第28話 息子を救ったドラクエ効果
6回目の抗がん剤も終わり、あと2回。息子の精神状態はまだ安定しておらず、時々3歳くらいでやめていたマミーという言葉で私を呼んだりしていた。
突然泣き出す、お墓の前で最高なママだったといって泣いている自分を想像するのだという。
「真っ暗の中をママがどんどん小さく遠くに行って消えちゃうの」と言う、
紙にその絵を描いてと頼み、破ってみて?と言う。
「ほらー、もうなくなっちゃったよ」
「それは絵だから……」
「じゃあ目の前のママを見て!すごく元気でしょう?」
と変な顔をすると、ちょっとだけ笑った。
どうしたら気持を楽にしてあげられるだろうか。
病院では、カウンセリングとして小さい子供に抗がん剤の説明をしていたのだ。 お母さんの乳がんの話、抗がん剤って何?どんな薬? そして抗がん剤をする部屋を見せてくれたのだが、逆効果だったような気がする。
渡された絵本もお母さんが抗がん剤をして髪の毛が抜ける話だった。頼まれて何回か読んだのだが、あまり効果はなかったような気がする。
ある日また突然の号泣が始まったときに
「あのね、抗がん剤はね、すっごく強い武器なんだよ、ラスボスなんてすぐやっつけちゃうバトルアックスなんだよ!」
と当時2人でやっていたドラクエの中の武器の名前を使った。
「え!そうなの? 強い武器なの? でも癌も武器を持ってる?どんな武器?」と聞いた。間髪おかずに
「こんぼう!」
と、一番弱い武器の名前を言ったら、はじめて晴れ晴れと笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます