第4話 叫び
朝の話題は寂しいものだった
知り合いの家族が亡くなった
その現場を見ていた
何も助ける力も無くただ黙って見ているしかなかった…
僕等にはいつもの日常が始まる今日も、彼らにとっては消えることの無い傷跡が深く刻まれる一日になるのだろう
そう思うといつもの音楽を聴きながらの通勤をする気も無くなっていた
今日は午前中のみの作業にして病院に行く日だ
前職でも多大なストレスを抱えた自分はそのストレスを逃がすことが出来ずに
心がパンクしてしまい入院、治療を受けている
いつもの受診
「どうですか?」 「浮いたり沈んだりです」 「では薬は変更せずこのまま様子を見ましょう」
予約していても平気で一時間近く待たされ、診察は5分も掛からない
そんな病院通いも4年目になろうとしている
大量の薬を見るだけで鬱な気持ちになってくるようだ
帰宅すると家族は仕事と学校で誰もいない
コンビニで買ってきた弁当を食べて煙草を一服
テレビを見るも特に面白そうな番組は放送されていない
ネットでニュースでも見るかとパソコンの前に座ってコーヒーを飲みながらネットを見ていると昨日の火事の記事が載っていた
「連続放火の疑いで容疑者を逮捕」
「容疑者は火災が起きた家族の身内」
何てことだ、犯人が捕まったことは良いとしてもその犯人が身内だとは…
しかもその名前は自分も知っている
物静かな人だったけど少し変わった感じもする人だった
妻が言うには、昼間もずっと家にいるようで、時々外に出ては家の前でなにやらボソボソと独り言を呟きながら家を出たり入ったりを繰り返すらしい
恐らく彼も心に病を持った人だったんだろう
僕等はニュースを見て色んな感じ方をして家族や知り合いとの話題になる
でも今日の遺族の叫びは何処に届くのだろうか?
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