7コール・・・仕事

 時は少し遡り、僕が社会に出て働きはじめ、もう少しで二年が経とうとしていた時の母との会話である。

その日はいつもと変わらない、土曜日の午前十時頃。

この時期は毎日のように残業があって、部屋に帰宅するのが深夜一時を過ぎるのが当たり前だった頃・・。残業代は出るので、何とか気力と体力を絞り出して踏ん張っていた頃だ。土日は休みだったが、月に5回くらいは休日出勤もあったりしていて、この日の土曜日はたまたま休みだった。

 朝起きて、朝の支度をして、会社に徒歩で向かう。そこから、夜中の十二時過ぎまで仕事をして、帰宅したら、シャワーを浴びて、すぐに寝る。そしてまた朝を迎え、朝の支度をし、会社に向かう・・・これのずっと繰り返しであった。いくら若いからと言って、流石に一か月も続くと気が滅入ってしまい、体調が崩れてもいいのだが、生憎と僕は体力には自信があったので、中々、体調は崩れなった。精神も気力も、まだまだこれからだ!というやる気があったので、プラモデルなどを製作していれば、なんとか、紛らわせることが出来ていた・・。

                  ※

僕の就職した会社は別の会社に、アウトソーシングとして、技術者としてその会社で働くという、簡単に言えば派遣会社なのである。言い訳のようになってしまうかもしれないが、僕が就活していた年は丁度、就職氷河期と呼ばれていて、おまけにあの東日本大震災も重なった年だったのである。僕は懸命に就職活動をしたのだけれど、偶然だったのかもしれないが、エントリーシートを出したいくつかの会社は

「積極的に、東北地方の方を採用します。ご理解とご協力をお願い致します。」という方針の会社が多かった。僕の一番採用して欲しかった会社も、そういう方針の会社だったので、書類審査すらも通らなかったのである。理由はそれだけでは無いと思うけれど・・。ちなみに、その会社は、エントリーシートが一日に二万通届くらしい・・。初めから、かなり狭き門だったのだけれど、面接まで行くことが出来れば、どうにかなるという、根拠の無い謎の自信があったのである。

 どうしてもやりたことがあって、そのために大学ではなく専門学校に行きそのスキルを学んで、僕のすべてを懸けて取り組んだ就活だったのだが、結果は不採用だった。その会社以外僕は全く受ける気がなかったので、燃え尽きてしまい、一か月くらい、意気消沈し、ずっと休みの日などは、部屋に閉じこもっていたのである。考えが甘かったのだ。まぁ、探せばいくらでもそういう会社はあったのかもしれないが、僕が携わりたい商品は、その会社でしか作っていなかった。そのくらい、不採用だった事にショックを受け、学校の授業も身に入らなかったのである。そんな中、クラスのみんなは、また一人、また一人と内定が決まっていった。

                  ※

 しばらくして、(一か月くらい・・)やっと、このままでは、リアルニートになってしまうと気が付き、重い腰を上げたのである。クラスのみんなはいつの間にか、どんどん内定を貰っていたし、早く内定を貰って、家族を安心させたいという気持ちもあった。(その落ち込んでる一か月の間に就活しろよと、当時の自分に言いたい)ただし、就活に対するやる気は、今までの半分以下(笑)だったので、運よく最終選考に残って、役員の人たちと面接をしても、いくら完璧に、はきはきと質問に答えてこれは内定したかな?と思いきや、不採用の書類やら、電話を貰っていた。恐らくは、面接官の人に、やる気あるのか?と、心の奥底を見透かされていたのかもしれない・・。

 ずっとそれから、今の自分のスキルが生かせる仕事を探し、何十社と受けた・・面接を繰り返す度に、これって本当に自分自身なのだろうか?とか、どうせまた、落ちてしまうのだろうとか、マイナスの事しか考える事が出来なかった。いわゆる、落ち癖というやつ。よく、セミナーの講師の人がいかに、自分という商品を会社に短い時間でアピールすることが出来るかが大事か、と言っていた。初めてその話を聞いた時、とまぁ、僕は性格が捻くれていたので・・何だよ商品って、人はモノじゃぁないぞ、というか、だいたい人が人を選ぶなんて何様のつもりだよ、元々人は生まれながらに平等なんだぞ?そこまでしないと、会社って採用してくれないの?・・というか、その短い時間で、その人の何を見てるんだ?やっぱり学歴?コミュニケーション能力か?後は・・上司に対して従順なのかとかかな?

