第52話 魅惑の御宿・竹ふえチェックイン編

 緩やかな坂を降りつつ竹林を抜けたところに『竹ふえ』のフロントはあった。そこで旦那が受付をしている間に周囲を見渡すと、そのフロントの横に変わったものを見つけた。それは何とウエルカム焼酎サーバーで、3種類の焼酎を好きなだけ飲んでも良いというものだった。

 更に外には水鉢に入ったソフトドリンクがあり、宿泊者は飲み放題という贅沢さである。というかこれらのソフトドリンクを冷やしている水そのものが『竹ふえ』の敷地内で湧き出している湧き水なのだ。むしろ冷やされているソフトドリンクよりも水のほうが美味なんじゃないかと思う。

 ウェルカムドリンクだけでテンションが上ってしまった私だったが、部屋に案内されるのはこれからである。一体どんな部屋に案内されるのか―――チェックインを終えた旦那と共に従業員さんの後について行く。が、下り坂を下っても下ってもなかなか部屋に行き着かない。


(やっぱり『竹ふえ店主のおまかせプラン』だったからなぁ。きっとフロントから近い部屋から順番に埋まっていくのかもね)


 一通りのものは部屋に備え付けられているとは言え、やはりフロント近くの部屋が便利なのは言うまでもない。きっとそっちから予約が入っていくのだろう。

 そうこうしている内に敷地内を下りきり、私達が本日宿泊する部屋に到着した。『美丈庵』と名付けられたその部屋は、案の定フロントから一番離れた部屋だった。しかしその欠点を補うかのようにかなり豪勢な部屋でもあった。その第一が部屋の中に設えられた囲炉裏である。


「大きい囲炉裏ですね。何か料理とかで使ったりするんですか?」


「はい。今の時期は暑いので使わないんですが、冬場は鍋をかけたりするんですよ」


 従業員さんの説明に『今度来る時は冬場だな』と、私が心の中で決意したのは言うまでもない。


 だが部屋の中央に囲炉裏があるということはどこで眠れば良いのだろうか?一瞬疑問に思ったが、その答えは部屋の反対側にある扉―――すなわち隣の部屋に続く扉の向こう側にあった。従業員さんの案内のままその扉を開けると、そこには更に驚きの光景が広がっていたのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る