04.
練は、ゆっくりと話し始める。
蓮とは、十二の頃から一緒だ。
蓮が初めて現れたのは、家に強盗が入って両親が殺された日だった。
強盗は、練の存在に気付くと刃物を片手に襲いかかって来た。
練が覚えているのはそこまで。
気付いた時には強盗はすでに死んでいて、自分の手には強盗が持っていた刃物が握られていた。
『…俺が…やったの……?』
その時、練の心の中で『違うよ』と声が聞こえた。それが”蓮”だった。
のちに蓮が襲ってきた奴らから聞き出した情報によると、強盗も両親の殺害もすべては仕組まれていたことだったようだ。
両親が生前関わっていた組織から、手を引いたことにより、証拠隠滅のために殺されたらしい。もちろんそこには、”練”の抹殺も含まれていた。だが、それは失敗に終わった。だから組織は、練を狙う。
生きるために、練は”蓮”に身を委ねた。
『自分が生きるために』と、蓮のしていることに目を瞑って来た。
そのうち、蓮の噂が広まり【切り裂き魔】などという異名がついてしまったのだ。
「……蓮は両親がいなくなった俺にとって、とても特別な存在で…。でも、組織が俺を狙ってるとはいえ、これでいいのかな…とはずっと思ってて、不安で……」
side→祐希
「なあ…、その組織の名前、分かるか?」
練の話を最後まで聞き終えると、祐希は練に問う。
「…蓮は知ってるかもしれないけど、俺は…」
わからない、と首を振る練。
「…そっか、まあいい。
練を狙ってる連中は、十中八九
「…あの晩、港を彷徨いてた
「そう。だから、連絡受けて行くけど蓮のせいで仏さんばっか。蓮…お前何者?」
祐希の問いに、蓮が具現化して練の隣に現れる。
「そこは俺にもよく分かんねーんだよな…。
気付いた時には、もう練と一緒になってたし。今まで俺は、練を守るために練を狙ってくる奴、片っ端から斬ってるだけだしな」
(…分離とか…そんなことも出来んのかよ)
もう驚くしかない。
多少不安定ではあるものの、きちんと実体はあるようだ。意味不明だ。
「…目と性格以外は、ほんとそっくりなのね」
なんでも蓮は、練が生まれた時から練と共にあったが、今のようにお互いを認識出来るようになったのは、練の両親が殺された日かららしい。
蓮がどういう存在なのかは依然として不明だが、とりあえず話を信じる他ないだろう。
「…俺、強くなりたいです…。守ってもらってばかりは……もう嫌だ」
蓮を見遣って、練はきっぱりと言う。
side→
「それがどういうことか、分かって言ってるのね?」
「”蓮”ではなく、”練”で人が殺せる?殺すということは、その人間の可能性を奪うことだよ」
「お前にそれが出来んのか?」
「…やってみせますよ…。どうしたって狙われる。なら…、強くなるしかないから……」
練の言葉に全員が頷く。
蓮は、練の覚悟を聞くと練の中に戻ってしまった。どうやら、長時間の分離は出来ないようだ。美月は改まって練に向き直る。
「それじゃあ、これからのことを説明するわね。
まず練、貴方にはこれまで通り学院に通ってもらう。INFELNOに勘付かれると厄介だわ。そして放課後は、訓練を受けてもらうことになると思うわ。まあ、平たく言えば”人を殺すための訓練”ってことになるかしらね」
練は美月の言葉を、噛み締めるように繰り返す。
「…人を殺すための……」
「…もちろんそれだけじゃないよ。自分を守る術も身につく。君自身のためにもなるんだ」
「私たちが所属している組織のことは聞いてる?」
美月の問いに、練はこくりと頷く。
「…はい。英国政府お抱え特殊部隊だと……」
「…そう、なら話は早いわ。
特殊部隊の総称は
いい?CROWNやその他、関係する情報を他人に漏らした時点で、命の保証はしないからそのつもりでね。私たちの当面の目的は、今のCROWNを潰すこと。ここは、大きくなりすぎて力を付けすぎたCROWNを女王の命のもと、在るべき姿に戻すために集められた者たちの集まりよ。集められたのは、CROWNの中でも優秀な部隊数隊。通称、
「仲間を引き入れるのは、僕らの自由。CROWNは大きな組織だ。だから、より多くの信頼出来る仲間が必要になる。……そういえば、僕の自己紹介がまだだったね…。僕の名前は戒」
戒は美月たちの部隊ではなく、
「…そろそろ、他のメンバーも戻ってくる頃だね。そうそう、ここのボスは
その時、外が騒がしくなり始めた。
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