とまぁ、こんな具合に・・。そこはもうそうするしか、採用されないと言うのならそうするしかない、と割り切ってやっていたと思うのだけれど・・・。

 何にせよ、これだけ御社で働きたいのです!と言っても、その熱意?やる気?がその面接官の人に伝わらなければ、採用してもらえない。会社にとっても、判断材料が履歴書とその人の雰囲気くらいしか、ないので、(他にもあるかもしれないが・・。)しかも採用担当の人事の人は、毎日のように色んな学生を相手にしていると思うので、やはり、何かしらの基準がなければ、時間もコストも人も無駄にしてしまうという訳だ。一番困るのが、採用されたのか、不採用だったのかを連絡してくれない会社だ。就活生はその結果を待っている間、身動きが取れない。内定したのか、もし、していないのなら、早く次の会社を探さなければどんどん、取り残されてしまうのである。僕の場合は、連絡が中々来ないときは直接、会社に連絡をとって、合否の確認をしていた。すべて、不採用だったけれど(笑)。

(途中で心が折れかけたが・・)

 聞いた話によると、何故会社が合否の通知を遅らせているのかというと、せっかく、内定を出してこの学生に来てもらう!と思っていた矢先に、その学生が内定を辞退することがあるようで、会社側からすると、確実来てくれると分かるまで、合格者の予備の予備まで時間ギリギリまで、不合格ギリギリのラインの学生に不合格という通知を早く出せずにいるようなのである・・。まぁ、いわゆる繰り上げ内定だ。やはり、何事にも予備は大事なのだそうだ・・。学生からしてみれば、予備かよ!ってなると思うのだけれど・・。色々と大人の事情があるのである。

                   ※

そんなこんなで月日が経ち、気が付けば内定を貰っていないのが残り5人という状況で僕もその中に含まれていた。

・・あぁ、何社受けても駄目だなぁ・・一体僕の何が駄目なんだろうか・・このままだと、卒業しちゃうし・・新卒の枠が無くなってますます就活が不利になってしまうなぁ・・・まぁ、・・死ぬわけじゃぁないし、どうでもいいっかな、あははははは・・という心理状態になっていた。ほぼ、自暴自棄である。

そして、卒業のタイムリミットが差し迫った十一月の終わりのころ、(この頃は本気でバイトでもいいかなと思っていた・・)たまたま、学校で会社説明をするという会社があり、まぁ取りあえず、説明だけでも聞いてみようかと、軽い気持ちで説明会に参加してみた。なんでも、説明の後、希望者が居れば、そのまま一次選考もするという、就活に疲れていた僕にとっては、願ったり叶ったりの説明会だった。就活といっても、タダではない。遠い所に面接などに行くとき、交通費が馬鹿にならない。面接の時間が早いとき、前日からその会社の近くのホテルに泊まらないと無理な場合も何回かあった。学生で、勉学に力を注いでいた僕は、バイトをしている時間など無かったので、交通費は親に頭を下げ、貸してもらっていたのである。

説明会には、他の学科の生徒もいて、全員で十数人くらい。説明会が終わり、一次選考を受けるという人は、挙手して下さいと、その会社の人が言った時、僕以外の全員が手を挙げていた。僕は迷っていたのだけれど、空気を読んで、「あ・・じゃぁ、自分も・・」と、一次選考を受けたのである・・。何故迷ったのかというと、あまり僕のやりたくない仕事だったのかなぁと。・・この時のこの状況で仕事の内容で悩むなど、贅沢な悩みだと、後から思った・・。

