第3話 Shall We Dance?

◆NEOトーキョー 環状線道路


 赤いツーシーターが道路脇に停車した。

 ドアを開けて長髪にサングラスをかけた女性が車外に出てくる。

 日差しを浴びて見事な銀髪がキラキラと輝いた。

 ポロシャツにパンツルックのラフなスタイルだが、どこか緊張感のある、美しいと言うよりも凛々しいという表現が似合う女性だ。


 女性はエンジンルームを開けると中を覗き込み、腕組みをした。

 一つ一つの動作が実に綺麗で絵になる。


 丸いデザインの古びたセダンが女性に気付いて、後に停車した。

「どうしましたか?」車から降りたスーツ姿の男性が声をかけた。

 女性は困ったように両手を上げ、肩をすくめた。

「エンジンの調子が悪いの」

「私が見てみましょう」男性が近寄ってエンジンを覗き込む。


 手を伸ばし、汚れるのもかまわずにエンジンをチェックする。

「これで、大丈夫のはずですよ」顔を上げた男性は、ハンカチで手を拭きながら言った。

「ありがとう。助かったわ」女性が礼を言う。

「アルファのスパイダーですか……なかなか良い趣味だ」

 男性が車を見ながら言った。

「ええ……もちろん、レプリカよ。

 オリジナルは連合法にひっかかるから飾ってあるの。見て楽しむだけね、かわいそうだけど」


「オリジナルのアルファロメオをお持ちとは、うらやましい」

 男性が大仰に驚く。

「よければ、今度見にいらっしゃる?」

「もちろん! これは、私の連絡先です。いつでも声をかけて下さい」

 男性が喜んで名刺を渡した。

「車がお好きなのね」女性が微笑む。

「男性は総じて車好きです。――それから、美しい女性も」

「まあ……」


「ところで――猫はお好きですか?」

「ええ……好きよ」車を見ながら話す二人。

「実は先日迷い猫を拾いましてね。首輪に“AH”とイニシャルが書いてありました」

「まあ、可愛そう……飼い主は見つかりまして?」

「ところが不思議な事に、いくら探しても飼い主は見つからないんですよ。

 ――どうも“AH”という猫は、どこにも存在しないようでね」

「それは不思議ね。もしかしたら、別の名前の猫なのかもしれないわね」

「きっと、そうかもしれませんね」

 男性は、それだけ言うと自分の車に乗って去っていった。


「引き籠もりの天才科学者か……あなたはいったい誰なのかしらね、ドク」

 男性からもらった名刺を見つめながら、カサンドラ・ザノッタは呟いた。

 そこには、ミラージュ探偵事務所の文字。そして、その上から「気をつけろ」と殴り書きがしてあった。



◆ナレーション

 惑星テラツーは二度の統合戦争の後、設立された宇宙連合府の主星だ。

 初期に見つかった極めて地球に近いこの星は、銀河の奇跡とも呼ばれ、三大星間企業を始め、名だたる企業の本部が肩を並べている。

 まさに人類宇宙の中心とも呼べる星である。


 そして、この星においてもっとも大きな都市、それがNEOトーキョー。

 ここには三大星間企業の一角、ミツルギグループの本社が置かれていた。


◆オープニングテーマ “Touch go ソルヴァイン”


◆NEOトーキョー中央公園


 早朝の公園。

 レオとヨーコが互いに向かい合い、手を合わせている。

 なめらかな動作で、左右に動き、円を描き回る。

 それは、静かで激しい攻防だったが、知らぬものが見れば、仲むつまじい二人が踊っているように見えたかもしれぬ。


 やがて、均衡が傾き、ヨーコがバランスを崩して尻餅をついた。

「あいた――――

 今度こそは、と思ったんだけどなぁ。悔しい~」

 空を仰いで、頬をふくらませるヨーコ。


「今のは危なかったな……しかし、驚いたよ。

 ここ数日の間に君はどんどん上達していくね」

 レオが破顔する。


「本当ですか?」

「ああ……特に聴功が素晴らしい」

「……」ヨーコが何か思案するように、俯いた。

「どうした?」レオが訪ねる。


「でもレオさんは、まだ本気を出してないですよね?」

 ジッと見つめるヨーコ。

「どうしてそう思うんだい?」

 レオの問いにヨーコが戸惑いの表情を浮かべる。


「ただ……なんとなくそんな感じがしただけです」

「気のせいだよ。ボクはボクで一杯一杯だ」

 ヨーコの肩に手を置くレオ。

「そうですか……」腑に落ちない様子のヨーコ。


「なんちゅうことや……」

 ヨーコたちの様子を離れたところから覗き見しているリタとクリス。

 二人とも双眼鏡を持っている。


「なんで、わたくしまでいっしょにこんな事をしてるんでしょう」

「ヨーコの様子が最近変だから、気になる言うたんは、クリスやないか」

「だからってこんな、覗き見なんて……」

「シッ! 男がヨーコの肩に手を置いたで……これは……いくんか?」

「……」ゴクリと唾を飲み込むクリス。


「―――!」

 何かに気づいたように、急にこっちを向くヨーコとレオ。

 慌てて隠れるリタとクリス。


「なんだろう……誰かに見られているような気がしたんだが」

「ええ……僕もです。多分犯人は想像がつきますけど」

 こめかみを押さえるヨーコ。苦笑するレオ。

「ちょうど良い、今日はこれくらいにしよう」

「……そうですね。また明日」

 挨拶をして、別れる二人。

 名残惜しそうにレオを見送るヨーコ。


◆ミツルギ本社内トレーニングルーム


 畳敷きの道場。

 大の字になってのびているリタとクリス。

 二人ともトレーニングウェアを着ている。


「へばるのは、まだまだ早いよ。

 さあ、立って!」

 仁王立ちのヨーコが声を張る。


「なあ……なんかヨーコ怒ってへんか?」

「知りませんわよ!」

「そこ! こそこそしゃべらない!」

 一喝するヨーコ。

「はい!」しぶしぶ立ち上がる二人。


「稽古をつけて欲しいって言って来たのは、リタとクリスなんだからね!

 さあ、次は二人いっぺんにかかって来て良いよ」


「そんな……さすがにそれは……」心配そうなクリス。

「ふふふふ……調子にのったな。

 ヨーコのくせに生意気やで!」

 不敵に笑うリタ。

「アレをやるで、クリス!」


「……」

 クイクイと手招きするヨーコ。


「うら――往生せーや――――」

「ジェットストリーム――――」


ビタン! バタン!

 中を舞い、畳に叩きつけられる二人。

「ぐぅ……やっぱり、三連星は三人いないとダメですわ……ガク」

「なんでや! うちもスピードには自信があるのに」


 ため息をつくヨーコ。

「あのねリタ。確かにリタはスピードもあるし、運動神経も僕より良いよ。

 でも、動きが見え見えなんだよ」


「そんなアホな! フェイントかて入れてるやんか。

 こんな感じに!」

 リタは跳ね起きると左右に体を揺らした。


「でも、リタってせっかちでしょ?

