付喪神信仰の始まりを目撃せよ
新年初ドモホルンリンクル・マン絞りをやってきたのだが、ここ数年は時々2体同時に絞るみたいなことをやっていて、で2体同時に絞るとなると一人ではできないので、二人でやることになる。絞るときには頭に【器具】を装着して、それによって【圧搾】をするんだけど、この【器具】がうまく取り付けられないと、ドモホルンリンクル・マンがただ悶え苦しむだけで、全然ドモホルンリンクル液が搾り取れないことになる。で、500メートルくらい離れた二つの部屋で同時作業していて、お互いの部屋はSkypeで繋いで「相互監視」をするということになっているが、【器具】の取りつけがうまくいかないという。しょうがねえから付け直しをしろと言って、で、まあ一応こっちの方がベテランなので様子を見に行った。
すると、【器具】の取り付け方が俺とちょっと違うのがわかる。ちょっと違うなあ、とは思ったが、致命的なエラーはない。だからまあいいかと思って、再度【圧搾】をしてみたら、ちゃんとドモホルンリンクル・マンは悶えだしたし、液も出てきた。オッケーだね、と言って、また500メートルえっちらおっちら移動して、こっちのドモホルンリンクル・マンを絞りはじめようとしたら、「やっぱりうまくいきません」という。
で、朝10時から準備初めて、14時から装着して、もう16時半とかなんですよ。時間かかりすぎだよ。ドモホルンリンクル・マンたちは【目覚め】させてから一定以上の時間が経つと勝手に死んでしまう。で、案の定寿命で死んでしまった。死後の液は生体液と混入してはいけないということになっているので、まあこっちのドモホルンリンクル・マンもしょうがないから殺した。結局2体分損したことになる。
まあドモホルンリンクル・マンの値段は当然のことながらドモホルンリンクルより安いので別にどうでもいいんだが、しかし、これが続くとちょっと困るわけだ。俺ではない作業員が使っている絞り機の方が古いので、機器の異常ということもありえる。その場合は修理とかそういう話になる。ということで、しょうがないからもう1体ドモホルンリンクル・マンを【起こし】て、とりあえず俺が【器具】を取り付けてみる。そしたらちゃんと動くんだよね。で、同じようにやってみって言ってもう一人の作業員に【器具】をつけさせると、動かないか、動くは動くが液がほとんど出てこないみたいになる。
なんでぇ?
マジでわからないんだよ。いや確かに「俺とは違うところがあるな」とは思うんだけど、別にそれが理論上なんか問題あるわけではないんだよ。俺だって別になんか理由があってその取り付け方をしているわけではなく、経験と勘でやってるだけだから、毎回ちょっとずつ取り付け場所ずれるし。だから、直観的にはこう思った。実はこの【器具】と俺はもうかれこれ13年くらいの付き合いになる。これだけ付き合いが長いと、【器具】の方にある種の魂が宿って、俺がいないと動かないもんね、みたいになっている。
としたらちょっと萌えるが、多分これは順序が逆なんだろうなと思った。つまり、「ある道具と長い付き合いの人間がいて、その人間が使うと滑らかに動作するが、ほかの人間が触ってもぜんぜんぎこちなかったり最悪動作しなかったりする」という事象が確認される。実はこれは「長い付き合い」であることから、その人間はある種の言語化困難なコツを獲得していて、しかしそれはソマティックなものであったりするので、本人は「違う」ということすら気づかない。「あれ、俺またなんかやっちゃいましたか?」みたいなことを言いながら普通にやっているだけの気持ちでいる。
そうすると、「同じ」操作をしているのに挙動が違うということは、「道具の側」に魂や神性が付与されて、そっちが意志判断を行っているのである、という解釈が成り立つ。このような解釈が、おそらく人間のもともと持っているアニミズムを強化して、付喪神みたいな思想に結実する。なんかこういうの、認知文化人類学って名付けて小銭稼げませんかね。
2021年01月10日 10時15分の測定結果
体重:100.50kg 体脂肪率:33.70% 筋肉量:63.25kg 体内年齢:49歳
そういえば体重計も、愛をささやいたらいい数値だしてくれるんだよなって思って、ちょっと磨いて「いつもかわいいよ」と囁いてから乗ったら1.4 kg減りましたね。付喪神は実在する。または乗り方にコツがある。どっちが正しいと思いますか? (不自由な二択)
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