 一次選考の内容は筆記テストだった。やった感じは良くもなく、悪くもなくただ、今の自分の力を出し切ったという感じだった。というか、受かってやる!とか、落ちたらどうしようとか、そんな気持ちは一切無く、無心だった。

 数日後、結果は何故か僕だけが、一次選考を通過していた・・何でだ?・・その時は全く理解出来なかった。どうせ今回もまた、落ちるのだろうと思って、次の会社を探している最中だったのである。・・もう就活するのも疲れていたし、これ以上、長引かせても次の会社で内定を貰える保証はどこにも無いし・・というか、始めて内定をもらったなぁ・・。どうして僕だけだったのだろう・・・・。せっかく自分を拾ってくれたのだから、まぁ、少しは頑張ってみるかなぁ・・。

 父親にそのことを電話で話したら・・(無欲やったからかな?)・・と言われたのである。まぁ、確かに何も思っていないかったのは確かだけれど・・。

 心身共に疲弊しきった僕は、取りあえず社会という荒波に旅立って行ったのだ。きっとまたどこかで、チャンスが巡ってくる!こんな所で立ち止まっている訳にはいかない!行ける所まで、しっかり進んで行くぞ!と・・熱い野望?を胸に。

                  ※

それから二年の月日が経過していた頃の話。仕事にも慣れ、てきぱきと仕事をこなせる様になってきていた。体は元気そのものなのだけれど、日々の遅くまでの残業と、人間関係などのストレスにさらされ、精神状態は、あまり良くなかったと思われる。休みの日は仕事で疲れ果ててほとんど一日寝ているだけという事も、よくあった・・。はじめの頃は近くを散歩したり、買い物に出かけていたりしたが、この頃は、ほとんど部屋に引き籠っている方が多かった。外に出るのも嫌だし、布団から起きるもの嫌だったのである。そんな状態で、ベットに寝ていて僕の意識が少しづつ覚醒しようとしていた時にスマホの着信音が鳴った。

「びくっ」と体を震わせ、僕は意識を目覚めさせていった・・あぁ・・眠い・・だるい・・んん?・・あれ?なんか鳴ってる?・・というか今何時だっけ・・・スマホが鳴ってるのか・・誰だろ・・弟かな?・・。

僕はスマホが置いてある机に手を伸ばし、スマホの画面を眠気まなこで見る、[母]と表示が出ていた・・・・あれ?・・どうしたんだろう・・。

「・・もしもし・・どしたん?」

いつもの明るい母の声が返ってきた。

(あれ?あんた、今まだ寝ちょったやろ?声がまだ半分起きちょらんで?)

「え・・まぁ、うん・・今起きた」

(まぁ、今日は休みやし、たまにはいいんやないの?)

「ああ、今日はたまたまね・・先週は休日出勤やったな・・」

(ふ~ん、仕事忙しいんやなぁ・・仕事の方はどうなん?順調?)

・・う~ん、ここは順調と言っておくべきなんだろうか・・仕事は特に問題ないけれど・・精神的にちょっときつい・・ストレスとか。体は平気だけれど・・。

「そうやなぁ~、まぁ、仕事は順調と言えば順調かなぁ~・・ただ・・」

(え?ただ何?)

「最近、残業が多くて、あんまり寝れてないんよなぁ~・・」

(ふ~ん、そうなんや・・まぁ、体調には気をつけてな?)

「そうなんやけどぉ・・・」

今まで、働いていて胸にずっとつっかえていた事が、ポロリとこぼれ出た。

「なんかさぁ・・同じ作業をやってるのに、正社員の人と自分の給料を比べると全然違うんよなぁ・・そりゃぁ会社が違うからと言われると、まったくもって、その通りなんやけど・・」

(う~ん、それは仕方ない事やなぁ、やっぱり、学歴社会やけんなぁ・・どんなに実力があっても、大学と専門学校やと、四年制大学の方が給料上やしな)

「いや、別にそこはいいんよ、だって自分の選んだ道やし、そこじゃなくて正社員と派遣社員の区別がなぁ・・こう・・何と言うか・・何だキミ、派遣なの?と見下されているというか、ひとくくりに派遣社員はダメだ、使えないという、色眼鏡で見られているというか・・。実際に見られてたんやけど・・」

(でも、あんたは仕事がちゃんと出来るんやろ?ちゃんと見てくれている人がおるっちゃ。上司の人とか?)

