第4話最初の試練
日も改まり、訓練が本格的に始まった。
そして、全員が呼び出され、上官からの一言。
「今日からお前達を訓練する事になった、可哀想な上官。名前はオルコット・アレン大尉だ。よく覚えておけ…。」
声からして、厳しい人物なのだと分かる。
「おい、フェルメール。あいつの頭見ろよ。毛根1つすら無いぜ…。」
隣から、笑いを我慢しつつ、感心したように言う…。
スキンヘッドなのか…。そこまでは分からなかったな。
「今喋った者…。速やかに名乗り出ろ。」
静かに怒りを込めた感情が伝わってくる。
流石に不味いと思ったのか、ジャックは姿勢を良くして無言になった。
「ふん。まぁいい。臆病者はこの訓練を直ぐにリタイヤするからな…。」
アレン大尉は言葉を続ける。
「ここにいる者はレイブンの称号を貰い、浮かれて女に自慢する奴も居るそうだが…。」
「喜べ。直ぐにその称号を剥奪してやる。ここでは、心も体も一から叩き直す…。覚悟しておく様に…。」
どうやら精鋭部隊なのは間違いないが…。やっていけるか分からんな…。
だが…。愛国心を示すだけだ。俺は。
「さぁ。有難い言葉もここまでだ。今から10分後、訓練を開始する。遅れたものは腕立て伏せ500回だ。体力に自信が有るなら、遅れてくるんだな…。」
厳しい言葉を受け、みんな訓練所へ急いだ。
俺も行くか…。この前の案内で場所は完全に把握している。
俺は少し駆け足で向かった。
ーーーーーーーーーーー
「さぁ…。どうやら皆体力に自信が無いみたいだな…。まぁ良い。今からは射撃訓練を開始する。それぞれ自分の銃を組み立て、位置につけ。」
訓練が始まった。銃はそれぞれ支給されていて、少尉クラスからは好きな銃を選べる。
アレン大尉の言葉を聞き、みんな急いで銃を組み立てる。
俺も位置につくか…。
俺は位置につき、的を確かめる。
そして、次にバックから取り出し、部品を触って確かめる。
む?パーツが1つ足りない。
何故だ?昨日まではあった筈だ。
俺がパーツを探していると、アレン大尉の顔がにやけているのが分かった。
なるほどね…。新人の俺にいきなり試練を下したって事か?
幸いにして、このパーツは無くてもいい。
だが…。命中率はかなり下がるだろう…。恐らく、それを試したかったのか…?
やってやろうじゃ無いか。
俺は気を引き締めると組み立てを開始した。
ガチャ!
30秒ジャスト。良いタイムだ。
そして…。的を狙う…。
スコープで覗き、位置を確かめる。まぁ、スコープはほとんど意味が無いが…。無いよりマシだ。
狙いを定め、息を止める…。
ガンッ!
見事に的を命中した…。と思う。
音がしたから間違いないだろう。
そして、続けて撃つ。
ガンッ!ガンッ!ガンッ!
直ぐ隣にいるアレン大尉に聞く。
「当たりましたかね?目が見えないもので…。教えて頂けますか?」
当然、当たったのは知っている。
皮肉だ。少なからず頭にきていたから。
「……。うむ。丁度ど真ん中…。といったところか。」
やはり、腕を疑っていたのか、驚いた声で返してくる。
「それは良かった。ところで…。パーツはどこにあるか知っていますか?」
「何の事だ…?」
アレン大尉の血の巡りが活発になる。嘘をついている証拠だ。
いくら感情を包み隠しても体は正直に答えるものだ。
「まぁ、別にいいのですが…。」
俺がそう言うと、小さく囁いた。
「気に食わん奴だ…。」
「え?」
「いや…。何でも無い。」
ふん。聞こえてるっての。
わざと言ったんだよ。ああ、清々した。
全く…。腕試しと言えど、パーツを隠すなんて。嫌がらせにも程がある。
俺はその日も満点を取り、訓練を終えた。
自室に戻ろうとした帰り道。
「よぉ。フェルメール。やっぱり、あんたはすごい奴だよ。ほんとに…。」
ジャックか。集中してしないと分からないな…。
「ああ。サンキューな。」
「しかし、アレン大尉にも困ったもんだよ。パーツを隠すなんてよ…。」
「えっ!?知ってたのか?」
思わず聞き返す。
「知ってるも何も俺がそうだったから…。ってお前もか?」
そう言う事か…。どうやらアレン大尉はジャックにも試していたらしい。
だが、他の奴が焦ってる様子はなかった。俺とジャックだけ試されたのか?
「ちなみにジャック。お前は何点だった?」
「85だったかな…。確かな。」
85点…!あの状態でよく取れたもんだ…。少し見くびっていた…。
「お前もかなり凄いんだな…。」
思わず感動の言葉が溢れる。
「ん?あんたほどじゃあ無いさ。」
「そうかね…?」
その後はジャックと自室で話し合った。
どうやら、ジャックは元々、陸軍学校を首席で卒業した優秀な生徒らしい。
それで、アレン大尉に目をつけられていた…。のかもしれない。
そして、話してみるとジャックの事が分かってくる。
何だ。良い奴じゃないか。
一緒に生き残れると良いな…。
大戦に駆り出される日もそう遠くない。
その時までは…。生きていたいな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます