第6章 3

振り返れば、グリーシャの不注意が問題を複雑にした部分はあるものの、一切の原因まで彼に擦り付けるのは極めて不公平である。こんな事が四六時中続き、彼が何かしら行動するたびに恐ろしい眼光が向けられるのだから、その心労は通り一遍のものではない。


では、かかる不安定な日中の代償として、グリーシャが得たものは何か? 目の眩むような黄金、誰もがうらやむ名声。残念ながらそんなものは無く、ただ星空を眺めないですむ夜、それだけだ。


ああ、なんと哀れなグリーシャ! 毛布の中で丸くなっている彼は、可哀想なことにそれすら十分に活用出来ていない。なぜなら、ここ数日というものずっと脳裏に沈殿しているもうひとつの問題が彼を苛み、安眠など望むべくも無いからである。


一体、彼が抱くもう一つの「問題」とは何であるか。それに関しては、本人の口から語られるのを待つべきだ。だから今はただ、その煩悶が一刻も早く取り除かれるのを祈ろう。


願わくは、グリゴリー・イワノヴィチ・セミョーノフの手が幸福の縄を握らん事を――。

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