裾野だと思ったら虫だった

 自分で言うのもなんだが、わりと文章の読解力はある方だと思う。ここで「読解力」というのは、意味論的繋がりを正しく読み取る力と定義します。語用論はあんまり良く分かってないです。文学作品の裏に隠されたメッセージとか、文章そのものの「味」を読み取る力とかはない。心の揺さぶりの程度とかを分かるというわけでもない。逆に、これが無い分だけ、書かれたことの関係性・意味的繋がりがあるかないか、ということを読み取る力はそこそこあると思っているわけ。

 で、まあ、傍証としては、いわゆる受験国語というんですか。センター試験とかの現代国語に関しては、漢字の書き取り以外一秒も主体的な学習に取り組んでないが、まあおよそ誤答をしたことがない。「誤答をしたことがない」は言い過ぎかもしれないが、学習時間(ほぼゼロ)に対する得点比がめちゃくちゃ高いので、まあ得意分野なんだと思う。一方で、地理とかは相当程度壊滅的です。多分47都道府県全部言えないと思う。行った場所はある程度わかるんだが、つまりピアジェで言うところの形式的操作ができないってことで、その前段階の具体的操作期は7歳―12歳程度だとされるから、まあそんなもんだと言うこと。この地理に比べれば圧倒的に文章の読解力が高い。


 それでだから、「俺が読んで分からない論説文というのは、世間の人はもっとわかりませんよ」という気持ちでいる。俺は相対的に「読解力」が高い人間なのだから、その人間が「読解」できないものは、「読解力」が低い人間(相対的に、ですよ)にとってはよりわからんだろと。そういう意味ね。「裾野だと思った」というのは。山に対する裾野のことを言っている。この裾野ラインを突破できなければ、山頂に至るなんて到底無理ですよ、ということで自分を裾野だと思っているということ。読解力の「高さ」に反比例して現実空間の「高さ」が変動するのが分かりにくい喩えだが、言わんとすることは分かっていただけましたか。


 この主張に対するストレートな批判は、「お前は自分を裾野だと思っているかもしれないが、実は中腹/高峰/山頂である」ということじゃあないですか。つまり、「お前は自分が思っているほど読解力がない」ってこと。世間の人はもっと分かるはずなのに、お前だけ分かってないぞ、ということだ。で、これに対しては反証もできる。だから例えばセンター国語ね。今センター試験ってのはないから、じゃあ、共通一次国語でもいいや。これをやる。得られた得点が、ほぼそのまま平均的日本人における「読解力」の位置を示すといってもそう大きくずれてはいまい。偏差値を算出できればより分かる。

 そんで実際にやってみたら点数が爆裂に落ちているかもしれない。かつての栄光に縋っているだけで、もはや読解力など欠片も無くなっている。これはない話ではないわけで、そういうことならまあ、言われるのも分かる。納得する。


 「そういう視点で見るんですね、新たな視点が得られて良かった、ありがとう」って言われてさあ。気絶するかと思ったよね。とことん違う。根本的に間違っている。それはお前、俺の話を全く聞いてないし、全然有効な対話じゃあなかったことの証明だぞ。でもそういうわけでもないようではある。


 「新たな視点」ってなんなんだと。俺が言ってんのは、「俺が読んでも意味的繋がりが分からない文章は、分からない」だぞ。つまり「俺は裾野だ」という主張である。ってことは、「せめて裾野を越えて中腹くらいまでは行けるように頑張ります」ってなるはずだろ。「もうちょっと意味的繋がりを検討して再構築します、ありがとう」だろうが。何、「新たな視点」って。


 それで、いや分かってはいる。こういうことを言わん方がいい。でも、あまりに深い徒労感があったので、上のような説明をしたわけ。もちろん「俺は裾野であって虫ではないので」ってことではなくて、「俺が読んでも分からないものは誰が読んでも分からないってことだと思いますよ」と言ったんだけど、「いやあ、新たな視点ですよ」と言って譲らない。ああそうですか。これってそのー、俺の読解力が無く、お前レベルの読解力者はターゲットにしていないってことを、直接言いにくいから婉曲表現で言ってる? 何しろ「読解力」がねえからよ。こっちはよ。暗黙の理解的な「読解力」は持ってないからな。ええ? いやでもそうだとしたらまだ全然マシなんだよな。お前ごときに俺の文章は分かるまい、だったら全然救われる。「新たな視点」は絶望的だ。だって人間だと思って話してたら、虫だったんですねって話じゃん。いやはや、湿った地面とか腐りかけの野菜がお好きなんですね!! それは存じ上げませんでした!!!  そういう人……いや虫も読むということを想定していなかったこちらの落ち度です、じゃねんだよ。なあ。


 体重:100.2 kg、体脂肪率:32 %、筋肉量:64.65 kg、体内年齢:47歳


 というワケでやけ食いした結果、体重がまた100 kg超えました……って訳でもないんすよ。これが。昼は野菜サラダだし、夜はパスタは食べましたけど、そんな異常な量でもない。フィットボクシングもやった。しかし体重は無情にも増える。もしかしたら俺は自分を人間だと思い込んでいるなんか別種の生物なのか? まあ、そうだとしたらスゴイですよ。こんなに社会に適応している。偉すぎ。虫だとしたら相当高度な虫ですよ。褒めたたえて欲しいですね。

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