第2話父の考え
結局、その日は基地の自室に帰らされ、一晩を過ごした。
俺はこれからどうなるんだ?
普通なら兵士にもなれない筈なのに…。
ましてや、狙撃部隊だなんて…。
無茶が過ぎる。このまま逃げ出して、普通の生活を送ろうかと思った。
だが…。盲目の俺は1人で基地を出ることすら叶わない。
ただ…。軍のお偉方に従うしか無かった…。
そんな事を考えていると、夜は明けた。
朝起きて、顔を洗っていると、
コンコンッ!
と、大きな音を立ててノックされた。
「んだ…?こんな、朝っぱらから…。」
俺は渋々、ドアを開けに行く。
ガチャッ!
「はいはい、何の用ですか?」
俺がそう言うと、聞き覚えのある声が聞こえた。
「私だよ。マッケンジー大佐だ。昨日のことを覚えているかい?」
ああ…。昨日のお偉方か…。
こんな朝からご苦労だな…。
「はい。で?何の用ですか?」
すると、ムッとしたのか少し声を大きくして喋った。
「フェルメール。私は、君の上官でもあり、この基地の最高責任者でもあるのだ。言葉に気をつけたまえ….。」
「すいません。マッケンジー大佐。善処する様心掛けます。」
上官なのは分かるが、本来なら俺はここにはいない筈の人間なんだ。
そんな事言われたって…。
「それで…。君の処遇について詳しく決まった。これを見てくれ。」
パッと紙を出された様だが…。
「大佐。私は目が見えません。失礼だとは承知していますが、読み上げて頂けますか?」
すると、大佐はさも、思い出した様に言葉を返した。
「おお、そうだったな。失礼。」
大佐は言葉を続ける。
「フェルメール・クランク殿。あなたを正式に狙撃部隊、チームレイブンに所属する事を決定致しました。尚、訓練を受けた後、実戦部隊でも、参加する事をここに記します。」
「…………。」
本当に決まったのか…?
全然実感が湧かない。
「尚、部屋や、施設に関してはチームレイブン所属のグラント隊長が教えてくれるだろう。」
「はぁ…。そうですか。」
気の無い返事しか出来ない。
当たり前だ。こんな事を押し付けられれば誰だってそうなる。
「君の亡きお父さんもきっと天国で誇らしく思っているだろう。」
「…………。」
そう。父は俺が15の時に死んだ。
優しい父だった。だが…、
「祖国を守る為なら、何でもしなさい。」
そう、言われ続けてきた。
死ぬ直前すらも…。
確かに、国を思う事はいい事だ。
正しい事だし、文句はない…。
ただ…。俺には「愛国心」と言うものが分からない。
国に尽くせば愛国心を示した事になるのか?
それとも愛する家族を守ればそうなるのか?
色々な考えが頭の中で混ざり合って、よく分からない事になっている。
俺には…もう、家族はいない。
一人っ子だったし、親ももう、死んだ。
もう、俺には国に尽くしか…。
俺はそこで、考えを止めた。
国に忠を尽くす事が父の言っていた…。
「愛国心を示すことなのだと。」
俺は大佐に礼の言葉を言うと、チームイレブンに待つ、グラント隊長の所へ向かった。
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