就活RPGのち日常系恋愛シミュレーションゲーム黒歴史企画書

明石竜 

概要

タイトル『女子生徒寮管理人は、ベテラン就職活動家』

主なターゲット層:15歳以上推奨。CEROは「C」ランク。

ジャンル:日常系恋愛シミュレーションゲーム。

《ミニゲームもあり。男性向けではあるが、女性にも親しみやすいストーリー設定》

キャッチコピー:就職活動とは、『内定通知』という伝説の宝を求めて旅に出る、スーツとネクタイのファンタジー系RPG。

対応機種:ニンテンドーDS。プレイ人数は一人。   

開発言語:C++。開発期間は約半年を見込む。

企画動機: 文学全集や旅行ガイド、資格(検定)試験、料理のレシピまでもがゲーム化されている今の時代、もはや日常生活に溢れるどんなものでもゲームソフトに出来てしまうのではと思います。今回私は、ジャンル的には昔からよくあるものですが、既存の作品とは一味違う少し変わったストーリー設定のものを考えてみました。今まで誰も思い付かなかったであろうものに冒険しています。ある意味とんでもなくぶっ飛んだ異色のバカゲーかもしれません。もし貴社がこのゲームを開発し、発売でもしようものならきっと伝説に残る!(いえ、冗談です。)



プロローグ: 舞台はとある夏の神戸。


高松健太は大学三年生の頃からIT業界SE職を中心にあまた多数の業界、職種、企業を一途に延々と受け続けているが、就活開始から四年近くが経っても未だどこからも雇ってもらえない状態が継続中。これまで不採用となった会社の数はついに500社以上にまで達していた。彼は筆記試験までは大方パス出来ているのだが次の関門、一次集団面接(討論)試験でことごとく落とされ続けていたのだ。個人面接一回のみで決まるところでも全くダメで、公務員試験も筆記で高得点を稼ぐがやはり面接で撃沈。契約社員、アルバイトすらも断られ続ける日々。内定の目処は未だ全く立っておらず、健太は人間的に日に日に腐ってゆく。不採用通知を受け取らせれば、彼は天下無双の実力者である。

(内定通知って、本当に実在するのかよ? 伝説上の幻のアイテムなんじゃないのか? ここまで不採用が続くと、その存在すら疑わしいぞ……)

高松健太は頭を抱える。彼にとって内定通知なんてものは、魔法使いや空飛ぶ絨毯、ランプの魔人、炎を吹くドラゴン、ヤマタノオロチ、ペガサス、ユニコーン、ネッシーのような空想世界の存在物と化していた。

 健太に近寄ってくるものといえば――


「こんにちはー、大学生ですか? 今、就活に関する意識調査を実施……」

「…………」

 健太は目を合わせないように先を急ぐ。彼に近寄ってきたのは、スーツを身に纏いボールペンと用紙を手に持った若い女性だった。

(わたくし、大学生じゃないし。まあ、わたくしよりも年上の大学生もいるにはいるが。ていうかこれって、喫茶店とかに連れ込んで、英会話かなんかの高い教材とか買わせるあれだろ?)

 健太は顔をしかめる。

彼女は試験会場周辺や信号機横に度々現れ、アンケートと称して近寄ってくるキャッチセールスの集団の一人だった。

健太がここを振り切っても、しばらく歩き進めば同集団のまた新たな人物が近寄ってくる。見るからに弱弱しい健太の風貌は、彼らにとって格好の的となってしまっていた。

健太の身長は165センチ、体重は50キロにも満たない。標準的な成人男性と比較すれば、かなりみすぼらしい体格のため面接試験、それ以前に履歴書に貼られた写真の段階でかなり不利に働いてしまう。見た途端即、仕事をお断りしたくなるような風貌なのだ。そのため面接すら呼んでもらえないことがほとんどだ。幸運にも呼ばれたとしても、採用担当者は彼に(既卒者であることも相まって)採用基準よりも相当高度な能力を求めてくる。就職試験は大学入試とは異なり、採用担当者の感情によって合否が左右される不公平な試験。面接が苦手な者にとっては、東大に合格すること以上に難しいといえる。


就職活動とは、内定通知という伝説の宝物を求めて旅に出る、スーツとカバンのファンタジーである。剣と魔法、ドラゴン、勇者と姫、魔王、仙人などというファンタジー世界においてありきたり過ぎる物は一切出てこない斬新な設定。冒険者の長距離移動手段は空飛ぶ船、ではなく電車とバス。たまにタクシーを利用する。冒険者が山間部や島嶼部といった僻地に住んでいる場合は航空機や自家用車、船舶が利用されることもある。

