第27話  ブロンドのウイッグ


7月のはじめにキャリーとアラモアナの近くにあるサロンにウイッグを買いに行く。 このサロンのオーナーも元がん患者でウイッグを安く提供してくれて、そのうえウイッグのカットもしてくれる。 対象はその場で髪をそる人、それからもう髪がない人のみだった。


まだ髪が抜けていないキャリーはウイッグを選ぶだけにした。 私は黒と茶系のショートのウイッグをかぶってみた。 その場で自分のウイッグを外したのだがキャリーはすごくショックを受けていた。彼女が選んだブロンドのショートのウイッグを胸に抱え、目を見開いたまま横を向いていた。


 この数日後電話をするとキャリーは子供のようにわあわあと泣いていた。髪がごっそりと抜けたのだという。 長い髪を切らなかったので、ビジュアル的にもショックだっただろうと思った。


かわいそうだけど、乗り越えるしかないのだ。 抗がん剤をするなら髪の毛は抜けるのだから。


 彼女はこの後このサロンで髪をそり、選んだショートのブロンドのウイッグを買った。

だが、気に入らずにミディアムの新しいウイッグを買い、ショートブロンドウイッグをもらった。そしてまた気に入らずにミディアムの方も私にくれた。私は気に入ってかぶっていたので当時の私はブロンドだった。


長いきれいなブロンドの髪の毛が自慢だったキャリーにはどんなウイッグにも満足できなかったのだった。


「いっそ、ぜんぜん違うのは? 私もこのブロンドの気に入ってるよ、長い黒髪のにしたら?」と冗談のつもりで笑ったら


「うん、そうしてみる」と言う。


思いつめてる感じだったので、一緒にウイッグのサイトをいろいろ見てみた。


「あ。これは? これも似合いそう」


選んだのはやはりブロンドのミディアムのものだった。 こんな時だから、違う髪型で遊んでみようという発想は彼女にはないようだった。


実はキャリーはハワイもハワイアンも日本も日本人も大嫌いで、同じ時期に病気にならなければ友達になっていないタイプだと思う。


日本の基地で会っていたら、その場限りの付き合いだったはずだ。

人生は不思議だなと思う。

この時私達はお互いにとても大事な存在だった。

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