エルピナ歴170年二月 街から帰って
・二月七日
畑の様子を確認したが特に目立った獣害は見られなかったので安心した。
菜の花が程よく育っていたので、ついでに収穫しておく。ずっしりとした感触に充実感を覚える。
・二月八日
菜の花は収穫したので畑を鍬で適当にならしておく。
ならして柔らかくした後は、生ごみから作ったたい肥を入れて、かき混ぜる。一息つこうと思ったら、足がふらついた。やっぱりこの仕事は中々にハードなものだよね。
冷えた水が甘くて、その甘さに身を委ねると心地よい疲労が起こすのを躊躇わせるが、もう一息どうにかしないので頬を両平で叩いて無理矢理どうにかした。
・二月九日
昨日柔らかくした土を小さな植木鉢に入れたものに、トマトの種を植えた。
合計で三十個あるので、重い軽作業ではあるがこうしていると色々な事を忘れられるようで、良い。
・二月十日
この間街に出た時の、久々に触れた鮮やかな雰囲気が忘れられない。
その気持ちを表現しようと、なんとなく枯れ木を削って人形にしようとしたのだけれど、そう思った時はもう一日も終わりだったし明日やろうと思う。
・二月十一日
気付くと子供の人形を掘っていた。
ニコニコと笑っている、まるで子供が幼稚園で母親に向けて描いたような素朴な表情だ。
なんだかんだで最後まで没頭し、気付くと街で出会った市場の外れに居た子供の格好をした人形になっていた。
布団に入るころになると、一日かけて作られたそれを僕は暖炉に捨てていた。
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