「いや、正社員の人達はみんないい人ばかりやな、上司も。凄い人ばかりやし」

(なら、いいやん?)

「・・まぁ、なんと言うか・・別の会社の派遣で来ている人・・三十代くらいの調子に乗った大人が一番ウザイ・・なんかしょっちゅう僕の仕事の邪魔してくるんよ・・その人、他人のアラを探して、注意するのが趣味みたいで、他の同僚とかよくいちゃもんを付けられているんだけど、僕はそういうミスなんかしないから、いつ僕がミスってもいいように、小学生の悪戯的なことを仕掛けてくるんよな・・例えば僕が作業中の机の上に空のペットボトルとか置いて、正社員の人になんか、あいつ、ここ飲み物持って来ちゃダメなのに、飲んでましたよ?とか難癖付けてくるんよ・・流石に僕は滅多に怒らないけど、その時はキレる寸前までいって、ギリギリ耐えて、僕のじゃありません、って反論したんだけれど」

(ええ?ほんとなぁ・・変な人がるんやなぁ・・きっとあんたがミスせんけん妬んじょんのやねん?)

「知らんよ、ほんと迷惑なんよ・・一番いいのは関わらないのがいいんやけど

向こうから絡んでくるけん、今度何かしたら許さん!」

(・・警察にお世話になるのはいかんよ?)

「いや、僕どんだけ凶悪犯なの!」

(あははは)

いや、これ、笑いごとじゃないんだけれど、結構この人のせいで、色々ストレスとかヤバいんだけれど・・。

「あ、でもこれ続きがあって、似たような事が実は、三日前にあって、またペットボトルが置いてあったんよ」

(ええ?嘘ぉ・・もうぶっ飛ばせばいいんじゃない?)

「いや、それ、ほんとに警察のお世話になっちゃうからね?やっていいなら、やっちゃうからね?」

(許す。・・・・なんちゃって・・あはは)

・・・焦ったぁ・・これ、ほんとにやっちゃうパティーンだったよ・・さっきからずっと翻弄されてる気がするんだけれど・・。

「・・それで・・引っ張り圧縮試験機って言うのがあるんやけど、それ、作業中の人しかその試験機の近くに行けんのよ・・もし近づく場合、正社員の人の依頼書がいるんやけど、床に僕のじゃない依頼書が落ちてて、その作業者のところにその邪魔してくる人の名前が書いてあったんよ・・まぁ、決定的証拠やな・・僕以外に試験機に近づいたという・・その依頼書は厳重に管理されてて、本人以外持ち出せんのよ・・つまり犯人は私です、と言っているようなものなんよな・・なんで、ここに落ちてんの?みたいな?・・多分誰にもバレずに焦ってペットボトルを置こうとしたんやろうな・・わざわざ、依頼書を持ってまで・・何かの拍子に落としてしまって、焦ってたから、依頼書を回収し忘れたんやろうな・・」

(ん?それって、つまり現行犯逮捕って事なん?)

