第3話 通学電車

 学生の朝は早い。

 5分前行動を勘違いした意識高い教員が登校時間を30分繰り上げたせいだ。おま絵にはそんな権限があるのか、とても疑問である。

 通学電車は萌えの宝箱とは、誰が言ったのであろうか。一つのイヤホンを二人で使う野球部員、特に満員電車でもないのに寄り掛かったり、膝の上に座ってみたりいちゃつく男子の姿はバカバカしくも、今日の活力になる。

 「え、なんでドロップしないの?」

 「早くしないとイベント終わっちゃうじゃん。」

 モンストを一生懸命やっている二人をよそに、ぼんやりツムツムをやっている。今朝も三馬鹿の姿が目に入る。私は三馬鹿とは縁が深い。思えばこのおバカトリオは小学校からの幼馴染だと、中学の時分聞いてしまった覚えがある。出会ったのは中学校の時であったが、そんなに萌えはしないものの、やはり萌えを意識してしまう今日日、奇数はよくない。

 そして何より、うまい具合に10センチくらいずつの身長差があるのもよくない。最大20センチ、うん、悪くない。あと少し見た目が私好みだったら禿萌えたことこのうえない。

 「わわっ、あ、死んだ。」

 「ちゃんとつかまってろよ。」

 「うるせー。」

 電車の揺れで、馬鹿(小)が馬鹿(大)にもたれかかる。ぶつかったことよりもモンストのほうが大事らしい。よくわからないけど、死んだらしい。そんなことで、私は萌え死なないが。両手でモンストをする馬鹿(小)に対して吊皮をつかむように促す馬鹿(大)にそのまま寄り掛かる馬鹿(小)。あきれた視線を送るのは馬鹿(普)である。こんなところで三角関係かよと妄想も膨らむが、実際のところ目の前でべらべらしゃべられているのは正直、煩い。だからこそ、気持ちを落ち着ける意味で妄想するのだけど。

 「あと何駅?」

 「……2駅、そろそろどけよ。」

 「いいじゃん、俺のこと嫌い?」

 「……は?」

 「せんせー、ここにほもがいます。」

 「やめろ、馬鹿。」

 かまってちゃんな馬鹿(小)が可愛らしくもふざけた調子で、二人を茶化すのに、相変わらず塩対応な馬鹿(大)。そこはもっと優しくしてやれよ、と思うがリアルな男子高校生のホモが見れて私としては眼福である。そんなやり取りを見て、嫉妬した馬鹿(普)が放った言葉が私にとどめを刺した。

 軽く否定する二人の表情はどこか赤らんで見えるのは私の脳みそが腐り果てているからフィルターがかかって見えるのかもしれない。意外な反応に思わず馬鹿(普)も黙ってしまうのが、なんとリアルな反応か。もしかしたらこの二人はできているのかもしれない。

 はぁ、萌え死のう。

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