第21話 猫耳メイドハンター誕生だにゃん
猫耳メイドのミーコが、白銀プルプル狩りを機に前世ネコ時代の野性の本能に目覚めた。
気がつくと『職業ハンター』になっていたミーコ。そんなミーコのもとに新人ハンター宛のクエスト案内メールが届く。でも、このゲームにハンターなんて職業あったっけ……?
「ハンティングしようぜ!」
オレはノリで狩りっぽいセリフを言ってみたが、ミーコは大喜びだ。
さっそく、ハロー神殿地下にあるギルド会に行ってみることに……そこには、オレの知らない秘密が隠されているのだった。
* * *
ギルド会が設置されているという、ハロー神殿の地下へと向かうオレ達。 地下に行く人は滅多にいないらしく、通りすがりの白髪混じりの学者さんに話しかけられる。
「地下に行くのかい? いろいろ大変だろうけど頑張ってね。そうだ。この猫が喜びそうなニボシを分けてあげよう」
「えっいいんですか? ありがとうございます」
「にゃあ! おやつのにぼしなのにゃ、学者さんありがとなのにゃ!」
学者さんは猫好きらしく、オレも猫好き仲間と認定されたのかポンと肩を叩かれ、猫用のにぼしのプレゼントまでもらってしまった。
そんなこともありながら、コツコツと階段を降りると人の気配の無い扉の前に辿り着く。
セキュリティシステム搭載の地下通路への扉が、ミーコの冒険者スマホに反応して自動的に開いた。まるで、ミーコを歓迎しているかのようだ。
「にゃあ、楽しそうな宣伝がいっぱいなのにゃ。この猫じゃらしの飾り、可愛いにゃ」
「ははっ、思ってたより可愛い通路だよな。さっきの学者さんみたいに猫愛好家が集う場所だったりして」
地下というと少し怖い雰囲気があったが、どちらかというと明るい雰囲気である。
コケティッシュな魚モチーフの飾りが通路にかけられていたり、『ネコの会』という謎の宣伝ポスターが貼ってあったり、猫じゃらしが飾られていたり……よっぽど猫好きが管理しているんだな、としかこの時は思わなかった。
階段を降りて、ギルド会の看板が掲げられた木製の扉の前まで来ると、違和感に気づく。
『ニャー、にゃにゃんにゃー』
『にゃにゃにゃ? にゃにゃんニャー』
何故か猫の鳴き声がする……しかも猫同士で会話をしているような雰囲気でさえある。この扉の先には、一体どれくらいの猫がいるのだろう?
「にゃっ何か重要な話し合いが行われているような気がするにゃん。でも、食べ物の匂いもするし……」
「ミーコ、さっき聞こえてきた猫の会話が理解できるのか? さすが元オレの飼っていた猫だな」
まだ入り口にすら付いていないのに周囲から漂う猫オーラ半端ない空間、本当にハンター達が集う場所なのだろうか? 思い切って扉を開けると……。
「にゃー、猫耳族ギルド会へようこそにゃ! おや、新人さんですかにゃ? いつでも歓迎にゃん」
「新人のハンターさんの登録を受け付けますにゃ! 受付はこちらですにゃ」
「にゃー! メイド服の新人さんが人間を連れてきたにゃ」
右も左も猫耳だらけ……不思議な空間だ。
カフェルームが併設されており、焼き魚やチーズを片手に休憩する事が出来るようだ。何だか楽しそうではある。しかし注目ポイントは、その人々の頭につけられた猫耳だ。
驚いたことに、ギルド会の従業員をはじめ集まっている人々は、ほぼ全員ミーコと同じ猫耳だった。
猫耳を付けていない、オレの方がもはや浮いているが、ミーコの猫耳はつけ耳ではなく天然の猫耳なんだそうだ……という事はこのギルド会の人達も?
「はじめまして! よく来てくれたにゃ、新人ハンター! 私はこのギルド会のマスターだにゃ。頑張って狩りに励んでくれたまえ!」
ナイスミドルな風貌のギルドマスターが、オレ達に挨拶してくれたが、マスターも猫耳なせいかあまり迫力がなかった……おそらくロシアンブルーだと思われる猫耳と尻尾で毛ヅヤは良い。
ミーコはスカートの裾を少しつまんで、挨拶をした。
「はじめましてにゃ! よろしくですにゃー!」
オレもマスターに挨拶する。
「はじめましてマスター……あの……ここの人たち、みんな猫耳なんですけど……どうしてですか?」
俺の素朴な疑問に、マスターはニャニャニャと笑って、
「何故って……
と当然のように答えるのであった。
猫耳族⁈
ミーコは《猫耳族》という種族だったのか。
「初心者用のクエストは、隣の部屋にあるから挑戦してみてくれたまえにゃ」
* * *
ギルドマスターの勧めで、初心者用の部屋に入ると、中には猫耳ハンター達が大勢いた……が、何故か空気が殺伐としている。
バリバリと無言で爪を研ぐ者や、緊張のためかフーフー声を出して鳴いている者、無言でニボシを食べ続ける者など、猫耳族特有の猫っぽい緊張感に満ち溢れていて雰囲気に飲まれそうだ。
オレとミーコが、どうしていいのか分からずにフラフラしていると、猫耳ハンターの若者がオレにいきなり話しかけてきた。
「マタタビ欲しいにゃ」
唐突に始まるマタタビの要求……。
?