・・えっと・・そうなのか?・・というか、警察から離れて・・。警察ネタはもういいからね・・。

「・・そ、そうやな・・そうなの?・・そうかなぁ・・取りあえず、また同じ手口でまたペットボトル持ち込んでましたよ的な事を別の社員の人に言ってたから、流石にキレはしないけれど、その人の近くに行って・・すみません。これ、僕が作業中のはずの場所に落ちてましたよ?散々他人には、自分のモノはしっかり管理しろとか言っているくせに、依頼書はなくしちゃぁ駄目ですよね・・?って言ってやったのだ・・あと、ペットボトルは僕のじゃないけれど、捨てときます。って」

(おお、なんかスッキリしたわ・・でも、あんまりなぁ・・人を煽るような事は言っちゃぁいかんよ?・・今回は仕方ないけどなぁ)

「・・まぁ、そうなんやけど・・そしたらその人、三秒間くらい固まって、小声で・・あれ?なんで落ちてたんだろ・・とかって言って足早にその場を去っていったんよな・・みたか!このボケがぁ!・・って思ったね・・」

(ふーん、まぁ、あんたに前科が付かんで良かったわ・・大人の対応やな・・うんうん・・いい事や、まぁ、反面教師やったんやろうな・・)

「いやぁ、流石に反面教師かなぁ・・ちょと手口が調子に乗り過ぎているというか単純というか、幼稚というかなんというか・・・というか、警察ネタはもういいからね?」

(・・ほんと世の中、色んな人がるよなぁ。あぁ、そうそう、私があんたぐらいの時なぁ、ほら、新人研修かなぁ・・ほら私も短大やったんやけど、私の方がバリバリ仕事が出来たんやけど、もう一人、四年制大学卒業した人がったんやけどな?その人、全然仕事が出来て無くてな、私の三分の一くらいしか働いて無かったんやけど・・いざ、蓋を開けてみると、給料がその人の方が多かったんよなぁ・・あの時は悔しくて、よう、泣きよったわぁ・・)

・・うわぁ、似たような状況だ・・。僕はその先を促した。

「え?そういう時ってどうしよったん?」

(んんん?・・あぁ・・えっと・・ほら実家に昔、犬を飼っちょったんやけどな、私が家に帰って玄関に近づくと、いつも尻尾振って、走って寄ってきてな、ようし、よしよしってムツゴロウさんみたいに撫でよったわ・・それで癒されよったんかなぁ・・こう・・夜、縁側でこっそり泣きよった時も傍に来てくれてなぁ・・本当に可愛かったわぁ・・死んだ時は滅茶苦茶泣いて、泣いて泣いて、泣き過ぎて吐きよったもんな・・いやぁ・・きつかったわぁ・・)

「いや、泣き過ぎ!泣き過ぎだって、それ。吐くまでって・・気持ちはわかるけど・・うん、まぁ僕も多分そのくらい泣いたかもしれんなぁ・・・」

・・ん?あれ?・・結局ペットが慰めてくれていたという事・・・なのか?

(・・まぁ、自分の力ではどうしようも無い事が社会に出るとあるもんなんよ。しいて言うなら・・そうやなぁ・・社会が悪い!・・あはは)

「そうや、そうや!社会が悪いんや!アメリカみたいに実力社会だったら良かったのに・・日本は年功序列だからなぁ・・。こんな世界、俺が破壊してやる!」

(・・なんか、今あんた・・中二病みたいなこと言っちょったけど・・)

「・・まぁ、今週は僕が反撃したおかげで、その邪魔してくる人は、何も言ってこなかったんやけどな・・」

(・・う~ん・・なんて言えばいいんやろうなぁ・・・ちょっと待って・・なぁ、父ちゃん!父ちゃん・・ちょっと・・そう・・え?・・あぁ・・うん・・ふむふむ・・なるほどな・・あ、お待たせ。あんな、父ちゃんがな・・きっとこれからも色ん困難が待ち構えているけど、そこで腐らずに、自分の信念を持って、乗り越えていけば必ず、やりたい事が見つかるし・・えっとなんやったっけ?・・ああ、そうそう、それや!・・ごほん!・・どこまで言ったっけ?)