日本国内を舞台とした場合、冒険者の身分は大学三・四年生、大学院生、短大生、専門学校生が中心となる。他に既卒者、近年は少なくなったが中高生も含まれる。当然のように日本人が大半を占めるが、近年は中国・韓国・台湾などからやって来た外国人留学生も増加傾向らしい。 

徐々に仲間の数を増やしていく普遍的なRPGとは異なり、冒険者は基本的に最後まで単独で行動する。だが、友人同士でパーティを組んで行動する者の姿もちらほら見受けられる。

冒険者は自宅や学校等で業界研究をしたり、就職ガイダンスに参加したり、リクナビやマイナビなどの就職情報サイトに登録したり、資格を取得したり、自己PRや志望動機などが問われるエントリーシートを試行錯誤しながら書いたり、一般常識や論理的思考力が試される筆記試験の対策をしたり、面接の練習をしたりしながら経験値を積む。こうしてレベルを上げてから志願する戦地へ赴き、そこに巣食う面接官という名のモンスターを倒して『内定通知』の取得を目指すのである。

モンスターが平社員の場合、基本的にザコキャラだ。ラスボスは、社長や重役であろう。

モンスターの得意技はお世辞と、「きみはこの会社には向いてないんじゃないの?」等の返答困難質問。この技に嵌ると冒険者は調子に乗ったり、緊張したり、おどおどしたり、ついカッとなってしまったりする。こうなるとモンスターの思う壺だ。かなりの確率で冒険者は敗戦を強いられる。対処法としては、どんな攻撃をされようとも冷静に対応すること。そうすればきっと勝機を見出せる。

面接官以外にも、受付や廊下・階段・トイレ・エレベータ内に出没する社員といった“隠れモンスター”が存在する。“隠れ”とはいっても会社等のダンジョンに入ってから、戦地となる面接会場(会議室が使われる場合が多い)へ辿り着くまでに遭遇する確率はほぼ百パーセントだ(稀にダンジョン近辺の路上や喫茶店、駅、電車内にも出没する)。彼らは直接攻撃してこないが、面接官に冒険者の態度を報告する場合がある。つまり、冒険者の欠点を面接官に握られ、勝敗に影響してくる可能性もあり得るということだ。冒険者は決して油断はせず、隠れモンスターにも会釈するといった心構えが大切である。

レベルが低いまま挑もうとすると、戦地までなかなか辿り着けない。招待状が無ければ侵入を認めてもらえない所もたくさん存在する。招待状を貰うためには、書類選考や筆記試験といった数々の難所をパスしなければならない(普遍的RPGで例えれば、ダンジョン内に仕掛けられたトラップのようなものに当たる)。ここを突破して初めて、冒険者はモンスターと対戦させてもらえるのだ。冒険者のレベルが低いうちは、“応募していただいた方全員と面接します”と求人広告で謳っているようなフリーパスの企業を選ぶ必要がある。

内定通知を取得すると、誓約書が渡される。これに承諾のサインをすれば就業獲得が約束され、晴れて就職活動はクリアとなる。冒険者はその後、現身分を卒業後に会社員や公務員といった新しい身分が与えられる。これらはさらに細分化され銀行員、SE、カメラマン、ファッションデザイナー、スポーツインストラクター、雑誌編集者、新聞記者、美容師、郵便局員、保育士、教師、警察官などなど戦地に応じた称号も与えられる。他人に職業名を紹介するさい、後者の方を使うことが多い。

時代設定は現代。戦地があるのは東京、名古屋、大阪など都市部が中心だ。 

冒険期間は数ヶ月。あくまでもこれは目安で、家業を継ぐや親のコネなどで一日足らずで終える者もいれば、何年かかってもゴールへ辿り着けない者もいる。

冒険者の初期HP、そしてレベルの上がり方は冒険者の地力によって大きく異なる。基本的に書類選考や筆記試験をパスし内定通知取得へのステップが進むとレベルが上がる(連動してHP最大値も)。面接官から威圧されたり、不採用通知を受け取ったりするとダメージを受けてHPが減る。普遍的RPGのように、宿(ビジネスホテル等)に泊まったり、食事を取ったりしても必ずしも回復するとは限らない、むしろ減ることさえある。就(シュウ)活(カツ)世界(ワールド)においては、それは冒険者自身の精神状態に委ねられる。

HPが0となったらゲームオーバー。こうなると就労意欲が完全に無くなり、やがてニートと呼ばれる人達となってしまう。冒険途中で鬱病などを患い(普遍的RPGでいう毒に侵された的な状態)、ゲームオーバーとなってしまう冒険者も少なからずいるようだ。

標準的な冒険者の初期設定は、このくらいであろうか?


