第4話

 よし主人公のグラフィックが完成したとはしゃいでいた僕だったが、直輝君から、添付したデータが使えないと連絡がきた。おかしいな、きちんとgif形式で保存しているはずのに。僕だけでは原因が分からないので、一花先輩に相談して、もう一度明日合うことになった。


 次の日の放課後、空き教室に僕が着くと、すでに一花先輩はマイノートパソコンとともにご到着だった。あ、ちゃんとペンタブがある。メモリースティックを一花先輩に渡すと、彼女はパソコンにさして、僕の画像ファイルを読み込んだ。


「これが昨日言ってた、データかな?」


「そうんです」


「あちゃー、これ、背景部分が透明じゃなくて白になってる。gif形式にする前に、adobe形式から何かの形式に保存しちゃったんだね。多分、そのときに劣化しちゃったんじゃないかな」


「え、じゃぁ、もう一回塗るってことですか?」


「うーん、そうだね」


 消しゴムがけだけでも、しんどかったんだけど、あれをもう一回やるのか。


「ところで、今週中に6人分の立ち絵完成しそう?」


「あ、結局6人になったんですね。うーんどうでしょう。ギリギリですかね」


「もし、時間間に合わなそうだったら、線画だけ、山中君が描いて、私が着色でもいいよ」


「ほんとですか!ありがとうございます!」


「フォトショがあるなら、スキャニングと、線画の抽出、消しゴムがけまでしてもらって、adobe形式でデータ送ってもらえばいいから。1M超えるから、宅ファイル便かなー。それか、直輝君にどっかサーバー借りてもらって、やり取りするしかないね。あ、それと、これイラストのリストね」


 一花先輩が鞄から文字がプリントされた紙を取り出した。「タイトル」、「画像ファイル名(半角英数字)」「仕様用途」、「画像ファイル」、「締め切り」、「参考URL」がリスト化されていた。え、こんなの見たことないよ。


「あ、これ夜中に掲示板にアップされてたみたい。あとでまた追加になるとは思うけどね」


ああ、これ僕が担当するイラストのリストだ。今週が、人物の画像6つで、再来週までに背景5つか。いけるのか、これ?


「とりあえず、ちゃちゃっと、描いちゃって、どうしても気に入らなかったら、差し替えちゃえばいいよ!どんどん描いちゃおう!」


「そうですね!」


「じゃぁ、今日はこれで解散して、ちゃっちゃか描いちゃおう!」


トントン拍子に話は進んで、なんとか今週分の作業はどうにか間に合いそうだ。

後日、一花先輩からきちんとしたPhotoshopの使い方を教えてもらうことになるのだが、僕はそこまで、奥が深いソフトだと知らなかった。

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