 ここぞという時はすぐ顔に出るし、体に力が入るのもなんとなくわかるんだよ」

「リタさんは、ヨーコさんと身長も体格もそれほどかわらないのに、ナチュラルに強いので力とスピードで押し切ろうとしてしまうんですわ」

 体を起こしたクリスが同意した。


「なっ――――」絶句するリタ。心当たりがあるらしい。

「今まではそれで何とかなって来たけど、それじゃあダメだって思ったから、僕に稽古をつけてくれ、なんて言ってきたんでしょ?」

 ヨーコがリタとクリスの顔を見て笑った。


「……その通りですわ。もうあんな思いはゴメンですもの」

「せや。なんや、お見通しっちゅうわけかい。ホンマ、ヨーコのくせに生意気や」

 リタもつられて笑った。


「それで? ヨーコセンセ、うちはどうすればええんや?

 やっぱりヨーコみたいに、敵の動きを読んで動かなあかんのか」

「う~ん……それより、もっとリタに合った戦い方をした方が良いと思うよ」

「うちに合った戦い方?」リタが首をひねった。


「リタの反射神経の良さは、ずば抜けてるから、敵の初動を見てから動いても十分対応できるはずだよ。ほら、ゴライアスの攻撃も避けてたでしょ?」

「そういや……そうやな」

「あの時みたいに、体の力を抜いて、相手の動きを良く見るようにすれば、自然と体が動くと思う」

 なるほど、と頷くリタ。

「わたしくは、どうすれば良いんですの?」

「クリスは――――」


◆◆◆



 リタと向かい合うヨーコ。

 目まぐるしい組み手争いから、ヨーコが素早く手を伸ばす。

「――――!」

 しかし、リタがギリギリでそれを躱した。

「もろたで! 今度こそや!」

 伸びきったヨーコの腕を掴んで、投げをうつ。


 やった――――と、勝利を確信した途端、両手に感じていたヨーコの重みが消えた。

 「へ?」

 瞬間移動でもしたかのように、リタの目の前にヨーコの背があった。

 次の瞬間――――


ビタ――――ン

 リタは再び畳の上に大の字になっていた。


「なんでや――――!」

 リタが叫ぶ。

「今のは危なかったよ。完全に僕の動きを見切られていたから」

 ヨーコが笑う。

「その割に余裕があるところがむかつくわ」


「でもリタさんって、やっぱりすごいんですねぇ」

 クリスが感心したように言う。

「うん、僕がちょっとアドバイスしただけで、こんなに上達するんだもの。

 すごいよ、リタ」

「ん――――褒められるんは、ええ気持ちやけどな。

 実は、ヨーコの弱点を見つけてしもたんや」

 リタの言葉に驚くヨーコ。

「え! 弱点? そんなのあるの」

「わたくしもそれは、初耳ですわ。なんですの、その弱点というのは」


「ふふん。聞いて驚け。ヨーコは大きな行動に出る時にな?

 ――――こう、右足を引くんや」

 リタは斜めに構えると右足を軽く引いて見せた。

「………」ヨーコはそれを見て、じっと考え込んでいる。

「普段は、あまり目立たへんけどな。ここぞ――――という時にはこんな感じになるんや。どや? ヨーコ」同意を求めるリタ。


「あ……言われてみれば確かにそうですわね」

 思い当たるところがあるのか、クリスも頷く。

「もしかすると……半身はんみかな」ヨーコが呟くように言った。

「ハンミ?」

「こう……斜めに構えるやり方なんだけど。

 桜華拳おうかけんは、僕のじいちゃんが中国拳法に日本の柔術を取り入れて作り上げたものなんだよ。この半身はその柔術の構えなんだ」

 ヨーコは右足を引いて斜めに構えた。

 普段のヨーコの腰を落とした構えより、背筋を伸ばし立っているので自然体に近い。


「僕もこの構えから型のトレーニングをしてるから、ここぞという時には、自然とこれに近くなるのかもしれないね」うんうんと一人納得するヨーコ。

「でも……そうか。それでさっきは、僕の攻めを綺麗に躱したんだね。

 やっぱりリタはすごいや」

「そうか? もっと褒めてもええんやで――――ワハハハハ。

 ところでな、ヨーコ」

「え? 何かな」


「カレシとは、どこまで行ったんや? あ?」

「へ?」

「あの白髪のアンちゃんとは、どこまでいったんや?

 まさかもうチッスはしたとかか?」

「な――――!ななななな……ナニを言ってるのかな」

 ようやく意味が飲み込めたのか、真っ赤になるヨーコ。


「こまるなーキミ。うちらのイメージっちゅうもんもあるんやから、マスコミには見つからんようにしてくれんと。なあ、母さんや」

「だから誰が母さんですか」クリスがため息をつく。

「レオさんとは、稽古につきあってもらっているだけで……全然何でもないんだよぉ」涙目のヨーコ。

「そうなんですの? わたくしは、てっきり……」


「もぉ……クリスまでそういう事を――――って、やっぱり今朝覗いてたのは、リタとクリスだったんだね!」

「あ――――しもた!」一転、旗色が悪くなったと気づいて逃げ出そうとするリタ。

「まてこら――――! もう一度稽古をつけてやる――――」

 怒るヨーコ。逃げるリタ。



◆アリオン・サテライトニュース 編集部


「シンディさん、何見てるんですか?」

 犬顔の異星人ルー・ルーが机上のモニターを覗き込みながら言った。

 フサフサした尻尾をパタパタと振っているので、機嫌が良いようだ。


「なんだ……ワンコか。アンタは楽しそうで良いねぇ」

 シンディ・オコーナーがそっけなく答える。

「ルー・ルーはワンコじゃないです! 差別発言ですよ、ソレ。

 また、異協(異種族人権保護協会)に目をつけられちゃいますよ」

「はいはい」と適当に手を振るシンディ。


「あっ! これ、トライ・アンジュの新しい動画ですね。

 しかも、すぐ引っかかって消されちゃったヤツじゃないですかぁ」

 横目でシンディを見るルー。


「うるさいよ、ダマレ。

 ―――多分、作業員あたりが隠れて撮ったんだろうねぇ」

 ため息をついて、モニターを見た。

 赤い巨人と戦う銀色の機体が映っている。


「確か、新型ソルヴァインの実験中に無人機のAIにバグが出て暴走したとか……

 あっ、ヨーコのソルヴァインだ。可愛いよね、彼女」

 ルーがモニターを指さして嬉しそうに笑った。

「アンタ、ヒューマンタイプでも守備範囲なの?」

「なんとなく子犬っぽいじゃないですか、ヨーコ」

「やっぱりワンコなんじゃない……」ボソリと言うシンディ。


「でもなぁ、何となくきな臭いんだよね」

「何がです?」眉見に皺を寄せるシンディにルーが聞いた。


「あれだけ可愛くて才能もある娘が三人揃ってるだけでも嘘くさいんだけど……」

「それは……ひがみってやつじゃ……」ルーのツッコミは無視するシンディ。

「スポンサーがミツルギの……しかも、最近なにかと噂のゴードン専務っていうのは……どうもねぇ」

「でもシンディさん、トライ・アンジュの特集任されていたんじゃないんですか?

 すごく乗り気でしたよね」


 シンディは黙ってルーの耳を掴むと顔を寄せた。

「いたた……何するんですか」ルーが顔をしかめる。

「彼女たちの過去については、ほとんど公表されてないけど、こっちで出来る限り調べたのよ。――でも、ダメだった、まったく手がかり無し。

 例えばブロンドメガネの娘」

「クリス――クリスティーナ・スターリングですか?」

 ルーの言葉に頷くシンディ。

「そう――彼女は地球の名門のお嬢様って事だけど、地球出身のスターリング家なんて財閥は無いのよ」


「経歴詐称なんて、よくある事でしょう?