HP:50

MP:0(魔法は存在しないため、どんな冒険者であれ0)

最終学歴:中堅私立大学卒業見込み

専攻:経済学

忍耐力:30(この数値が高いほど、ダメージを受けた時にHPが減少しにくい)

社交性:40(最終学歴のランクが低くても、この数値が高ければ戦闘時にかなり有利になる)

装備:《武器》ビジネスバッグ、傘(雨天時や日差しが強い時に利用)

《防具》リクルートスーツ、ネクタイ、靴下、革靴

※ 攻撃力、守備力は就活世界においては数値化されない。

《アクセサリー》メガネ、腕時計

アイテム:ハンカチ、ティッシュ、財布、手帳、クリアファイル、スマホ、筆記用具

履歴書、印鑑、学生証、対策本、地図

 所持金:二万円


学校推薦、教授推薦、縁故、コネといった究極奥義を繰り出せる冒険者も何割かは存在する。特に理工系の大学院生はその能力を持つ者の割合が高い。彼らは当然のように内定通知を容易に得やすい。

 普遍的RPGと異なる点は、他にもいくつかある。冒険者はモンスターに武器を用いて物理的なダメージを与えたり、民家などに無断で侵入して引き出しを漁ったり、落とし物を勝手に自分の所有物にしたりしてはならない。そんなことをしようものなら警察官と呼ばれる職業名を持つ人々に逮捕され、後の冒険が著しく困難になりかねない。

就活世界では、モンスターは冒険者の巧みな話術による呪文詠唱や、笑顔・挨拶などの心理的攻撃によって冒険者側に好感を持ってもらうことで、倒されるシステムとなっている。モンスターとの戦闘終了後、モンスター側から交通費という名目の現金を手渡される場合がある。その確率は大企業を受験した時、または社会経済情勢が好況期に高くなる。

就職活動とは、限りなく現実世界に近いファンタジー冒険奇譚なのだ。


夏を制する者は受験を制す、とはよく言われるが、受験を制する者は就活を制すとは限らない。実際、健太とは比較にならないほどの高学歴層にも、無業者が今の日本にはたくさん存在するのだ。 健太は大学を留年・休学することなく、きっちり四年で卒業した。それ以降二年余り、既卒者として就職活動を続けている。

今思えば、一年留年しておいた方が良かったのかな……と彼は後悔している。なぜなら就職活動において、既卒者は非常に不利な立場になってしまうからだ。

例えば、講義にいつも真面目に出席し、レポート課題は提出期限を常に厳守、成績も『優』をたくさん取得したけど、就職先は決まらないまま四年で卒業してしまった既卒一年目二三歳の人(二年前の健太とも言い換えられる)と、大学へは滅多に足を運ばず遊び呆けて留年・休学しまくった挙句、八年目の大学生活を送っている二七歳の人とを比較してみよう。若さが武器となる新卒採用において、どちらが有利に働くかといえば、理不尽なことに後者なのだ。新卒採用の応募資格には、既卒者不可とされている場合が多くを占める。

新卒採用では卒業予定の学生を採用し、卒業後すぐに勤務させる雇用体制が一般的となっているためだ。このことは、学校(主に四年制大学・大学院)を卒業さえしていなければ、つまり在学中であれば、多少年齢を重ねていても新卒採用の選考に参加させてもらえることを意味する。それゆえに、卒業間際になっても就職先が決まらなかった場合、わざと留年する者もいるのだ。さすがに二〇代後半ともなるとかなり不利になるが、それでも二〇代前半の既卒者よりはマシである。

既卒者は基本的に、中途採用扱いとなる。しかし中途採用の多くは就業経験、それに基づく職務経歴書の提出を必須としている。既卒かつ職歴無しの者には、新卒採用にも中途採用にもなかなか応募すらもさせてもらえない。