いきなり何言い始めるんだ? この猫耳ハンターは?
すると他の猫耳族ハンターも、
「マタタビ欲しいにゃー」
⁉︎
可愛らしいミーコと同い年くらいの女猫耳族ハンターまでも、
「マタタビく欲しいにゃん!」
これは一体?
「にゃー、なんかビックリにゃん……みんなマタタビ欲しいしか言わないのにゃ」
「どうする? マタタビなんて持ってきてないぞ……」
困っているオレ達に見かねたのか、
「ははは……マタタビ欲しいにゃんは、このギルドの合言葉みたいなものだよ。気にするにゃ」
と、人(猫)の良さそうな老猫耳ハンターが教えてくれた。
気を取り直して、クエストコーナに向かうオレ達。
ピンク色のメイド服を着た猫耳受付嬢が、カウンターで手続きを済ませてくれるそうだ。
「初心者向けクエストはこちらですにゃ! オススメは魚釣りに挑戦クエストですにゃ! テントで魚焼きグリルを使って、お食事ができますにゃ!」
受付嬢のオススメクエストは魚釣りのようだが……。
「にゃー、アタシは魚釣りよりもバリバリ狩りできるクエストに行きたいのにゃー!」
ミーコはいきなりバトル系のクエストに行きたいようだ……初心者なんだし、本当はノンビリ魚釣りの方がいいんだろうけど。
「……バリバリですか……こちらなんかどうでしょう? “火山で炸裂! スラッシュモンスター《カザンデウス》を討伐せよ!”」
ミーコの要望により、バリバリ系のクエストが紹介される……が。
「ジャンピングモンスター……⁉︎ そんな強そうなモンスター……しかも火山って……まだオレ達には早……」
「楽しそうだにゃー! ひんやりサイダーを買って、バリバリ狩りだにゃー!」
強そうなモンスターの討伐に興奮気味のミーコ。
嫌な予感しかしないものの、ミーコの気迫に押されて、結局火山クエストに向かう羽目になってしまった。
* * *
不思議なワープゾーンを、猫耳船頭さんが操る渡り船で移動し、あっという間に火山に到着。
拠点となるコテージエリアで火山マップと傷薬を受け取り、持参した『ひんやりサイダー』をグイッと飲み干し、意気揚々とハンティングへの第1歩を踏み出すオレ達。
「ハンティングだにゃん!」
5分後……《カザンデウス》のスラッシュ爆裂拳に打ちのめされオレ達は、コテージエリアにタンカーで運ばれていた。
「にゃー、やられちゃったのにゃー、あのモンスター強いのにゃ!」
あっという間に倒されてしまったにも関わらず、ミーコはまだクエストに挑戦したいらしい。
仕方ないので諦めるように説得を試みるが……。
「……ミーコ、このクエストは今のオレ達には早いんだよ。諦めてリタイアしよう」
諦めるという言葉がよっぽど嫌なのか、ミーコはふるふると首を振って拒否し始めた。
「ヤダにゃー! 最後まで狩りするにゃー!」
やれやれ、妥協案を考えるか……。
「じゃあ、せめて宝石の納品クエストに切り替えよう。ピッケルで洞窟に潜って、武器防具を発掘するヤツにしよう。うん、それがいい」
オレは、モンスターのあまりの破壊力にレベルの違いを感じ、ミーコを再度説得し、洞窟内のお宝発掘クエストに切り替えた。
猫耳族は、ネコの本能で宝石の類は好きらしく、ミーコも楽しそうにお宝探しに専念し始めた。
『ニャー! このアクセサリーまんまるで可愛いのにゃ!』
そんなこんなで、地味に火山にある小さな洞窟でピッケルを振ってると、冒険者スマホからファンファーレが鳴り始めた。
『伝説の剣を発掘をしました!』
『伝説の鎧を発掘しました!』
『伝説の杖を発掘しました!』
『天空の宝石を発掘しました!』
『天使のラブペンダントを発掘しました!』
『光のキラキラ玉を発掘しました!』
やたら伝説の装備が発掘できるな……この火山は……。
オレはこの時、火山の発掘武器を【宝探しゲームの景品】程度にしか考えておらず、とてつもないものを掘り起こしてしまったことに、気づいていなかったのである。
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