 ――そういうのは、言わぬが華っていうんですよ」

 ルーは悲しげに目を伏せ、クーンと鳴いた。


「ワンコのくせに上手い事を言うわね。そんなのは、私も解ってるわよ。

 何年この商売やってると思ってんのよ」

 シンディは窓外へ目をやり、ため息をついた。

「彼女たちからは、そういうかたりをやる娘特有の必死さがないのよ。

 あの娘たちには――すくなくともあの娘たち自身に嘘はない。

 ――だから、余計に可愛そうなの」

 そう言って、シンディ・オコーナーは席を立った。

「あれ、シンディさんどこへ行くんですか?」

 ルーが訪ねる。


「ミツルギのパーティよ。後は、直接会って確かめるわ」

 シンディの後姿を見つめるルーの肩を誰かが叩いた。

「部長――」ルーが驚いて声を上げた。

 アリオン・サテライトニュース編集部長の渡会わたらいシンがそこに立っていた。

「あいつには、5歳になる娘がいるんだ。仕事が忙しくてゆっくり娘と遊んでやる事も出来ないってぼやいてたな。

 ミツルギのお嬢ちゃんたちは、あいつの娘とは随分離れてるが、どうしても重ねちまうんだろう。母親ってのは、そういうもんだ」


 渡会わたらいはどこか遠くを見るような目で言った。

「俺だって同じだ。若い娘が大人の勝手な都合で振り回されるのは、見ていて気分の良いもんじゃないな」

 夕日がその深い皺を刻んだ面を照らした。

 NEOトーキョーのビル群が長い長い影を落とす。


「神よ、願わくばわたしに、変えることのできない物事を受け入れる落ち着きと、変えることのできる物事を変える勇気と、その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ」

 渡会わたらいは、彼の口癖でもある祈りの言葉をそっと呟いた。

 



◆◆◆


 週末の夕暮れ時、人と車で賑わう街。

 一台の高級車の助手席にスーツを着て座っているレオ。

 黒いバディホンで誰かと話をしている。


「やあ、調子はどうだい?」

「なんや、兄貴か。あれだけボコボコにされたんや、良いわけあらへんやろ」

 若い女の声が答える。


「――でも、今は悪うない。ようやく兄貴の仇が討てるんや。

 気合いも入るっちゅうもんやな」

「……それは良かった。じゃあ、行けるね?」

「……任せとき。先に行ってるで」

「ああ……ボクもじきに行くよ」

 機械の駆動音がしたかと思うと、通話は切れた。


 暗くなったバディホンの画面から、窓外へ目をやるレオ。

と話しているという矛盾にすら、気が付かなくなっている。

 もうそこまで破綻してるのか……」悲しげに呟く。


 ビルが建ち並ぶ街中に、まるで別世界のような緑の空間が姿を現した。

 木々の向こうに夕日を浴びて輝くクリスタルのドームが見える。

 車は、大きくカーブすると入口から敷地内へと消えていった。



◆ミツルギ・クリスタルドーム パーティ会場


 ガラス張りの天井からは、街の灯りや星の煌めきが見え、まるで屋外パーティのような趣である。

 生演奏のクラッシックが流れる会場内では、食器が触れ合う音や人々の喧噪さえ、音楽の一部のように思えた。


 楕円形の広い会場は、ところどころに大きなテーブルが設けられ、和洋中や代表的な料理の他、一部の星でしか食べられないと言われる珍しい料理も盛り付けられていた。

 奥には広いカウンターがあり、様々な種類の酒や飲み物が揃っている。

 楽団の前のステージでは、ダンスに興じる者たちの姿もあった。


「あんのタヌキオヤジィ~、うちの事をヤラシー目で見よって、鳥肌立つっちゅうねん」リタが文句を言いながら、グラスに手を伸ばす。

 今夜のリタは、フラメンコダンサーの様な華やかな赤いドレスを着ている。


「そんなに文句を言うなら、そんな胸元の開いたドレスなんて着なきゃいいのに……

 ――あんまり飲んで酔っぱらっちゃダメだよ。これって結構偉い人も来てるパーティなんだから」

 ヨーコがたしなめる。ヨーコは白いチャイナ服に花の髪飾りをつけている。


「アホやな。このリタ様がこれくらいで酔っぱらうわけあらへんやろ。

 それにこれは、お酒やあらへん。こどもワインや!」

 こどもワインと書かれたボトルを見せて胸をはるリタ。


「ホントにそれ、大丈夫なのかなぁ……僕はあんまりお酒って好きじゃないや。

 昔、じいちゃんに飲ませてもらった事があるけど、苦いばっかであまり美味しくなかったし」


「命の甘露の味がわからんとは、不憫なヤツやな……」

「いいもん!」むくれるヨーコ。

「あっ、すねた。アハハハハ」


「リタさん、それくらいにしてあげたらどうです?」

 クリスがグラスを片手に現れる。

 クリスは青い大人っぽいドレスに髪を結っている。


「今夜のパーティは一応わたくしたちが主役。日頃トライ・アンジュの活動に理解を示して下さっている方々へのお礼という名目なんですから、あまり羽目を外しすぎないようにしないと……」


「相変わらず、クリスはまじめやな。でも、そう言うクリスかて、さっきはしぶーいオジサマと楽しそうに話してたやん」

「仕事ですから」すまして答えるクリス。

「はいはい、ご立派」リタが適当に手を叩く。


「う~~不公平だ」ヨーコが頬を膨らませた。

「なにがや?」

「どうしてクリスやリタばっかりモテるのさ、不公平だよ」

「“不公平だよ”って言われても……なぁ?」

 リタが肩をすくめる。


「そうですねぇ……でも、ヨーコさんだって大人気だったじゃないですか」

「せや、モテモテやったよなぁ――――女の子に」

 リタがシシシと笑った。

 実際ソルヴァイン・グラディエーターで戦うヨーコの勇姿に憧れる女性ファンは多かった。パーティの開会の挨拶の時も、ヨーコに黄色い声援がとんでいた。


「う゛――――」

「なんちゅうても“オネェサマ”やからねぇ~。

 あれにはさすがのリタ様も負けるわ、ほんま」

「リタぁ、意地悪だよぉ~」

「ヨーコさんは拳法の達人で、頼りがいのある方ですからね」

「クリス、それフォローになってない……」

 ヨーコが涙目で抗議した。


「あら、楽しそうね」

「あ……隊長。それにロゼにスカーレット、マゼンダ」

 トライ・アンジュの隊長カサンドラ・ザノッタがオペレーターの三姉妹を連れて現れた。カサンドラはいつものスーツ姿。三姉妹はお揃いの着物を着ている。


「こんばんわ。みなさん楽しそうですね」

 揃ってお辞儀をする三姉妹。

「こ……こんばんわ“楽しそうですね”って……ロゼ達までそんなこと言うし」

 ため息をつくヨーコ。


「え……」訳が分からず顔を見合わせる三姉妹。

「な……何かお気にさわる事を言いましたか?」

 心配そうにマゼンダが聞いた。

「ううん、何も悪くないよ……ごめんね。

 リタがちょっとモテるからって僕をいじめるんだよ」


「別にいじめてへんけどなぁ、クリス?」

 リタがわざとらしく首をひねった。

「クスクス……さぁ、どうでしょう」

「あ、裏切り者や」

「ウフフフ……ねぇヨーコ」

 カサンドラがヨーコの肩に手を置いた。


「なんですか? 隊長」

「男性に好かれる女性はたくさんいるけれど、性別を問わず誰からも好かれる人というのは、案外少ないものよ。自信を持ちなさい」

 ヨーコの目を見つめて言った。

「隊長……」嬉しさと恥ずかしさで顔を赤くするヨーコ。


「う~ん、上手い事を言うなぁ。さすがうちらのビッグママやな」

 腕を組んでウンウンと頷くリタ。

「そうですわね」

「おだてたってダメよ、リタ。……三人とも、今夜はとても素敵よ」

「自慢の娘やろ?」「そうね」

 三姉妹もつられて、皆で笑いあう。



◆ヨコハマ地区 廃工場


 完全武装の警官隊。

 隊長らしき男性が一同を見回す。

「よぉし、全員配置についたな。いいか、本作戦は目標の逮捕が第一だ。

 しかし――――火器の使用はレベル3まで許可が出ている」

「レベル3までって……“殺してもかまわん”って事ですか?

