剥がれてゆく家族
甘柚 桐子
第1話
8人兄弟の8人目が生まれたのは、彩矢が小学5年生の時。
頭が良く、運動も得意な中学1年生の長女真奈に、小学4年生長男、小学生になったばかり次男そのあとは、5歳、4歳、2歳の弟たち。
いわゆる大家族ってやつの次女に生まれた私は、おしゃべりな姉と騒がしい弟たちに挟まれているせいか兄弟で一番おとなしく無口な性格だったと思う。
「もうすぐ生まれるってさっきお父さんから連絡があったよ」
そう言って、姉の真奈が部屋に戻ってきた。
あの時の私にとって、6回目の弟誕生になんの興味もなく
「あ、そう」
と素っ気ない返事をして、読みかけの漫画に目を戻した。
「いつ帰ってくんのかな」「名前!考えなきゃね!!」「ぼくが考える!」「違うよそれはお父さんがやるんだよ!!」
姉の報告に、5人の弟たちは、すでにお祭り騒ぎ。
こんなに騒がしい弟が5人も揃っていれば、1人の増員なんてなんてことないことで、またか・・・ぐらいな感じでいたと思う。
数日して退院してきた母の腕にも、父の腕にも、5番目の弟の姿がなく・・・
「あれ?赤ちゃんは?」
「ねぇ!!おとうとは??」
と騒ぎ始める弟たちを払いのけ母はバタバタと何かをし始めた。
バッグにタオルや寝間着を詰め込む母は小さな声で
「赤ちゃんはまだ病院・・・しばらくお母さんも赤ちゃんもお家には帰ってこれないかもしれないから」
と言いながらまた、荷物をまとめ始めた。
「ちょっとね、検査が必要になったから、赤ちゃん」
「2週間ぐらいは、お母さんも帰ってこられないから、弟たちの面倒と家の事をしばらくお願いするわね」
母は、姉にそう説明すると父と2人でまた病院に行ってしまった。
その後ろ姿を見ながらわたしは
「検査って、大丈夫かな・・・」
と呟いた。
「家のことは、彩矢とわたしで分担してやるんだよ!お父さんは仕事もあるんだし」
玄関で突っ立っていたわたしに、姉はみょうな責任感をだしてきた。
なんだか、やる気だな。お母さんがいないとかめんどくさいな、なんて思いながらも怒られたくないから
「はーい」
と軽い返事をした。
火を使う食事の支度は、あぶないとゆう理由で姉に仕事になり
わたしは洗濯と掃除の担当になった。
弟たちも手伝ってはくれたけど、遊び半分でなんの役にもたたず、1人でやった方が断然はかどった。
母の居ない生活は想像以上に大変で、あの頃は学校に行って帰ってきたら家の事をしてと姉も私にはめまぐるしい2週間だった。
2週間後、母が一人で家に戻ってきた。
とりあえず母だけ帰宅したらしく、小さな弟ははまだ病院にいた
なんだか、いつもより口数がすくない元気のない母の姿を憶えている
その夜、父から話があると家族全員が居間に集められた
涙ぐむ母の代わりに、父から
弟に重い病があることが判明して、長くは生きられないと告げられた。
理解できない弟たちは「いつ帰ってくるの?」「いつ治るの?」と
母や父に話しかけ・・・
姉は「退院はできるの?手術とかするの?」と尋ね。
わたしはただ・・・下を向き涙を堪えた。
こうして、8番目に誕生した弟、望は私たち家族の中心になった。
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