第3話レイブンの称号

その後直ぐに大佐に道案内して貰い、チームレイブンの部屋へと向かった。


そして、別室へと連れてこられた。



ガチャ!



ドアが開いた音がするかと思えば、随分、年喰った男の声がした。



「おお。君が例の狙撃兵か。」


「ええ…。そうみたいです。」


「なんだなんだ!もっと自信を持ちたまえ。君ほどの腕なら誰も文句言うまい!さぁ。話を聞かせてくれ。」


「ああ。はい。」


そう言うと、俺の手を引き椅子へと連れてこられた。


男はどかっと座ったかと思うと、煙草を吸い始めた。


「ふぅ…。」


煙の匂いが部屋を包み込む。


男は煙草を吸いながら話しかけてきた。


「しかし、盲目なのに良くそんなスコアをたたき出せたもんだ。満点だったぞ?我が軍初だよ。」


「ええ…。そうみたいですね…。」


男は笑ってこう、返した。


「本当は目が見えるとか、そういうオチじゃ無いだろうな?」


「いえ…。昔から視覚以外の感覚が鋭いんです。」


「ほう?どんなだね?」


よほど俺の事に興味があるのだろうか…?


「例えば…。そうですね。貴方は白髪交じりの40前後の年で、高血圧だ。加えて、右手の小指が無くなっている…。戦争で怪我でもしたんですかね。」


男は驚きの声を上げた。


「何だ!?君は?超能力か何かか?」


俺は思わず、フッ。と鼻で笑ってしまった。いつもの反応でつい。


「違います。貴方の心臓の音や、血管の音。更には細胞の動きなどを読み取って、貴方の体の構造や、年齢…。どの部分が弱っているかが分かるのです。」


そう。俺は目が見え無い代わりに極度の集中状態になれるらしい。

昔、医者にそう言われた。


その状態になると、離れた相手でも動けば直ぐ分かるし、ましてや、じっとしてても、心臓や細胞の動きで分かってしまう。


まぁ、いつもこんなだったらおかしくなりそうだが…。スイッチみたいに簡単にオンオフ出来る。


これが有るから、今までちゃんと生活してこれたとも言えるが…。


「やはり…、超能力みたいだな…。」


「…。そうかも知れませんね。」


こんな能力よりも普通に目が欲しかったよ…。


「君の腕を疑っていたが…。コレを見ると、そうも言ってられ無いな…。」


男はそう言うと、手を握ってきた。


「ようこそ。チームレイブンへ。君を歓迎するよ。隊長としてね。」


「ありがとうございます…。」


しっかりと握って来た手には力が篭っていたが…。確かに右の小指が無かった。


「私はグラント少佐。グラント・アダムスだ。よろしく頼むよ。」


「はい。私はフェルメールです。宜しく。」


礼儀正しく自己紹介を交わす。


「ああ…、そうだった。君にも階級が与えられたんだったな…。」


「え?そうなんですか?」


「ああ。軍に入るんだ。当然だろ?」


まぁ。確かにそうか…。なければ兵士とは言え無いのだから。


「君は少尉だ。ここまでの階級を新人に上げるのはチームレイブンといえど、異例だがね…。」


「少尉!?そんなに偉いんですか?俺は。」


思わず聞き返す。だって、グラント少佐と3つしか違わないじゃないか!


「うむ。まぁ、頑張りたまえ。これからは第二次大戦が始まる。死な無いように祈るよ…。私に言えるのはそれだけだ…。」


そうだ。これからは始まるのだ。


大国と大国同士の大戦が…。


死ねばこの階級も意味がなくなるからな…。


「この鍵を渡しておく。君の個室の鍵だ。基地内では基本的に何をしても構わ無いが…。」


今、少し強張った顔をした様な…。


「基地の外には出るなよ。脱走兵と見なされ、いくら偉くとも、厳しい処分を受ける。ちゃんと許可を得てからにしてくれ…。」


ああ。そうなのか…。


だが、もう覚悟は出来た。俺は「愛国心」を示すだけだ。


俺は自室へと案内を頼み、荷物を置いてから、基地内の休憩所へ向かった。


少し、今日は疲れた…。


売り場でジュースを買い、一服。


ああ、煙草は吸って無い。吸ってるやつの血管の動きが凄いことになってるからな。


一息ついていると、若い男が話しかけてきた。


「よぉ。あんたがフェルメールか?」


「ああ…。そうだが…?」


「ヒュー!良いねぇ。あんた、いきなりの階級が少尉だろ?そう言うデキル男とは仲良くしたくてねぇ~!」


何やら軽薄そうな男だ。声だけで分かる。


「馴れ馴れしい奴だな…。今はくつろいでいるんだ。邪魔し無いでくれ…。」


だが、男はしつこい。


「そう言うなよ!兄弟。これでも俺はチームレイブンの一員なんだぜ?」


「何…?お前が…?」


想像がつかない。まぁ、血の巡りからいって、体力はあるな。身体能力も悪くないだろう…。


男は敬礼しながら挨拶する。


「そうさ。俺はジャック。アルフォード・ジャック三等准尉だ。よろしく。フェルメール少尉。」


む。俺よりは下だが…。結構こいつも偉いんだな。人は見かけによらぬものよ…。いや、見えないか…。


その後はジャックと暫く話して、自室へと戻った。









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