 相手は一人、しかも女なんでしょう?」

 隊長の前の隊員が声をひそめるように言った。


「私語は慎め! 女と言っても凄腕の殺し屋だ、しかも重火器で武装している。油断するとやられるのはこちらかもしれないぞ」

「そんな……こちらはこの大人数で、しかも後方には2機のタンクが控えているんですよ。これを突破できるなんて、そんな化け物が――――」

 隊員の言葉を遮るように、隊長が顔を近づけて睨みつけた。


「私語は慎めと言っただろう。

 ――――作戦を開始する!」


◆クリスタルドーム パーティ会場


「ロゼ達も今夜はパーティに出席したんだね。

 その着物、よく似合ってるよ」

 ロゼに笑いかけるヨーコ。

「ありがとう……ございます」恥ずかしそうに微笑むロゼ。

「うんうん、めっちゃ可愛で」

「本当に可愛いですわ、お人形さんみたい」クリスも同意する。


「人形……」一瞬表情を曇らせるスカーレット。

 気遣うように、ロゼとマゼンダがスカーレットの手を握る。

「それにしても、お揃いの着物を着てたらますます三人そっくりやなぁ。

 髪の色が同じやったら、見分けがつかへんわ」

 三姉妹の様子に気づかないリタは、明るく笑う。


「三つ子だもん、当たり前だよ」

「ねぇ」と笑いかけるヨーコ。

「う~ん、それはそうなんやけどでな。……そう言えば、姉妹で考えている事が解るってほんまなんか?」

「本当です。私たちは体は別々でも、きっと魂は一つなんです」

 ロゼが姉妹で顔を見合わせて笑う。

「テレパシー?」ヨーコが首をひねる。

「そうですね。わたしくも実際に使える人を見るのは初めてですが。

 ロゼさん達が指揮車からわたくし達をサポートしてくれるおかげで、危険な任務をこなすことができるんですわ」


「え~~、それってうちらでは、役不足っちゅう事かいな?」

「フフフ、違いますわよ」笑うクリス。

「でも、こういうパーティにはあまり出ないのに、三人そろって出席だなんて珍しいですわね」

「そうやな…ハハ~ン。さてはお目当てのオトコでもいるんかにゃあ」

 リタがロゼの頬をつついた。


「そんな……違います!

 私たちはお父様に会いに来ただけですよ」

 真っ赤になって手を振るロゼ。


「お父様?」驚くヨーコ。

「そう言えば三人には、義理のお父様がいらっしゃるのでしたわね」

「義理のっちゅう事は、養女って事かいな。知らんかったわ」

 リタも初めて聞いた話に驚いた様子だ。


「いいなぁ……どんな人?」

「ヨーコさんも知っている人です。ゴードン・マクマソン・ミツルギ統括専務ですわ」クリスが言った。

「ゴードン! げげ――――あのおっさんかいな」

 リタが嫌そうに顔をしかめた。

「リタさん!」クリスが睨む。

「……あ、ごめんな、ロゼ」


 笑って首を振るロゼ。

「お父様はすこしきつい物言いをする事もありますが、優しい方ですよ」

 笑って頷く、三姉妹。

「娘の前では……優しいお父さんって事なのかな」

 ヨーコがリタを見る。


「人は見かけによらへんって事かいな。

 でも、それやったら、ロゼ達はお嬢様やないか!」

「そんな……お父様はたしかにおやさしい方ですけど、ほとんど家にはいませんし、私たちも家にいるよりトライ・アンジュの基地にいる時間の方が長いですから……あまり特別な感じはしません」

 ロゼはそう言って少し寂しそうに笑った。


「だから、今夜は“お父さんに会いに来た”って言ったんだね。

 ――――それで、会えたの?」

「ええ。……でも、お父様もお忙しそうでしたから、あまりお話する時間はとれませんでした」スカーレットが答える。

「寂しくはないですか?」クリスが労るように言った。

「慣れて……いますから」

 ヨーコには、三姉妹の微笑む姿がとても儚げに見えた。


 リタが話を変えようとわざと明るく言う。

「そ……そう言えば、いつの間にか隊長の姿が見えへんけど、どこ行ったんやろな」

「さっき挨拶したい人がいるから、と席をはずされましたわ」

「挨拶したい人ぉ? ……ウフフフフ、オトコか――――」

「またぁ、リタはそればっかり」笑うヨーコ。


 笑いあう三人に男性が声をかける。

 金髪碧眼。長身で胸板の厚い、逞しい男だ。

「お嬢さん方」

「え?」「はい?」「なんや?」驚く三人。

「……」三姉妹が真意をさぐるように男を見つめる。


「トライ・アンジュのお嬢さん方と、おみうけしましたが?」

 爽やかに微笑む男性。

「は……はい」気圧されたように後ずさるヨーコ。

「誰や? このキザオトコ」リタが小声で訪ねる。

「たしか……バトルボールのプロ選手ですわ」

 クリスも小声で答える。

 バトルボールは、アメフトから派生したスポーツで、ショー的な要素が強く、NEOトーキョーでも人気がある。


「いけすかんオトコやな」リタが男性を睨む。

「失礼、自己紹介がまだでしたね。僕はバトルボール、スコルピオンズのエドワード・ヒギンズというものです」

 芝居がかった仕草で頭を下げるエドワード。

「で、そのエドワードさんが何の用なんや?」


「NEOトーキョーのアイドル。鋼鉄の天使と近頃噂されるお嬢さん方に、是非お会いしたいと思いましてね。これでも僕はあなた方のファンなんですよ」辛辣なリタの物言いに動じる事なく笑うエドワード。


