第38話 ウイッグを取った日


 11月になり、家が建ったので引っ越しをする。トラックを借りてタウンハウスからの荷物を運びいれた。 翌日は今まで港に保留状態だったコンテーナーの荷物がやっときた。ものすごい量の荷物だ。3月から8ヶ月ぶりに自分の持ち物と対面した。箱の外側に書いてある字を読みながら、キッチンや2階に箱を運ぶ。自分の(もの)があるというのはこんなにうれしいのかと再確認した。息子も大喜びだった。 


洋服の箱を開けてみたら冬物がぎっしりでがっかりした。ここではいらないものだ。かなり処分しないとクローゼットにも入りきらないと思った。必要な物を買ったり、整理したり忙しいけれど人間らしい生活はすごく嬉しかった。


しばらく忙しい日々が続いた。 新しい家でクリスマスパーティーもした。楽しいクリスマスも過ごせた。お正月の食品を日本食品店に買い出しにも行った。大晦日には夫ママがカリフォルニアからまた来て、ハワイの風習の花火を一緒にする。大晦日にはどこの家でも花火をして、もうすごく騒がしい年末年始を迎えるのだった。


 数カ月前の抗がん剤治療の頃と比べると夢の様な日々。 ハワイの生活を楽しみながら再建手術を出来る日を待っていた。


放射線の痕もだいぶ痛くなくなってきたので、海にも入ることが出来た。 ハワイの海の浅瀬に横たわると傷が癒えてくる気がした。 


この頃はまだ髪がすごく短くウイッグをかぶっていた。5センチ位だ。


レースフォーキュアで気持ちの変わった私はウイッグをとろうと決意した。

1月の終わり、キャリ-の家に行った時にはじめてウイッグを外して行った。まだベリーショートよりも短い髪の毛だったけれど、キャリーも「じゃあ私もとる!」とウイッグを外した。

 

その髪型のまま学校にも行った。学校のボランティアを始めていたのだった。

まだ、初めて見る人はぎょっとするような短さなのだけど、優しい先生は理由も聞かずに息子の前で


「その髪型とっても素敵」と言ってくれた。こういう優しさが心にしみる。


抗癌剤と放射線で歯がボロボロになっていたので、上の前歯6本ともクラウンにした。これはすごく嬉しかった。


ウイッグを取ったら、ハワイの風を感じられる。歯も直したので笑うことができる。これで胸を再建できたらどれほど嬉しいだろうと思った。

だが現実はなかなか厳しかったのだった。


3月になった。 


1年前の3日にハワイに来た。 息子は9歳になった。

前半は寝てばかりで泣いてばかりの日々だったが、穏やかなハワイの気候に癒やされながら1年間無事に過ごすことが出来た。

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