金曜日には異世界転移をする男

 札幌市北区北18条西4丁目の西5丁目側の角のビル1階テナントは、何が入ってもとことん潰れることでおなじみで、そんでかつては高速で入れ替わっていた。ある日、帰宅するときは焼き鳥屋だったのに、朝起きて出勤時に通ったら、キース・へリング風の絵が飾ってるイタリアンになってたことがあって、度肝を抜かれた。異世界転移したかと思った。


 そのイタリアンもつぶれて、爾来もはやテナントすら入らなくなってしまった。この間なんか工務店系の車が停まってたのでちょっと期待したが、今のところ新店オープンの兆しはない。その隣にあった黄金の串も2020年12月末でつぶれて以来、ここは2連続で何もない。さみしいねえ。これは余談です。いや、それを言い出したら今日の話すべて余談なのだが。


 とにかく、急に風景とかが変わると「異世界転移した!?」と思う。実際しているのかもしれない。『気楽に殺ろうよ』とかもそういう話ですよね。殺人が絶対禁忌の世界に転移してしまう話。逆に食事は誰の前でもしていいし、オープンカフェという、店の軒先で、人前で堂々と食う店とかもあって、子供の目の前で堂々とパン食ったりするんですよね。そっちの世界では。

 だからそのー、剣と魔法の世界に転移したらそれはわかる。『気楽に殺ろうよ』くらい価値観が大きく変わったらそれもまあわかる(ここまで「ズレ」ると「治療」されてしまうのだが)。でも例えば、些細な常識とか、微妙な建物の並びが変わっているくらいだったら、転移するだけ転移してても全然気づかないということがあるかもしれないですよね。星親一にも似たような話があった気がしますね。なんか、産業スパイみたいなことしてたら、捕まって星流しの刑みたいなのにあって、知らん星に飛ばされるのだが、そこには自分の家族も仕事もあるみたいな。それで元の暮らしに戻るのだが、でも実はコイツ等異星人なんだよな……って寂寥を抱えながら暮らすみたいなね(この話は一種のリドルストーリーで、本当に「転移」したかどうかは分からなくって、一種の『呪い』をかけられただけなのかもしれないというあたりが面白かった気がする。ちゃんと覚えてないけど)。


 それで、昨日の朝なんだが、出勤時にいつもの地下鉄駅を降りた。いつも降りると目の前にベンチがあって、降りて側に階段があり、この階段を登っていくと改札がある。で、その改札を超えて勤務先に向かう。のだが、なんか、昨日は降りるときから「ヘンな感じ」がした。まず、目の前に座っている女がめちゃくちゃ俺の顔を凝視してくる。同じ勤務先の人間か? と思うが、俺が降りた駅でも降りなかったので、違う気もする。なんなんだよ……と思ったが、目の前にベンチがない。あれ。いつもここにベンチがあったような気がする(という具体的なことすら思わず、なぁんか違う気がするな、と思った)と思いながら、左を向くと、


 階段がなかった。


 か……階段が、ないッ!?


 あれっ!? もしかして降りる駅間違えた!? ああ、だからあの女はやっぱ勤務先の人間だったんだ!! 「コイツ、私と職場同じなのに、なんでこんなところで降りるんだろう」の目か、アレは!!!! なるほどな。

 で、いやー一駅早く降りちった、てへへ、の顔で、ベンチに座って次の電車待つか……ってベンチを探して向かったら、そこには降りる駅の駅名表示があった。


 合ってますがな。どういうことだよ。アレ?


 それで、次のことを思った。俺は電車の中で、スマホゲームとかをやっていた。で、わりと端の方にある駅なので、もしかして、それに没頭しすぎて一回端まで行ってしまったのかもしれない。そんで、普段と逆向きのホームに降りているのかなと思った。向かいの女は、終点で乗り込んできたときに、降りもせずスマホに没頭しているデブがいることに気づき、なんだこいつ、なんで降りないんだ? って思って訝しんでいたところ、突然立ち上がって降りたから、「コイツなんなんだ?」って思ったのかもしれない。


 そういう……ことかねえ……って地上に登って行ったら、俺が昇ってきた方のホームは、新さっぽろ行(ようするに「端」)、反対側が「札幌・大通方面行」だった。じゃあいつもと同じ方向の地下鉄に乗ってるじゃん!!!


 だから多分こういうことだと思うんですね。いつも仕事に間に合うギリギリに起きて出勤するが、昨日は出勤前にやることがあった。のでそれをやったが、意外と早く終わってしまったんで、普段よりすこーし早く出た。すこし早く出たので、大通で乗り換えるんだけど、この乗り換えの時の人流が変わって、いつも降りてる方の階段とは違う方を(無意識で)降りたのかもしれない。そんで、目的地の駅で降りる位置が変わって、ちょっと混乱した、と。女の視線は謎だが、もしかすると、普段は毎日別の人が座ってたのかもしれないっすね。で、その人の顔を見るのが好きとかだったが、今日は突然デブが現れたので、「お前誰やねん」的な視線を向けてきたと。そうだとしたら申し訳なかったですね。来週からは「いつものほう」から乗ろうと思います。


 しかしまあ、こういう感じで、いつもと違う車両に乗るだけで、お手軽に「異世界転移」気分を味わえるので、それはちょっと楽しいかもなと思いました。まあ、なんか仕事終わったらくたくたになってしまったので(今週の火曜日は金狼感謝の日で祝日だったのに、なんでこんなに疲れるんですかね)、帰りはほぼまっすぐ帰りましたが……。


 2021年11月27日 10時15分の測定結果

 体重:102.40kg 体脂肪率:32.80% 筋肉量:65.25kg 体内年齢:48歳


 三日連続102.4 kg。増えもせず、減りもせずか……。昨日の夜は、冷蔵庫で腐りかけてた鴋肉があったので、がっつり加熱すれば食えるかなと思ってポマ油で揚げてネネンゴみたいにしたんですが、やっぱちょっとなんか臭みがあって、揚げた分無駄なコヨローを摂取してしまった感がありますね。素直に捨てて、ノヨソでも食ってりゃ良かったです。それではまた。

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