「それは光栄ですわ。でも、実際会ってみて、がっかりなさったんじゃありませんか?」クリスがにこやかに応じる。

「とんでもない、むしろその逆ですよ。皆さんとてもお美しい」

「ありがとうございます」

「しかも美しいだけでなく、とてもお強いらしいじゃないですか。

 ……まあ、あくまで噂では、ですが」

「ああ? それはどういう意味や!」リタがくってかかる。


「ちょっと、リタ。やめなよ」ヨーコが慌てて止めに入った。

「フ―――お気にさわったのなら謝ります。何、とかくマスコミと言うものは物事を大げさにかき立てるものですからね」

 髪をかきあげ、笑うエドワード。


「アンタのその態度がお気にさわるって言うんや――――モガモガ」

 途中でヨーコに口を押さえられて暴れるリタ。

「健康のために少しトレーニングをしただけで“カンフーの達人”と書いてみたり……まったく、マスコミというものは困ったものだ」

「……」ヨーコがエドワードを睨んだ。


「誤解しないで下さい。僕はあくまでファンの一人として心配しているのですよ」

「わたくし達はタレントではありませんから、BHとしてちゃんとトレーニングはつんでいますわ。ご安心なさって下さい」

 クリスがヨーコを庇うように間に入った。


「過剰な自信は怪我の元ですよ、お嬢さん」

「そうや……そんなに心配やったら、アンタ何かうちらに捕まるような悪い事をしたらどうや。うちらの実力やったら、その時にいやっちゅう程教えたるわ」

 クリスの後から、リタが挑発する。


「それはなかなかおもしろいアイデアですが、僕にはこれでもファンがいるのでね。彼女たちを裏切るわけにはいきません。

 ――そこで、提案なんですが、僕とゲームをしませんか?」

「ゲーム?」ヨーコが訝しげに訪ねた。


「簡単なゲームですよ。……あなた方の内、誰でも結構です。これから僕とあちらでダンスを踊って、曲が終わるまでに相手のバランスを崩し、転ばせた方が勝ちというのはどうですか? 相手が勝手にバランスを崩し、転んだように見せるのは少し難しいかもしれませんが、あなた達の実力が評判通りなら、造作もないことでしょう」

 エドワードが挑発するように、三人を見た。


「この人が所属するスコルピオンズのスポンサーは、ハイテックの系列企業です」

 ロゼがクリスに耳打した。

「なんやて―――」

「成る程、そう言う事でしたのね。この方が私たちと話し始めてから、どうもマスコミがこちらを注目しているようなので、気になっていたんですが」

 クリスが会場を見回して呟いた。招待されているメディア関係者の中には、カメラを取り出している者もいた。


「それって……僕たちに恥をかかせようとしてるって事?」

 ヨーコが驚いたように訪ねる。

「多分……ハイテックはソルヴァインと同型機を開発しているとの噂もあります。

 同じ三大星間企業として、あまりヨーコさんたちの評判が良すぎるのは、面白くないでしようから」ロゼが頷く。


「どうしましたか? 何ならやめておいても良いですよ。……僕としてもあなたたちのような素敵なお嬢さん方に恥をかかせるのは、いささか気がひけますからね」

 言葉とは裏腹に、エドワードは馬鹿にしたように鼻で笑った。

「もう勝った気になって――めっちゃ腹立つわ!

 よっしゃ! その勝負、このリタ様が―――」

「待って、リタ」

 我慢出来なくなって、飛び出して来たリタをヨーコが制した。


「え?」

「僕が相手をするよ」

「ヨーコ……で……でも」

「大丈夫。任せて」ヨーコが笑顔で振り向いた。


「リタさん、ここはヨーコさんに任せましょう」

 クリスがリタの肩に手を置いて言う。

「フ……噂のカンフーマスターのご登場ですか、これは楽しめそうですね」

 エドワードがニヤリと笑った。


「僕が相手で良いよね?」

「もちろんですとも。――さあ、さっそくあちらで踊りましょう。

 ギャラリーもお待ちかねでしょうからね」

「ヨーコ……」リタが心配そうにヨーコの名を呼んだ。

 それに答えるようにヨーコが親指を上げて、ウインクした。


「大丈夫ですわ。あの方も、すぐに後悔する事でしょう」

「ウン……せやな。うちらのヨーコが負けるわけあらへんわ」

 小さな後姿を見送りながら、二人は心の中でエールを送った。


“がんばれ、ヨーコ”


 会場の端、ヨーコたちとは反対側の窓際でレオが腕組みをしてその様子を見ていた。

「そろそろ……あっちは、始まった頃か」

 窓の外を見て呟く。


◆ヨコハマ地区 廃工場


 廃工場から、少し離れた場所に、二機のタンクが待機している。

「あっちは始まったみたいだな。

 まあ、すぐにカタがつくだろうが……なあ、本当に俺達みたいなタンク乗りが出張ってくる必要があるのかねぇ?」

「ぼやくなよ。ごついタンクが後方に控えている事で、敵さんに圧倒的戦力の差ってヤツを思い知らせ、戦闘意欲を喪失させる、と作戦上ではそうなっているんだからな」同僚の軽口をたしなめるようもう一機のパイロットが言った。


「作戦上はって――なんだぁ? 俺たちゃ張り子の虎かよぉ。

 ただでさえ、このところミツルギのお嬢ちゃん達においしいところを取られて、くさってるってのによぉ」

「トライ・アンジュ……鋼鉄の天使か?

 ハハハハ、若干18歳の天才パイロット、しかも美人揃いときてる。マスコミが騒ぐのも解るな」


「なに他人事みたいに言ってやがるんだ。

 ――まあ、確かにありゃイイオンナだよな。俺としちゃ赤毛の……リタって言ったっけ?あの娘なんか好みだな。どうせしけた任務なら、せめてあのお嬢ちゃん達とごいっしょしたいもんだねぇ」