それが新卒至上主義、日本社会の掟なのだ。

これは学校卒業までに就職先を確保しておく。通学も就職もしていない空白期間は作らない。このレールに乗らなければ、その後の就職がますます厳しいものになることを表している。事実、健太も大学を卒業して以降は書類選考の段階で撥ねられ、面接にすら辿り着けないケースが顕著に増えていた。一応、公務員試験については既卒かつ職歴無しの者にも、大卒枠なら概ね二〇代後半までであれば、ほとんどの所で門戸が開かれている。しかも書類選考は行わず応募者全員に筆記試験を受けさせてくれる所が多く、その成績は経歴に関係なく平等に評価される。つまり、高い学力さえ有していれば面接までは容易に辿り着けるというわけだ。独立行政法人等の職員採用試験、マスコミ業界も既卒者にわりとオープンな感じだ。だが、いずれも高倍率である。競争相手には新卒者はもちろんのこと、就業経験者も確実に応募してくるため相当狭き門なのだ。

資格の勉強に逃げるという策もあるにはある。二〇代半ば以上の無業者の中には、人生の一発逆転を狙って公認会計士や行政書士などを目指したり、司法試験を受けたりする者がわりと多くいる。だが、その道を志した者のほとんどが夢破れ、路頭に迷うことになってしまうという現実を覚えておかなければならない。芸術家、芸能人、プロスポーツ選手への道についても同じことであろう。

既卒者が不利になるのは、就職の時に限ったことではない。むしろ、学校社会の方が冷たい目で見られ、肩身の狭い思いを強いられるといえる。

国私立の小・中学校では入学試験が課されるが、既卒者(学校社会では過年度生、浪人生と呼ばれることが多い)の受験は認められていないケースがほとんどであろう。

多くが通う、入学試験とは無縁な公立の小・中学校においては、そもそも学齢超過者の新入学・編入学は原則不可とされている。義務教育期間は、新卒採用以上に厳格な年齢主義が採られているのだ。高校受験になると少しオープンになるが、それでも受験者・入学者の大半が現役生で占められている。

既卒かつ職歴無しの者が就職活動をするさいは、新聞・雑誌等の求人広告や、ハローワークの求人票に頼るのが有効な手段である。それらから探せば、【年齢・学歴・職歴不問】とされている所がけっこうたくさん見つかる。しかしながら、採用する気も無いのに求人情報を出している空求人や、求人内容に虚偽の記載があるケースも多く見受けられ、採用に至るまで困難の道を極める。

就職試験の選考過程で通常、一次に行われる書類選考において既卒者の場合は、最終学歴後の経歴がかなり重要視される。当然のように、職歴があることが求められているのだ。

履歴書またはエントリーシートの職歴欄について、最終学歴後ずっと無職な場合はもちろんのこと、契約社員、アルバイトなど非正規雇用に従事していた場合(いわゆるフリーター)も、大抵の企業から『職歴無し』と判断され、空白期間と見なされてしまう。

既卒かつ職歴無し、そうでなく職歴(正社員経験)があっても、職を失い空白期間が少しでも出来れば、書類選考を通過することが非常に困難になってしまうのだ。

雇用する側の立場になって考えてみれば、その理由が良く分かるだろう。

これから就職活動を迎える中高生諸君、大学生らは、健太のような社会的脱落者と同じ轍を踏まないよう、このことを肝に銘じて欲しい。ひょっとしたら、時代の流れでこういった状況が改善されていくかもしれないが……。

健太の趣味は電撃、MF、GAなどのライトノベル系新人賞や、ネーム原作賞への投稿。数百社もの不採用経験を経てやり切れない思いになり、ある日突然執筆活動に目覚めたのだという。受賞すれば面接試験を受けなくても仕事にありつくことが出来る。それが魅力的なのだ。

(ウィキペディアやアンサイクロペディアの時○沢恵一さんの項目見ると、境遇が俺と非常によく似ているな……まあ俺には彼のような才能は微塵も無いが)

時々送られてくる選評シートは、最近は書類選考の段階で落とされ続け面接にさえ呼ばれなくなり、それがためにコミュニケーション力の低下にますます拍手がかかってしまった彼にとって、社会との接点を繋ぐ唯一のかけがえのない宝物となりつつあった。選評シートも不採用通知の一種ではあるが、【先日お送りいただいた応募書類をもとに、慎重に検討させていただきました結果、今回は残念ながら貴殿のご希望に添いかねることとなりましたので、あしからずご了承ください。】とか本当は適当に審査しているくせに、こういった嘘丸出しの素っ気ない定型文で書かれた一般企業からのそれとは比較にならないほどの高価値があった。

(今、どこからも採用してもらえていない分、将来はその反動でたくさんお仕事がいただけるようになって、社会に還元出来るようになりたいな……)

 健太の切実な願いだ。

仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい、仕事を下さい……一生懸命働きます。働かせて下さい! お願いします!

