第7話 進める

金曜日

今日が終われば明日は休日なのだが、休日出勤を命ぜられた自分には何の楽しみも無い一日になる

作業を淡々とこなしていると社内放送が入り事務所へ呼ばれた

また嫌な上司の顔を見て聞きたくない言葉を聞かねばならないのかと思うと

正直、逃げ出したい気持ちになる

ドアを開け椅子に座ると上司が一枚の書類を持ってきた

どうも自分の担当するラインの作業実績と作業時間の報告書のようだ

「確認し何か言うことはないか」少しきつめの言葉に体が震える感じがした

報告書を確認すると他のラインとの比較された数値が並んでいた

良い傾向ならこうして呼び出されることはない

「管理する自分の責任です」

そう言うしかなかった

それで済むはずは無く、そこから延々と話は続きその間ラインは停止する

他の作業者にとっては良い休憩時間になり、誰もが「また呼び出しやから煙草でも吸いに行こう」となる

叱責を受けながらもその上司の言葉を褒めて、他の作業者に伝えなくてはならない

あの人は作業を細かく見て分析している

そして的確な指示を出す理想的な管理者だと


逆に言えば、人の仕事しか見てなくて、自分は何もしない

適当に本やテレビ番組に出てきた言葉を聞かせて威張るだけの上司だ


そんな言葉を何度飲み込んできただろうか?

今夜も遅くなると妻に連絡して、誰も居ない事務所で作業をしてると

またあの思いが蘇る

「消してしまえば良いんだ」

その言葉はいつしか

何を、どうして、何の為に、から

あれを、こうして、あの為にへと変化していく

自分の中で何かが進んだ

それはきっと喜びに繋がるのかもしれないと



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