「ぼやくなって……そうだな、俺なら金髪の方が良いな」

「金髪……クリスティーナか? やめとけって、ああいうすましたタイプは気むずかしいに決まって……ん? なんだ」

 軽口を叩いていたパイロットが上を見た。

 モニターが上空に切り替わる。


 上空を飛行する黒い影が映っていた。

 鏃型の機体を見たパイロットの顔色が変わった。


「なんだあれは――あれは、ミツルギのレイヴンじゃないか!」



◆◆◆


 アサルトライフルを構えた隊員が四人、暗い工場内を進んでいる。

 かなり大きな施設だ。錆びて動かなくなった作業機械、トラックなどが壁際に寄せられるように積まれている。

 窓からは、月明かりが差し込んでおり、意外と明るい。


「誰もいないな……」隊員の一人が呟く。

「しっ――――」先頭の隊員かたしなめようとした、その時だった。


「うちを探してるんか?」

 女の声がした。


「誰だ――――」

「あそこだ。あそこにいるぞ」

 隊員の一人が重機の上に腰掛けている影を見つけた。

 上からのぞき込むように、隊員たちを見ている。

 月が雲に隠れているため、顔は見えないがシルエットで女だとわかった。体にフィットした赤いボディスーツの上にジャケットを羽織っている。

「よっこらせっと……」

 女は呑気にかけ声をかけるとゆっくり立ち上がった。


「動くな!」隊員たちの銃口が一斉に女に向けられた。

「あわてなや。うちは見ての通り丸腰やで」

 女が両手を上げて笑う。

「……」隊員たちは戸惑ったように互いの顔を見た。


「残念や……あんたら、絶好の機会を逃したで。

 可愛そうに――――」

「何――――」隊員たちが疑問を口にしようとした時、月を覆った雲のヴェールが去り、工場内を月光が照らした。


「あれは――――トライ・アンジュの……」

 隊員が驚き、指をさした。

 重機の上から彼らを見下ろしている女は、髪を少年のように短くカットし、左目を黒い眼帯で覆っているが、トライ・アンジュのリタ・ルジェーロによく似ている。


「よく見ろ……そんな報告は聞いていないぞ。

 他人のそら似というヤツじゃないのか……」

「ほんま……残念なやつらやな」

 つぶやき、女が笑った。

 昏い――――昏い笑みだ。


「気をつけろ――工場の上空に――輸送機が……アレは……そんな……」

 通信機から、悲鳴に似た叫び声が聞こえた。


 隊員たちの間に緊張がはしった。

 皆、言いようのない恐怖を感じ、銃を構えた。

 しかし――――


「遅いわ……ソルヴァイン――Touch go!」

 女の言葉と共に、天井を突き破り、巨大な十字架が大地に突き刺さった。


◆◆◆



「こちらマクレーン、気をつけろ――工場の上空に輸送機が……アレはミツルギのレイヴンだ! そんな馬鹿な! 聞いてねぇぞ!」

 タンクのパイロット、マクレーンが通信機に向かって叫ぶ。

 だが、帰って来るのは何かが壊れる音と雑音だけだった。


「返事がねぇ! いったいどうしたんだ、あいつら」

「おい……今、あのレイヴンが何かを工場へ落としたぞ。

 まさかアレは――――」

 もう一人のパイロットがふるえる声で呟いた。


「無駄や。あんたらのお仲間は全滅したで」

 通信機から女の声が聞こえてきた。

「な……誰だおまえは。全滅しただと? そんな馬鹿な事があるか!」

「信じないのは勝手やけどな。……まあ、大した問題でもないわな」

「どういう意味だ」マクレーンが語気を荒げた。


「お決まりのセリフで悪いけど、あんたらもすぐに仲間の後を追う事になるからや――――」


ドゴォォォ――――ン

 工場で爆発。高々と炎と黒煙があがる。


「工場が崩れて、何か出てきたぞ。タンクか?

 ……いや、違う。……ありゃあソルヴァインじゃねぇか。何だってこんなとこにアレがいるんだよ!」

 パイロットが取り乱し、叫んだ。


「良くみろ! 機体のカラーもブラックだし、ソルヴァインとは微妙に形も違うぞ」

「フフフ、何をごちゃごちゃ言うとるんや……ふん、ミツルギ製CCP-021が2機か…この黒騎士の試運転の相手としちゃあ、ちょと物足りへんな」

「黒騎士だと? ……ふざけやがって」

「せや! これはうちの機体。ソルヴァイン・ブラックナイトや!」

 盾を構えて女が叫んだ。


「あ……当たらねぇ……なぜだぁ」

 機銃を乱射するマクレーン。


「アハハハハハハハ。鈍い! 鈍いなぁ――」

 盾で防ぐ事すらせず、凄まじいスピードで銃弾を躱す黒騎士。

「馬鹿! 撃ちまくるんじゃない。まだ生存者がいるかも知れないんだぞ」

「は……」仲間の声で我に返るマクレーン。


「ほんま、アホやね。他人の心配をしてる場合やないで。

 ――――オラァ!」

「何? ――――うぁっ」


ドガァン


 体当たりされ、吹き飛ぶタンク。

 慌てて起きあがろうとするが、突然に動きが止まる。

「動かねぇ! システムエラーだと? ……なんでこんな時に!」

 アラートが鳴り響くコクピット内にマクレーンの叫びが木霊する。

 だが、その声も凄まじい破壊音にかきけされた。

「ひとぉ――つ」楽しげに数える女の声。


「マクレーン!」パイロットが同僚の名を呼ぶが、もちろん返事は帰ってこない。

「さて、残るはあんただけや……こいつはずいぶんあっけなかったけど、アンタはどうや? もう少しは楽しませてくれるんか?」


 黒騎士がゆっくりと近づいて来る。

「く……来るな」

 恐怖に顔をひきつらせ、パイロットが狭いコクピット内で後ずさる。

「来るなぁぁぁぁ!」


「アハハハハハハハハハハハ――」



◆クリスタルドーム パーティ会場


 ダンスを踊っているヨーコとエドワード。

 互いに手をつなぎ、軽やかなステップを踏みながら、回っている。

「く……ハア……ハア」エドワードは端正な顔をひきつらせ、肩で息をしている。

「ほらほら、もうバテちゃったんですか? だらしないなぁ。ウフフフフフ」

 ヨーコが笑いながら、エドワードの手を引く。

 傍目には、男性の手を引いてダンスをせがんでいるように見える。

 微笑ましさにまわりから声援が飛ぶ。


「く……くそっ! こんな馬鹿な」

 厳しいトレーニングをこなし、武術の心得もある美丈夫も戸惑いを隠せないでいた。自分の体が自分の物でないような感覚。繋いだ手から力が抜けていくような不思議な感覚を味わっていた。


