Seaside Suicide

 死ぬ時は誰もいない曇り空の浜辺で死にたいなんて考えちゃったりする私は海のない日本国山梨県甲府市在住の15歳中学三年生。これって実は結構有名な映画の筋書きを借用したりしてるんだけどかといって私の身体は不治の病に侵されていることなんてもちろんなくて健康快活ぴちぴちお肌のJC3。なんだか死にたいお年頃。クラスメイトのカースト最下位眼鏡で色白ネットで無い乳晒してる高橋さんがやってるリストカットをみんなの前では一緒に茶化して、実はひっそり憧れる。だけど私はできっこない。だって絶対痛いじゃん。そういえば友達の美海みなみが大学生と付き合い始めたらしいんだけど初めてのエッチは超絶痛かったらしい。痛くないって人もいるらしいけど私はどんなもんなんでしょうかね。ところで年上ってどうなの。私は別に憧れたりとかしないんだけど。美海は山梨生まれなのにどうして美しい海って名前がつけられたのかな、今度一緒に伊豆とか熱海辺りに行ってみようかな。ああでもそういえば夏休みに入ったら隣のクラスの松永くんと海を見に行くことになっているのだった。本当に実現するのだろうか。「どこか行きたいところある?」なんて訊いてくるから冗談半分で言っただけなんだけど、本気にした彼はじゃあ海見に行こっかってまぁ身延線を南下するだけだしそんなに大層な旅じゃないのかもしれないけど男の子と遠出なんて初めてなのでちょっと緊張する。私のどこを好きになったのか知らないけど案外恋愛ってそーゆーもんなんじゃないのでしょうか。私だってまあ彼のこと嫌いじゃないし結構好きだったりするしでも結局私を好きって言ってくれるから好きみたいな適当なところもある。顔はまあまあだけど一緒にいればそれなりには自慢できるレベルかな。ところで海に行って何をするかとか特に話し合ってもいないし決まっていないのだけどあっちは何か考えてくれてるのかな。水着になるのはちょっと却下なんですよね、まだお肌を晒し合う関係ではないですよ。ううんそれじゃあいっそ「死んでみる?」なんて訊くのもいいかもしれない。返答次第によって彼の株が大きく上がるか下落するか、そんな試すようなこと別にするつもりはないけれどまあなんか憧れるよね男女で電車で遠くに逃げてそのまま心中みたいなの、ロマンチック。別に私には死にたい理由だとかこの身に降りかかる不幸やら不条理やらなんて特にありはしないんだけどまぁなんかノリでさ。一度は死んでみたいじゃん。だって甲府の街には何もないからロマンも供給不足なのです。中央線で東京行くより身延線で静岡とかどっかその辺に行く。ロマンチックではないですか。彼は勉強できるからきっといいとこの高校に入るんだろうけど私はちょっと届かないからきっと別の高校になるんだけど私は彼と同じ高校に入ろうとか彼にランクを下げてほしいとかこれっぽっちも思わない、まあ正直そんな感じ。いずれこの恋っぽい何かは終わるのでしょう。それでも目下ひと夏の海を目指す旅は楽しみ。日和ひよって映画とかにしようよとか言われたら多分別れて一人で南下します。美海を連れていこうかな。

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