The sixth. そして物語は冒頭へ。

「面白い物語だね。ハジメ。そんな話どこで聞いたの?」

そう同級生に問われたハジメという少女は照りつける太陽に、よくあんなに輝けるなぁ、と、ぼぅっと思いながら、黒い目をその同級生へ向けて語る。

「面白い話でしょ?聖書にも載ってないのよ。昔あるおじさんが教えてくれてね。子供の頃に。その頃から一度たりとも忘れたことは無いわ。」


場所はとある喫茶店。その窓際のカウンター席に二人は腰掛け、アイスティーを飲みながら談笑していた。

ふぅん。と同級生は相槌をうち、ハジメに尋ねる。

「それで、その後はどうなったの?無限の勇者と魔王は無くなっちゃったの?」


同級生は問う。その不思議な物語に惹かれて。


「さぁね。どうなっちゃったのかしらね。荒れ果てた荒野で愛を誓ったのかもしれないし、そよまま混沌に埋もれて、無限も無限じゃなくなっちゃったかもしれない。もしかしたら、明るく輝く太陽になったかもしれないわ。」


そんな曖昧な回答を残して、ハジメは再び太陽へと目を向ける。


「ふぅん。でも、神様が戦いあって世界が滅んじゃうなんて、変な話ね。」


そう問いかけられてハジメは返す。


「いいえ。彼らは神では無かったわ。ましてや化け物でもなかった。だって彼らは無限だったんだもの。彼らは誠に人間だったのよ。」


太陽に雲がかかり、辺りが暗くなったのを見て、ハジメはクスリと笑う。

へんなの。と言いながら同級生は時計を見る。


「ヤバッ。もう行かなきゃ!じゃあねハジメまた明日。」


「ええ。また明日。テスト頑張ってね。今度は欠点じゃないようにね。」


うるさい!分かってるよ!と、同級生は端的に返して走って去って行く。残されたのは空っぽのコップが一つ。ハジメはなんとなくそのコップに水を注いで、いっぱいにした。

喫茶店を出ると、空には白い雲が浮かび青い空にそれが妙に映えて見えた。


白い雲。


青い空。


トンビは環を描き。


そして、物語は。


冒頭へ。





荒れ果てた荒野。空も地面も、あらゆる個は粉砕され、一つになり。まさにそこは混沌となっていた。光は埋もれ、闇もまた埋もれ。何もかもが何もかもであるという状況の中、一人の少女は呟いた。




「光あれ。」



《終》









『自然数は神が造りたもうた。だが、それ以外は人のなせる技である。』

——レオポルト・クロネッカー








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無限の魔王と無限の勇者と にょるにょる @nyolnyol

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