「なぁんやアイツ、口ほどにもないやん。5分程しか踊ってへんのに、もうバテバテやんか」

 リタが「いい気味や」と笑った。

聴功ちょうこうというのだそうですわ」

「え? 何が?」

「以前、ヨーコさんから聞いた事があるんです。相手の気配やわずかな筋肉の動きから次の行動を予測する武術の技術だそうですよ」


「チョウコウ……」

「ヨーコさんは添えた手からわずかな気配や筋肉の動きを読み、相手の次の行動を予測しているんですわ。

 ――――でも……今夜のヨーコさんは、それだけじゃない……更にもっと別の凄みのようなものを感じますわ」

 クリスは頼もしげにヨーコを見た。


「へぇ~、全然そういう風には見えへんなぁ。どう見てもアイツが勝手に動き回ってバテてるようにしか……」

「そこがヨーコさんのすごいところですわね。

 ……実際、あのエドワードさんという方はなかなかのものですよ。普通なら、もうとっくに動けなくなるか、転んでいるところです」


「ふぅ~ん、改めて言うのもなんやけど、ヨーコってほんま、すごいんやねぇ」

 リタが関心したように頷いた。

「そうですね。それに頼もしくもありますわ」

 二人が見守るその先で、ヨーコに手を引かれ、男性の体が大きく揺らいだ。


「ウフフフフ」

「く……もうダメだ、体が……ウ…ウワアアアア!」

 エドワードの足がもつれ、料理を盛ったテーブルに突っ込んだ。

 料理にまみれ、汚れたエドワードが顔を上げると、上気した顔で自分の手を見つめるヨーコの姿が目に入った。


「今の感覚は……あの時の……」

 ヨーコは自らの体に問うように、手を見つめていた。

 それは、先日ゴライアスを倒した時に掴んだ感覚。

 相手の力と自分の力が一体となった、あの時の感覚と同じものだ。


「これがもっと自由に使えれば――――そうすれば、あの人に……

 ――――あ!」

 我に返ったヨーコがエドワードの方を見た。

 慌てて手を差し伸べた。


「大丈夫ですか」

 テーブルの上のナプキンを取って、エドワードの顔についた汚れをふくヨーコ。

「ごめんなさい、僕……つい夢中になっちゃって」

「だ……大丈夫だ。ちょっと転んだだけだから……どこも怪我はないから」

 一生懸命なヨーコにエドワードが戸惑った。


 立ち上がったエドワードがヨーコをジッと見た。

「さっきは失礼な事を言ってしまって、本当にすまなかった」

 エドワードが頭を下げた。

「え――――そ……そんな」突然の謝罪にヨーコが慌てる。

「君は本当にすごいよ。私なんかがとてもかなう相手じゃなかった」

 エドワードの素直な言葉に顔を赤くしてワタワタとうろたえるヨーコ。


「ほんま、モテモテやな」「ですわね」

 その様子を見て笑うリタとクリス。


◆◆◆


 ヨーコたちの様子をを眺めているゴードンとカサンドラ。

「なかなかどうして、君の娘達はたいしたものじゃないか。

 “ビッグママ”カサンドラ・ザノッタ隊長?」

「あなたにそういう風に言われるのは妙な気分ですね」

 ゴードンの言葉にカサンドラが苦笑する。


「どうして?」

「どこまでが自分の意志で、どこまでがあなたの盤上での出来事なのか、解らなくなるからですわ。“ゲームマスター”ゴードン・マクマソン・ミツルギ統括専務」


 ゴードンは肩をすくめた。

「ゲームマスターか……たしかにそう呼ぶ人もいるがね。

 僕の腕はそれほど遠くまで届くわけではないよ。ちょっとだけ、先を見通す目と閃きに似た直感はあるつもりだけど」


「ひらめきですか?専務にしては……」

「変かね?」

 ゴードンはテーブルからグラスを二つ取ると、一つをカサンドラに渡した。

「ひらめき、虫の知らせ、結構じゃないか。そういったものにこそ可能性が秘められているんだよ。

 ……良い事を教えよう、カサンドラくん」

 秘密を打ち明けようとする子どものように、ゴードンは囁いた。


「なんでしょうか?」

「人は高みに至れば至るほど、目に見えない何かを信じるようになるんだ。目に見えるもので信じられるものなど一つもないと気づいてしまうからね」

 その物言いがあまりに彼らしくて、カサンドラは口もとをゆるめた。

「ハァ……納得がいきました、専務。それこそあなたらしい答えです」


「ヤレヤレ、ひどい言われようだ。しかし、そう言う君こそ同じなのではないかね?彼女達に母のように優しく接しながらその反面、ただ一人すべてを知り、彼女達を戦場へと送り出している」

 ゴードンの瞳に冷たい光が宿った。


「それは専務が……企業がそうさせているのです」

 カサンドラは目を伏せ、つぶやくように言った。

 そうする事で目の前の男に、その真意を悟られまいとするかのように。

「それはどうかな?僕には君が自らの意志でそうしているように見えるよ。

 君なら、彼女達に真実を話し、自由にしてやる事もできるはずだ。

 そう――――のようにね」


「それが出来ない事は良くご存知のはずです。……イヤな方ですね。

 それに彼もじきに捕まりますよ。今、実働部隊が捕獲作戦を実行中です」

「そうかな? ……上手く行けば良いのだがね」

 グラスの液体を見つめながら、ゴードンは言った。

「――――どういう意味です?」

「なに、というやつさ」

 一口飲んで、ゴードンは笑った。

 一瞬彼のまわりで闇が色を濃くしたような気がして、カサンドラは身震いした。


「イヤな言い方をなさいますね」

「こういう言い方が僕らしいと言ったのは君の方じゃないかな」

「本当に……イヤな方ですわ。……でも、そうですね、最近の専務はずいぶんと優しい顔をなさいますね。父親の顔、というのでしょうか」


「意趣返しというわけかい?以外と執念深いね、君も」

 驚いたように目を丸くしてゴードンは言った。

「でもどうかな。養父といってもほとんど家にいないからね。

 顔をあわす事も少ないし、彼女達も特に意識していないのじゃないかな」


「それは専務が男性だから気づかないだけですよ。あの娘達は、ロゼ達は、あなたを慕っていますわ。知らないとはいえ、本当の肉親でもあるのですし……」カサンドラはゴードンの目を見て言った。そこに何か、暖かい何かを探すように。


「君は僕を悪者にしたいのか、それとも善人にしたいのかどっちなんだい? ……実際、肉親というのも変だと思うがね」

 彼にしては珍しく、カサンドラの視線を避けるように窓の外を見た。


「でも、あの姉妹は専務のお母様の……」

「クローンというわけじゃないだろう。たまたまテレパシー能力の適性者として、企業が保管していた僕の母親のDNAを使用しているだけさ。それも、一部をね」

 振り向いた彼は、いつもの笑みを浮かべていた。彫像のような冷たい笑みを。

「僕があの姉妹を引き取ったのもいわば、社の秘密を手元で管理しているだけにすぎない」


「あの娘達の上司としては、専務がただ照れてそうおっしゃっているだけだと信じたいものです」

「事実さ。最初に言わなかったかね? 形あるもので信じるにたるものなど何もない、と」

「――――わかりました」答え、カサンドラは吐息を漏らした。


「結構。それより君は、私の本心など心配している暇はないと思うがね」

「ヨーコ達に残された時間の事ですか?それなら……」

「それもあるが……」

 ゴードンの言葉を遮るように、カサンドラのバディホンが着信を告げた。

「ん? ――――失礼」かすかな不安を感じながら、端末を耳に当てる。


「どうした、作戦は終了したのか?――――そんな馬鹿な……タンクが2機とも? 解った、残った者は監視を続けなさい。決して目をはなさないように」

「……フゥ」暗くなった端末を見つめ、カサンドラはため息を漏らした。

「どうしたんだね。まるで捕獲に向かった部隊が全滅したような顔をしているよ」楽しげにゴードンは言った。


「知っていたのですね」鋭い視線をゴードンに向ける。

「知っていたわけではないよ、もしかして、と思っただけさ。ハイテックが“彼”に接触したという噂を聞いたものだからね」

「ソルヴァインと同型の黒い機体が現れたそうです」


「2機目か……どちらかが“アサシン”だろうけど……

 ヤレヤレ、ハイテックもなかなかやるね。

 それにしても、短いパーティだったね。僕は彼女達を気にいっていたんだけどね」

 ゴードンはグラスの残りを干すとテーブルに置いた。

「もう……すべてが終わったような言い方をなさらないで下さい」

「そうだね。もうしばらくの間、幸せな夢を見ていられるかどうかは、彼女達次第なのだからね」


「――――クッ」反射的にわき起こる怒りを押さえ込むように、カサンドラは小さく呻いた。

「何をしているんだい?君のとるべき行動は、一つのはずだよ。

 ――――行きたまえ」

 気丈な部下の反応を楽しむように、ゴードンは言った。

「――――解りました」


◆◆◆


 リタとクリスがアリオンサテライトニュースの記者、シンディ・オコーナーと話している。シンディとは面識があるため、二人は幾分打ち解けた雰囲気だ。


「――では、クリスティーナさんには兄弟はいないんですね」

「ええ……一人っ子でしたから、兄弟には憧れていました。

 でも、今は手のかかる妹が二人もいる気分ですけど」

 笑いながら、クリスはリタを見た。


「ひっどいなぁ、クリス。ヨーコはともかく、うちは違うやろ~」

 文句を言うリタ。

「リタさんは、ご兄弟はいないんですか?」

「ん? うちは、兄貴がおったけど、一年前に死んでしもうたわ」

 あっけらかんと答えるリタに言葉に詰まるシンディ。


 戸惑ったシンディがクリスを見る。

 リタの兄の話は、クリスも聞いた事があった。

 一年前に兄が死に、天涯孤独の身になったリタは、NEOトーキョーにやって来たと――――

 だが、兄の事を話すリタを見る度に、クリスは身の内にわき起こる不安を感じずにはいられなかった。そこには、まったく感情の揺らぎがない。悲しさはもちろん、怒りも苦しみも。まるで、リタ自身でさえその意味を知らず、ただ誰かに兄の事を問われたらこう答えろと言われた事を口にしているかのようだった。


「――――そう言えばクリスティーナさんは、アニメがお好きなんですよね」息苦しさに耐えかねたのか、シンディがクリスに話かけた。

「え……ええ。そうですわ」

「しかも、旧時代のレトロアニメがお好きだとか」

「あちゃぁ~」リタが頭をかかえた。

「そうですわ。今のアニメは美しいですが、実写とかわりがなく味気ないのです。その点旧時代のアニメは味があって素晴らしい――――」


 堰を切ったように喋り出すクリスに、シンディはひきつった笑みを浮かべた。

 「ごっつい地雷を踏んでしもたな、シンディ」

 リタがお手上げと言わんばかりに両手を上げた。


「旧時代のアニメには、地球の懐かしい風景が出てきますわね。

 それを見る度にわたくしも、地球で過ごした子供の頃の事を思い出すんです」

 その一言で、シンディの表情が凍り付いた。

 ――――今、クリスティーナはなんと言った?

