第2話  バイオプシー検査 



3日 軍の中から出発するバスに乗り、成田空港に着いた。もしかしたら検査で何もなくて帰れるかもしれないと思い、荷物は少なくした。夜便だった。本を数冊おにぎりなどを買い込んで搭乗する。そこから10時間近くの飛行で、日本時間では4日の朝4時。しかしハワイについたのは3日の朝9時だった。


「よかったねえ、誕生日2回できるね」と言っても、もともと無理やり連れてこられた息子は疲労も重なりむっつりしていた。


ホノルルについてアラモレンタカーで車を借り、すぐに陸軍病院へ行く。山の上にある目立つピンク色の建物だ。家でも飛行機の中でもほとんど寝ていないのでふらふらだった。 

 

受付をしてすぐに簡単な検査をしてからドクターと少し話をし、バイオプシー検査という長い針を刺す検査をすることになった。


しこりはかなり大きく、すでに痛みがある。その痛みの真ん中に長い針を指すのだ。


「それ痛いんじゃないですか?」と聞いたのに「う~ん、まあ、どうかな?」と曖昧な返事をされてそのまま長い針をブスリと刺された。 


「ぎゃ!痛い!!」と大声が出た。激痛だ。信じられない痛みなのに更にぐっぐっと奥へと長い針を差し込んでいく。 


痛い痛い痛い。涙が頬を伝った。


まるで拷問だ。


検査でさえこんなに痛いのかと落ち込んだ。たった一本針を刺しただけで、と。


刺されたところがズキズキ痛む。ランチ時間に病院に入っているロビンフッドというファーストフード店でミートボールサンドイッチを注文した。肉とミートソースの匂いに気持ち悪くなりほとんど食べられなかった。


外に出ると真っ青な空に椰子の木が揺れている。 3月の日本は寒かったので着過ぎで暑い。ハワイ気候は暑くなく寒くなく、いつも風がそよそよと吹いている。頬に当たる風が気持ちよかった。


この病院は山の上なので、遠くに目が痛いほどの青い海が見える。 

 

こんなに綺麗な場所でこんな痛い体験をするなんてと暗い気持ちになった。


夕方やっとオハナワイキキビレッジホテルにチェックインする。こじんまりした綺麗なホテルだった。テレビに有料でゲームがついていたので息子はそれで古いゲームをする。ここで過ごして数日で帰れたらいいのだどとと考えていた。病理検査が出るのは翌日なので、今日は楽しく過ごそう。と夫と話しあう。


「きっと、なんでもないよ。早く帰ろうね」と笑う。


夜はD&B というレストラン付きの巨大ゲームセンターのようなところで食事をした。 ディナーにゲーム券がついていて、2階で遊べるようになっているところだ。食事もおいしく、色々なゲームがあり楽しかった。カジノのような雰囲気の所だが、家族で楽しめる場所だ。


「わあ、おいしい」と息子の笑顔が広がる。こんな笑顔をずっとずっと見ていたいと思った。


3人で笑いならが楽しく食事をした。明日、なんでもなくて日本へ帰れますようにと願いながら。


そして、その願いは無残にも打ち砕かれた。

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