「おぃいいいいい!せっかくいい事言ってるのに、ちょっと台無しになっちゃってるんだけど!!母ちゃん、頑張ってぇ!!」

(あはははははは!・・ゴメン、ゴメン・・なんか難しい事はよう、分からんわぁ・・えっとな・・その時なんでこんな目に遭っているのか分からないけど、後で必ず全部繋がるから、無駄な事なんて無いって・・そうよな?・・え?ちゃんと覚えてって?・・あははは、無理無理・・私を誰だと、思ってるんよ!まぁ、父ちゃんにしては、いい事言ったんじゃぁないの?・・・・え?・・・あはは、冗談っちゃ、冗談・・・はい・・どう?そういう事よ?・・うんうん・・あはは)

「・・・え?何?途中で父ちゃんと会話してて良く分からんのやけど・・・」

(・・まぁ、辛くなったら、いつでも帰ってくればいいわぁ・・まぁ、ほんとはもっと頑張って欲しいけどな?・・三年は頑張らんとな、とりあえず・・あんたなんか、まだまだ、ひよっこよ!ひよっこ、まだまだ甘い!砂糖菓子のように甘い!ついでに、最後のツメも甘い!)

「・・ですよね~・・いや、まだ帰るなんて、一言も言ってないんやけど・・え?最後の一言って関係ある?ツメが甘いって・・そうかもしれないけれど・・」

(今度の連休は、帰ってこれるんやろ?そん時にまた、仕事の愚痴とか聞いちゃぁわ・・うん。そろそろ、ピアノの生徒が来る時間やし・・また今度な・・切るで?猫もみんな元気やしな、あんたの帰りをいつでも待っちょんけんな・・仕事頑張りなぁえ?)

「・・まぁ、そうやな・・もう少し踏ん張りますかねぇ・・・じゃぁまた・・」

(・・ほいほい・・じゃぁねぇ~)

                通話終了。

まぁ、今は仕事辞めようなんて思ってないけれど・・・・う~ん・・そうか・・無駄な事は無いかぁ・・・そうだといいけれど・・。まだまだ、働きだしたばかりだし、また来週から仕事頑張るかなぁ・・。取りあえず・・プラモでも作るか・・。

                  ※

社会人になってから、学生だった時とは明らかに違う事がありました。それはすべての行動に置いて責任を伴うという事です。学生の頃は学校という、箱に守られていましたが、社会人になると自分一人の行動が、その所属している会社の信用にも関わってくるという事ですね。その時の態度や仕草で、その会社のすべてを見た訳ではないのに、その会社自体の印象を決めてしまう事もあります。

それが働く=お金を貰うということにも繋がってくるのではないのかと思います。昔、ばあちゃんに言われた事ですが、働いてお金を貰うという事はとても有り難いことだから、どんな仕事でも、手を抜かずにやりなさいと。お金を貰うという事はとても大変な事なんだからと。まさにそうだと思いました。

それでも人は、どうしても別の誰かと自分を比べてしまいがちですよね?今の社会がそういう風に仕向けているので仕方ない事なのかもしれませんが・・。

今の自分の境遇を嘆く前に、今一度、どうやってここまで来たのか、振り返ってみると、その道は決して一人では成し遂げてはいない、という事に気が付くと思います。何処かで必ず誰かが・・・・それが家族だったり、恋人だったり、友人だったり、はたまた、ペットであったりと、気が付かないところで誰かに助けられているのです。いや、自分は一人で生き抜いてきた!という人もいるかもしれないですけれど。そして、今の状況を作り出しているのは、他でもない、自分自身なのだという事に。世界を恨むのではなく、他人に嫉妬するのではなく、運が悪いというのではなく、自分はなんてダメなんだと嘆くでもなく、もっと自分を許してあげればいいと思います。ほんと、自分はこれが苦手だよなぁ・・でもそこが憎めない・・とか、自分には何も出来ない・・ではなく何が出来るのか・・・など、少しずつでも意識を変えていけば、きっと自分の世界は変わっていくのではないかと思います・・まだまだ僕も人生の旅の途中ですが・・。

どうせなら、楽しんで人生を謳歌していきたいですよね?(それが出来ればこんなに悩んだりしないのですけれど・・・笑)

             ・・・つづく・・・




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