第2話
それから母はまた病院に戻り、わたしたち兄弟だけの生活に戻った。
父と交代制にしたのか、3日に1回ほど母は家に帰ってきていた
そのたびに、望の様子を聞きたがる弟たちに母は望の話をし、わたしたちは望の帰りを楽しみにしていた。
しばらくして母から、
「明後日、退院することになったから準備しといて」と
連絡があり、望の誕生から半年ぐらいたった頃、初めて家族10人全員が揃った。
「ねぇ!!抱っこ!していい??」「ぼくがいちばん!!」「ぼくが先!!」
相変わらずガヤガヤとうるさい弟たちのマスコットになった望。
「激しい動きはダメだから、優しく抱っこだよ」と母は弟一人ずつに望を
抱っこさせていった。
わたしは小さな望を覗き込み、病気だって言ってたけど見た目にはあんまり分かんないもんだなと思ったのを今でも憶えている。
それからは全員が望を気遣い、可愛がる毎日。
望の傍らには常に、いつ発作が起きてもいいようにと簡易酸素マスクが置かれていたけど、発作がでない限り望は、
他の弟たちとかわらないくらいに活発でよく笑う元気だったから、
みんなは学校から帰ってすぐに望のいる部屋に集まり遊ぶのが日課になっていた。
まさに、望を中心に家族全員が動いていた。
わたしはそんな日常が当たり前で、これからも望を中心にして過ごしていくんだろうななんて思っていた。
望は、雨の日が苦手なようで雨が降ると顔色が真っ青になり横になっていることが多かったような気がする。体調が悪くなると母は決まってわたしに
「彩矢! ちょっと望の調子が悪いみたいだから抱っこして酸素あげて」
と言うようになっていた。
真奈は勉強と部活で忙しいし、弟たちに任せるといつも自分たちに酸素マスクをあて遊んでしまうからとゆう理由で
いつからか、わたしは望の世話をすることが多かった。
その後も、何度か体調が悪くなっては入院することが続き、母の居ない生活が多かった。
わたしも姉の真奈も母に負担をかけてはいけないと、家の事を必死でこなしていたが、小さな弟たちの世話は思うようにいかず、大変で
こんなことを毎日、普通にこなしていた母の体力に尊敬と同時に
いつもありがとうと呟いた。
騒がしくうるさい毎日だったけど、ちゃんと家族だった・・・
母は、よくある大家族の肝っ玉母さんで時々恐いけど、でも優しくて。
父は、おしゃべりで面白いよくあるお父さんで。
家の中にはいつも、弟たちのケンカや騒ぐ音。兄弟の笑い声。母と父の笑い声が
日常的などこにでもある大家族だった。
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