第7話 不安そして息子への告知
ここに来て以来、恐怖のせいか白髪がたくさん増えた。
――もうすぐショートになる長い髪、もうすぐ一つなくなる胸――
毎日のように病院の予約がある。終わった後はあちこちにでかけた。手術まではせめて親子3人でハワイを楽しみたかった。
青い空の下のショッピングも楽しかった。それがたとえ手術後の胸のない状態を考えながらの洋服の買い物でも。 またこうやって買い物を楽しみたい。3年後も10年後も。そう考えていた。
手術後のことを考えて脱ぎ着が簡単なワンピースや胸を締め付けないシャツ。コットン製のブラジャー。入院用の足が楽なサンダルなど買った。
手術後は寝ている日が多いと思い、かわいいパジャマを買った。あのバースデーの時に作ったキャラクターのものを。スポンジボブの顔がこれでもかと付いている。息子はそれを見て
「わあ! ママがこれを着るの?」と喜んでいる。
「そうだよ、なははは」とキャラクターの真似をすると、息子は大笑いしている。
息子にもあれこれゲームなどを買った。こんな時でも、いや、こんな時だからこそ、買い物は楽しかった。
手術予定日は17日になった。3日に来ているので2週間後だ。2週間の間、出かけたり買い物をしたりした。
待っている間の2週間は長かった。その間に癌が大きくなっていくような気がしたからだ。
命があれば良いと思うけれど、胸がなくなるのはやはりとても辛かった。
手術の前に息子に説明をした。
小学生2年生だった息子に本来なら詳しく説明したくはなった。だがこのまま長期滞在となるとそうはいかなくなる。 毎日のように病院に一緒に行っていたし、なにか変だともちろん感じていただろう。
「あのね、よく聞いてね。ママは身体の中に悪いものが出来たの。だからそれを取っちゃうね。先生が手術をするからね」と言うと、
「え~手術? やだ、こわいよ~」とみるみる目に涙があふれ、わんわん泣きだした。
「手術をしないと、うんと悪くなっちゃうの。ママが元気な方が良いよね? またいっぱい遊べるよ。だから悪いところ取っちゃうんだよ。それから時間もかかるから、ハワイに長くいるかもしれないの」
「いやだ~」と大泣きの息子を見て涙が溢れそうになる。
夫が
「ちょっとこっちでダッドとも話をしょうか」と連れて行く。
夫の静かな声としゃくりあげる声が聞こえてくる。
私は家族にこんなにつらい思いをさせていると思うと、また涙がこぼれた。
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