第5話  形成外科の医者。髪が抜ける前にウイッグをオーダーする



この日は形成外科医のドクターHと会った。40代の白人で笑顔の裏に威圧的な態度が見え隠れする医者だった。 


乳房切除手術の後の再建の話を聞いた。乳房の再建手術は2つの方法がありインプラントを入れる同時再建、お腹の脂肪と筋肉を使う自家再建だそうだ。


お腹の脂肪をとってもらえるのは嬉しいけれど、長い時間がかかるそうだ。

傷が治ってからから乳房の皮膚を切り取って乳首を作り、その上にはタトゥーで色を入れるという。 そうすると約1年以上かかるらしい。


正直まだ再建のことなど全く考えられない。


それでもこの病院は外科医、腫瘍科医、放射線医、整形外科医の4人が1人の患者につく。ミーティングも4人で行うそうだ。なので、整形外科医のアポも度々ある。 


気になるのはやはり抗癌剤だった。最近の抗癌剤では吐き気は抑えられるそうだが、髪はほとんどの人が抜けるという。そこは避けられないのかと気分が沈む。


抜け始める前にウイッグをオーダーすることになった。


アラモアナショッピングセンターに行った。ウイッグも扱っているヘヤーサロンいろいろ被って試してみる。 明るい色に染めていたので黒髪のものは違和感があった。栗色のロングヘヤーでバング付きのものに決めた。いいものが見つかってハワイに来てはじめて嬉しくなった。


放射線科のドクターSとの話で気持ちが楽になっていた。前向きに前向きに考えよう、きっとだいじょうぶだ。ウイッグをオーダーしたあと、必要な物を見て回った。


買い物は辛くはなかったが、アラモアナにショッピングに来ているツアー客は皆楽しそうで、綺麗な人ばかりだ。嬉しそうで、キラキラ輝いている。


この中で数日前に乳がんの告知されて、抗癌剤でハゲになるからウイッグを選んでいるのなんて私くらいなんだろうなとふと思う。


眉毛もまつげも抜けるという。 


消えにくいアイブロウペンシルも購入した。Narsのもので16ドル。思わず

「高いかな、無駄になるかもしれないのに」と思ってしまう自分がいた。そしてすぐに「無駄になんかしたくない! 」と気持ちを引き締めた。


もうすぐ手術の予定日もわかるだろう。怖い、大きな手術だ。6時間もかかるという。違うふうに考えよう。これは整形手術なんだと。お腹の脂肪を取って胸も綺麗に大きくお直しをするだけだ、と。


そう考えると少し気持ちが楽になる。 

なんでもなくて胸やお腹を整形手術する人がこの世にはたくさんいるのだから、と。


そして、髪の毛も抜けてしまうのなら、その間だけでもショートヘヤーを楽しもうと思った。ヘヤーカタログを買った。


買い物に行ったのは週末で、月曜日には腫瘍専門医の予約だ。抗癌剤のスペシャリストだそうだ。吐き気と脱毛の質問をしようと思う。

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