第2話

そのちよとの不思議な出会いがあってからは記憶が飛ぶ事が少なくなった。

しかし、依然として心のもやもやというかしこりは取れていなかった。

ある日曜日、いつものように家でだらだらとしていた。

ちよの事をふと思い出したが、なんてことない日常の一部として記憶に残っているにすぎなかった。

毎週日曜日の過ごし方は至って単調であった。

友達はみんなバイトなので遊ぶ事ができず、家寝て過ごすか駅前まで買い物にぶらりと行くくらいだった。

今日はあまりにも暇で、だらだらしている事にさえ飽きていた。

そしてもやもやとイライラが一層つもっていた。

『気分転換にどっか行こうかな…買い物でもしたらこのもやもやした気持ちが取れるかもしれないな。

』なんて考えていたらマンションの会合から母が帰ってきて愚痴をこぼしだした。

「本当嫌になるわ…。このマンションに捨て猫が住み着いてるって話でね、誰かが餌あげてるんじゃないかって家まで疑われたのよ。失礼しちゃうわ。」

母親は会合の後、毎回愚痴を言うのだ。私はとりあえず聞いてる振りをして頷いた。

「奈々、ちゃんと聞いてる?猫の捕獲の日はあなたも手伝うのよ!」

「え〜、めんどくさい…猫なんてほっとけばいいのに。捕まらないよ、きっと。」

「そのままにしておけないんだって。ゴミでも荒らされたら困るからね。」

「…なんか可哀想。」

私は見たことないその捨て猫を思い浮べて、なぜだか無性に虚しさを感じた。


その捨て猫と自分がたぶってみえたのだ。


周りに翻弄されて自分ではどうすることもできない状態の私と猫。


形は違うけど似たようなものに思えた。


そして、今までもやもやしていた気持ちを忘れ、誰よりも先にその猫を見つけて逃がしてやろうと思った。

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