 非情なことに、こういった願いが強い人ほど、仕事を与えてもらえない(採用者側が仕事を与えない)のが社会の現実なのだ。おもちゃ買ってーっ! と駄々をこね続ける子どもを見て、親は買い与えてあげるだろうか? 否、親は子どもがごねればごねるほど、だんだん腹が立ってくるであろう。つまりはそういうことである。

 逆に言えば、もらえる人には困るくらいたくさんもらえる。重労働による過労死というものは、こうした理由から引き起こされるのではないかと健太は考えている。 

健太は、既卒二年目以降は、面接試験まで進むことが出来たのは公務員試験のみという状況になってしまっていた。公務員試験は筆記さえ良ければ面接へと進める。一方、民間企業には履歴書などが審査される、書類選考という非常に(非情に)高いハードルがあるのが要因であろう。彼のような、経歴に致命的欠陥を抱えてしまった者に対する民間企業の目は特に厳しい。こんなクズを雇ってみようなどという気は全く沸かないであろう。

例えば何の取り柄も職歴もない二十歳代の無職の青年が、とてもかわいらしい女子高生から突然告白されたどんな反応を取るだろうか? 

この物語は、無職の青年、高松健太(25)が、女子高生の笹岡佐代里(16)から告白されて、数奇な運命を辿る日常系のお話である。


ある日の夕方のこと、高松健太はやはり今回もうまくいかなかった就職試験の帰り道にイライラ気分を晴らすため、街路樹を渾身の力で蹴った。案の定、彼のつま先にジンジン激痛が走る。さらにその振動からか、この木の上からある物体が落下し、彼の頭をコツンっと直撃した。

「いっ、痛えーっ! 泣きっ面に蜂かよ俺はよう。なんやこれ?」

彼は地面に目を遣る。それはなんと、ミルクキャラメルのたくさん詰まった箱だった。

「!? なっ、なんでこんなもんが木の上にあるねん?」

彼はそれをひょいと拾い上げ、不思議そうにその箱を睨みつけていたところ、

「わあー、ありがとうございますう。私、さっきキャラメルちゃんを公園のベンチで口に入れようとしたら、カラスさんにパクッて銜えられていっちゃったんですよ」

「へっ!?」

突然、背後から一人の女の子に、にこにこ笑顔で話しかけられた。

健太は恐る恐る振り向く。そこにいた子は、ちょっぴり垂れ目な茶色い瞳に丸っこいお顔。ほんのり栗色がかった髪の毛を左右両サイド水色のリボンでくくり、肩より少し下くらいまで伸ばしていた。

「こんにちはーっ、はじめまして。私、林藤詩穂って言います。高校三年生です。あのう、藪から棒ですが、もしよろしければあなたのお名前聞かせてくれませんか?」

 その詩穂と名乗った子は顔を近づけ、健太に問い詰めてくる。健太は緊張からか、額から冷や汗がつーっと流れ出た。

「おっ、俺? おっ、俺の、なっ、名前は、たっ、高松健太、ですけど……」

 いつも以上に言葉を詰まらせながら答える。

「健太くんっていうんですね。フライドチキンが食べたくなっちゃいます。健太くん、私、あなたに一目惚れしちゃいました。真面目そうで大人しそうで賢そうで優しそうなところにすごく好感が持てるんです。あの、これから一緒に暮らして下さい!」

「えっ!?」

 健太は詩穂から唐突にそんなことを告げられ、あれよあれよという間にその子に手をグイグイ引かれ、近くにある駄菓子屋さんへと連れて行かれた。ここが彼女のおウチだという。そこには、他にも彼女と同い年くらいか年下の女の子が3人暮らしていた。なんとここは、女子中・高生が住む女子寮としても使われているというのだ。健太は住民全員から温かく大歓迎された。一般企業にはどこからも相手にされず、見捨てられて続けてきた健太だが、ここでは彼のその心優しい性格、人間性が彼女らに高く評価されたのだ。かくして高松健太は昭和の雰囲気も漂うこのおウチで、4人の個性的でかわいい女の子と一緒に暮らしてゆくことに――どきどきの同棲生活が始まる。

 

