら俺は思ったより血気盛んらしい。
絶対ぶっ倒してやる…。
「やってみろよ…。カマ野郎。」
「っ!言ってくれるじゃねぇか…。」
また、相手の血の巡りが活発になる。
「尚、ルールは特にない。どちらかが意識を失うまで続けるものとする。」
教官のルールとは言えない説明が入る。
「おい!絶対負けんなよ!」
みんなが俺に負けろと言っている中、一人だけ俺を応援する者がいる。
ふぅ…。集中しよう。集中…。
段々と分かる…。相手の細胞の動きが…。
「では…。初め!」
教官の声が脳に響く。
と、同時に相手が即座に攻撃を仕掛けてくる。
シュッ!
人間は行動をする際、細胞に信号…。つまり、命令を送る。それを読み取れば、避けるのは容易い。
フッ!フッ!フッ!
次々と出される攻撃を何とか避ける。
「クソッ!何だよお前!」
段々と攻撃が大雑把になってくる。
今だ!
おれは拳を力一杯握り締め、相手の首へ目掛けて振り下ろす。
ドスッ!
「うっ!」
すると、男はスイッチをオフにしたように倒れて、動かなくなった。
人には神経があると共に、神経が交差してる部分がある。そこを狙うと、脳が勝手に危険信号を送り、体が動かなくなるのだ。
もっとも、人にやるような技じゃあない。
俺は倒れたのを確認すると、集中力を完全に切って、一言。
「早く数えてくれますか…?」
俺は教官に聞く。
「ぐっ…!1…2、3。勝者、フェルメール…!」
ふぅ…。終わった。
周りのみんながざわざわと騒ぎ出す。
ふん。ざまぁみろ。オールディスとかいう奴には悪いが…。また、教官の裏をかいてやった。
明らかに血の巡りが頭へ…。
怒ってる証拠だ。ああ。清々した。
俺はその場をジャックと共に後にした。
もうこんな事はしたくないな…。
色んな意味で。
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