第5話優秀な生徒


射撃訓練が終わり、次の日は座学だった。


目が見えない俺はどうしても、苦手意識を持ってしまう。


だが、今回はジャックに聞きながら、授業を受ける事にした。


「ありがとな。ジャック。面倒くさいだろうに、引き受けてくれて…。」


「別にこんぐらいどうって事ない。あんたと授業を受けれるなら安いもんだ。」


第一印象こそ悪かったものの、今では良い奴だとちゃんと分かる。


しっかりと人を見る目を養わなきゃな…。


カンカンカンッ!


と、どうやら先生が黒板を叩いてるな。


「諸君。喜びたまえ。授業の時間だ。私はエイリー・バークレイ中佐だ。ここでは最低限の礼儀さえしていれば良い。他の奴等は堅苦しくて疲れるだろう?」


部屋のみんなが思わず笑う。

良い先生じゃないか。少なくともハゲのアレン大尉よりは…。


「さぁ、静かに!授業を始めよう。教本の9ページを開いてくれ。」


ぺらっとページをめくる。凹凸で何とか読み取れるが…。時間がかかってしょうがない。ジャックに聞こう。


「すまん。教えてくれ。」


「あいよ。先ずは戦闘時のサインと、掛け声について…。だな。」



「さぁ。今日は基本的な掛け声とサインの説明だ。みんなついて来いよ?」


アレン先生の声が響き渡る。


「まず。原則として、君達は5人程の部隊で活躍してもらう。その中でのサインや掛け声について教えていく。」


「ええと。先ずは信号弾についてだ。赤色は勝利した時の撤退を意味する。逆に青色は一時撤退。緑色はその場で待機だ。」


どんどんと授業を進めていく。

幸いにして、あまり黒板を使わないみたいだからあまり影響は無い…かな?


「そして、黄色は進軍。以上の4つが信号弾の種類だ。その時の色を見て、部隊ごとで行動してくれ。」


「この信号弾については部隊のリーダーとサブリーダーに支給される。リーダーになる奴はメモしておけ。」


「そして、詳しい状況は無線を通して伝える事になる。無線機は左胸に付けて、使用する様に…。」


「また、装備については…。」


その後、装備や掛け声についての授業を受けた。


基本的に、レイブンは少数部隊の構成だから、掛け声は各自で決めて良いそうだ。


そして、装備についてだが…。レイブン達は、スプリングフィールド1903と言う、アメリカの傑作銃を使用する。


何やら新兵器らしく、このチームレイブンの中で実践配備し、感想を聞かせて欲しいそうだ。


また、それぞれのナイフやら拳銃やらの説明を受けた。


そして、授業を終える。


ジャックと一緒に帰ろうとしたその時、


「ああ。ちょっと待ってくれるか?」


バークレイ中佐に呼び止められる。


「何ですか?」


「二人に言いたい事があってね。ちょっと付き合ってくれるかい?」


ーー?不思議に思いながらも了承した。




ーーーーーーーーー


何やら別館の研究室に連れてこられ、ある物を見せられた。


「おおっ!すげぇな。コレ…。」


まぁ、俺にはわからないのだけれど。


「実は今、研究中の銃があってね…。まだ、試作段階ではあるんだが…。今の銃とは比べ物にならない性能がある。」


中佐は言葉を続ける。


「そこでだ。優秀な君たちに是非これを使ってる感想を聞かせて欲しい。好評な様だったら量産して全部隊に配備したいと思っていてね。」


「はぁ…。分かりました。」


「ところで、この銃は…?」


気の無い返事しかしない俺とは対照的に、ジャックはかなり食いついてる。


「ああ。Mk.14と言ってね。本当に最新の技術を駆使して作ったんだ。まだ予算から言って、二人分しか作れないんだが…。」


「この銃は恐らく、わが軍に勝利をもたらす事になる。それを君たちに使ってもらいたいんだ。」


興奮しているのか随分語る。


「中佐。詳しい説明は後に…。」


「ああ…。悪いね。つい、ハイになっちゃって。悪い癖だ。」


俺がストップをかけると、少しシュンとなった。なんか、可愛いな…。


「まぁ、使ってみてくれ。君たちがこの銃をにぎる第1号だからね。」


よほど期待しているのか…。


「しかし、今のスコープとは比べ物になりませんね~!これは。こんな物初めて触りますよ…!」


ジャックも実際に銃の感触を確かめると興奮した様に話す。


「ああ!分かってくれるかい!?」


「ええ!これは確かに凄いものだ…。感激しましたよ!」


ああ…。何だか一人だけ取り残されてるな…。まぁ、良いけど。


「いやぁ、本当に苦労したんだ。この技術は恐らく30年…。いや、もっと先を行っているだろう…!興奮するよー!」


何だか分からんが…。凄いものなのは分かった。


今日はジャックや中佐の違う面を見れて面白かったな…。


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