主な登場人物 


CVは空想です。スルーして下さい。

高松(たかまつ)健太(けんた):(CV:松岡禎丞)25歳。このゲームの主人公。身長

165cm、体重47kg。地方国立大学卒。彼は小・中・高通じて不登校、引きこもり経験は一切なし。遅刻、無断欠席もしたことがなかった。大学でもいつも真面目に講義に出席し、レポート提出期限はきちんと守り、必修単位を一つも落とすことなく留年せず4年で卒業。一浪はしたものの学業に関してはコツコツ努力型で上の下くらいの成績を維持してきた。しかし今では無職。真面目で大人しく、素直で正直者な心優しい青年。

林(りん)藤(どう)詩(し)穂(ほ):(CV:小岩井ことり)17歳。高校三年生。このゲームのメインヒ

ロイン。ドジっ娘。勉強(特に数学)は大の苦手。甘いお菓子が大好き。その中でも一番好きなのはミルクキャラメル。大学は関関同立を目指しているものの厳しい状況。

天宮(あまみや)こずえ:(CV:佐倉綾音)16歳。高校一年生。国語が一番の得意科目。女の子ながら相撲が見るのもするのも大好き。

シンディ・マクスウェル:(CV:東山奈央)16歳。高校二年生。オーストラリアからの留学生。178センチの長身。学業も優秀。物理、化学、生物、数学が得意科目。

小野川(おのがわ)ひな:(CV:村川梨衣)14歳。私立女子中学の三年生。マンガ、ゲーム、深夜アニメ、ラノベが大好き。詩穂と同じく勉強は大の苦手。でも中高一貫校だから高校受験のことなんて全く気にしない。背がかなり低く今でも小学生に間違えられることがよくあるらしい。健太のことを“無職お兄ちゃん”と呼び慕う。

谷(たに)右エ門(えもん):(CV:豊崎愛生)ここで飼われているペットの三毛猫の名前。第19代横綱・常陸山谷右エ門から、こずえに名付けられた。メス。


既存のゲームと異なる点。

①主人公は今をときめく青年であり、かつ今までにない全く新しいタイプ。

・ニートにも引きこもりにも属してない、強いて言うならばベテラン就職活動家。無能なくせになんとか仕事にありつこうとする彼の高い就労意欲は、皮肉にも採用する企業側からすれば迷惑この上ない行為に感じとられ、ニートや引きこもりに属する人々以上に心象を悪く持たれ、厄介者扱いされる結果を導いてしまっていた。(ニートや引きこもりに属する人々は、そもそも求人に応募してこないので企業側からすれば眼中になく、存在すら認識されていない。ようするに彼らは“真の勝ち組”ともいえるであろう。)就職活動を満身創痍で懸命にするがゆえに起きてしまう悲劇。学校生活に言い換えれば不登校の人ではなく、嫌でも無理して頑張って学校に来ている人がイジメの対象になってしまう状況と同じ原理である。

・『不採用通知ハンター』『不採用のトップスター(スペシャリスト)』『歩く不採用通知』などの異名も持つ。

・実在しても不思議ではないリアリティのあるキャラクター像。プレイヤーも彼に感情移入して楽しめるかもしれません。

②今では珍しくなった古き良き日本文化の賜物を、現代が舞台の作中に多数登場させることで、どこか懐かしさも感じられる。

・駄菓子屋さん、そろばん  黒電話  卓袱台

箱階段、柱時計、ダイヤル式テレビ、五右衛門風呂、その他いろいろ。


このゲームの遊び方。

プレイヤーは高松健太となり、女の子たちとコミュニケーションなどを楽しみながら日常生活を過ごし、各キャラの主人公に対する好感度などを変化させてゆく。その中でクイズゲームイベントも発生。高校レベルの一般教養問題。(タッチペンを使った選択式または記述式で、大学受験にも役立つもの。これによって高校生購買層の獲得が狙えます。)ハッピーエンドは詩穂の大学合格! 


ミニゲームの数々。  

そろばん計算、金魚すくい、水切り(石投げ)、ザリガニ釣り、めんこ遊び、

紙相撲、折り紙など。《十字キーやタッチペン、ABボタンで操作。》

他のゲームでは見られないような昔の遊びを中心に扱う。


特に工夫された要素。   

主人公が怠け者の不良ではなく、大人しく真面目で心優しい性格の青年に設定したことで、ヒロインと出会うまでのストーリーがより一層の悲壮感を醸し出しています。

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