 たった今聞いた事が信じられなくて、シンディは自問した。


“地球で過ごした”と、確かに彼女は言ったのだ。

「……クリスティーナさんは、地球に住んでいた事があるんですか?」

 堅い声音でシンディは言った。


「え? ええ……これはオフレコでお願いしますね」

 クリスは片目をつむって、いたずらっぽく笑った。

“この娘は本当の事を話している”とシンディは確信した。

 少なくとも、彼女自身にとっては、それは本当の事に違いない。

 たが――――


 今、地球に住む事は出来ない。

 仮に住めたとしても、それは極々限られた者だけだ。

 それこそ、調べれば簡単に名前がわかる程の者たちだけなのだ。

 そして、そこにスターリングの名は無い。


 背中に冷たい汗が伝うのを、シンディは感じていた。

 何かがおかしい。

 兄の死を他人事のように語るリタ。

 地球に住んでいたと言うクリスティーナ。

 それが事実だとしたら――――それはどういう意味をなすのか。


「クリスティーナさん……地球には今は――――」

「悪いけど、インタビューはそこまでにしてもらえるかしら」

 震える声で疑問を口にしようとしていたシンディを冷たい声が遮った。

 驚き、はじかれたように振り返ったその先に、シンディを見つめる美貌の指揮官の姿があった。


 射すくめられるとは、まさにこの事だ。

 カサンドラの鋭い視線に、まるで金縛りにあったかのようにシンディは動けないでいた。

 今、ここでそれを口にしてはいけない。

 致命的な何かに触れてしまう――――そう直感した。


「リタ、クリス。パーティはここまでよ。ごめんなさいね」

「あ、隊長おかえり~」リタが呑気に挨拶する。

「仕事ですか?」クリスが訪ねた。

「ええ、さっき出動要請が出たわ。

 ――――ところで、ヨーコはどこかしら?」

 カサンドラが見回すが、会場内にヨーコの姿は無かった。


「さっき、頭を冷やしてくるって外へ出ていったで。

 うちがちょっと探してこようか?」

「いいえ。あなたたちは、先に現場へ行って頂戴。レイヴンを呼んだわ。

 ヨーコは私が探して来ます」

「そうか? ――――ほな、先に行ってるってヨーコに伝えといて」

「行きましょう!」クリスの言葉にリタが頷いた。


◆◆◆


「ええと……確かこの辺りに」

 ヨーコはキョロキョロと辺りを見渡した。

 エドワードと別れた後、会場を出て行く見知った後ろ姿を見つけ、後を追ったのだ。


「あ――――」

 野外席エリアの外れ、木々が立ち並ぶ境目に、スーツを着た白髪の青年の姿があった。あちらもヨーコを見つけたのか、こっちを向いている。


「レオさん!」ヨーコが手を振り駆け寄った。

 レオもそれに軽く手を上げて答える。

「今晩はヨーコくん。良い夜だね」

 微笑むレオ。

「今晩は。レオさんもこのパーティに来ていたんですね。

 お仕事ですか?」

「まあ、そんなところかな」

 

 ――――静かだった。

 街の喧騒も、会場のざわめきもここまでは届かない。

 虫の声と、木々が微かにそよぐ音が全てだった。

「あれ?」

 ヨーコは、その時初めてレオがサングラスをしている事に気がついた。

「レオさん、今は夜ですよ。サングラスをしていたら見えにくくないですか?」

 笑いながら、ヨーコは言った。


「ああ……そうだね。

 もうこんな物は必要ないかもしれないね」

 そう言ってレオはサングラスを外した。


 夜とは言え、今夜は満月だ。

 ヨーコには、はっきりとレオの顔が見えた。

 不思議と驚きは無かった。

 なんとなくそんな気はしていたのだ。

 だが、それはもう少し後の事だと、どこかで思ってもいた。


「やっぱり……あの黒いソルヴァインに乗っていたのは、レオさんだったんですね」

 静かにヨーコはその言葉を口にした。

 まるで、さよならを告げるように。


「そうだ――――ボクがクリシュナの装着者だ」

 ヨーコと同じ顔をした青年はそう言った。



◆エンディングテーマ “サクラ一夜のユメ”




◆次回予告

 光鱗のソルヴァイン 第四話 悪魔を哀れむ歌


ヨーコ「次回! 光鱗のソルヴァインは……」

リタ「なんちゅうこっちゃ――――」

ヨーコ「うわっ……て……前回もこのパターンだったよぉ。

 いい加減変えないと数字に影響するよ?」

リタ「ヨーコさん……しばらく見ない内にすれましたんやね。

 ……うち、悲しいわ」

ヨーコ「ナニ言ってんだよ、このオッパイは。

 で? 今回はなにがどうしたの? ん?」

リタ「ヨーコの様子が若干変やけど、まあええわ。

 今回はShall We Dance?とか言うタイトルやったよな」

ヨーコ「そうだな……いや、そうだね、ウン」

リタ「それがどうや。フタを開けてみたらドシリアスのハードボイルド回やんか!

 それに、なんか隊長の出番がめっちゃ多いし!」

ヨーコ「おっぱい枠が被るからね。うんうん」

リタ「さっきから変やで、ヨーコ。パーティで変なもんでも飲んだんか?」

ヨーコ「いや、そんな事はない。ダイジョブダイジョブ。

 ――――っ!」

クリス「欺されてはいけませんわ――――」

リタ「どわ――――クリス。今までどこに……ってアレ? なんでヨーコがそこにもおるんや」

ヨーコ「も――――ひどいよ、レオさん!」

レオ「はははははは。ばれてしまっては仕方が無いな」

リタ「うわっ! アンタ男やったんか!

 どおりで、スーツやし、髪の毛白いし、おかしいと思ったんや!」

ヨーコ・クリス「いや、それはすぐに気付けよ」ビシッ

レオ「ヨーコくんとボクは声優が同じだし、顔もいっしょだからこのまま行けるかと思ったが……そうは上手くいかないようだね」

クリス「――――こいつも変な事言ってますわよ」

ヨーコ「あ! 大変だよ、みんな。作者がこう腕をクルクル回してるよ」

リタ「あれは“巻いて巻いて”のサインや。チッ……しゃあないな。次回予告行くで」

クリス「そんな! わたくしまだ出てきたばかりなのに……」


リタ「そういうわけで、次回

  光鱗のソルヴァイン 第四話 悪魔を哀れむ歌」



三人+1「次回も――――Touch go ソルヴァイン!」




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