炎系能力者vs氷系能力者に関する一考察

 肉体労働派遣のとこで除雪のバイトがあると聞いて勇んで行ってきた。はじめての仕事だし、除雪って見るからに痩せそうだからだ。


 ところが実態は氷割りで、バーナーで炙って一定の敷地内を乾燥させる仕事で、ちょっと思ってたんとは違った。でもまあバーナー初体験で、それは楽しかった。


 完全に汚物を消毒できる激烈な火を噴くバーナーである。たまに道路工事の人とか、道路を炙ってるでしょ。アレ。アレってどうやって火を着けるかご存じかな?

 俺はご存じなかったので説明すると、

1.ガスボンベに管を取り付ける

2.管のガス栓を開く

3.ボンベのガス栓を開く

4.シューっとガスが出るので、ライターで着火する

 という工程で、4お前。4。不吉な数字なだけあるな。こえーわ。せめてチャッカマン。


 後半は他人のバーナーの火でこっちのバーナーに火を着ける、「花火で花火に火を着ける作戦」を編み出したし、まあ別にふつうに慣れたけど、一発目はちょっと怖かった。結構な火力よ。


 ところが、この大の男がちょっとビビるくらいの轟々たる火力、持ち手まで熱が来て燻されるような火力であるにも関わらず、この熱量は氷、どころか水に対してもわりに無力である。これは結構びっくりした。


 さすがにアスファルト表面にうっすうく水が張ってる、みたいな状態であれば、ゴーって炙ってやればすぐ乾いていくのだが、ちょっとした溝とかになるともうお手上げで、しばらくごうごうと火を注いで、なんならこっちの手が熱くてちょっと持ち替えないと辛い、ってな状態になってもまだ水溜りすらビクともしない。

 まして氷に至っては。さすがに表面はちょっと融ける。ところがこの融けた水が邪魔をして、うっすうい一層目以下はなんともならない。延々炙ってもただただ氷がトゥルットゥルになっていくばかりである。


 マリオとかでさ、ファイアフラワー取ったり、ヨッシーに赤甲羅食わせたりして、ピョッ、またはボウって火を吐くと氷ブロックひとつは簡単に溶かせるようなイメージがあるじゃあないですか。ぜんぜんそんなことない。リンクなんかも、ファイアロッドまたは炎の矢で氷の塊撃ったらジュウーテロリロリロリローンってなもんだけど、あれはやっぱ所詮ゲームであって、現実は本当に無情。マジで融けない。引くほど融けない。水すら蒸発させられない。

 

 デブの氷系能力者って古今東西存在しないと思うので、俺が仮に炎系能力者だとしよう。あっでもメガネの炎系能力者もあんまいないか……? まあどうでもいいや。とにかく俺の能力は「脂肪遊戯ラード・オブ・デス」、体内の脂肪を熱量に変換して炎を巻き起こす能力で、一戦闘が終わると痩せる。いいなーこの能力欲しい。


 で、敵もメガネの氷系能力者で、奇しくもメガネ対決であるが、こいつがまあ双鏡の氷弾アイス・グラスを撃ってくる。眼鏡を犠牲にした超必殺技ね。そんでこれに必死で脂肪遊戯をぶつけたとしよう。はっきり言ってこんななあ無力もいいとこで、表面がつるつるになった二つの氷の塊が俺にぶっかって冷たいわ怪我するわ痩せるわで、最後の一つを除けばいいところは一つも見せられない。一方、間違って灯油溜まりに火をつけて、文字通り炎上させてしまったとしても、水を隅からぶっかけていけば火はすーっと消える。つまり、ほのおタイプはみずタイプに弱いのである。で、こおりタイプに優勢というのは嘘で、なぜならこおりを溶かすとみずが出てきちゃうからである。ほんと「やってみ」と言いたい。ぜんっぜん融けないから。びっくりするほど。「やってみ」る機会はなかなかないだろうなあと思いつつ。


 でも。それだけ不利な状況でもバーナーを使うというのはもちろん理由があって、これは多分、観測から推測した内容なんだけど、まず水に対しては、熱そのものはあんまり有効ではないが、熱風は極めて有効なんだと思われる。まあドライヤーの原理というか。というのは、アスファルトに薄く張った水を、真上からバーナーで炙る。そうすると、こっちのイメージとしては、そのうっすーい水の層に熱が伝わって、突沸して蒸発、って感じだが、違って、同心円状に水が散らばるのである。

 つまり、風で水の粒を吹き散らす、というのが正確なところで、だから、なんとなく最初は直上から乾かしたいところを炙っていたが、そうでなくて、角度をつけて、隅の方から順々に薄い水の膜を風でふきはがしていくような感じにすると、やや効率的に道を乾かすことが出来る。熱ではなくて、熱によって生じる風、これが重要なのである。


 氷についてはこの戦略が有効ではない。これはどうするかというと、まず体積の小さいところ、端っこの方から始める。で、融かすのはよっぽど小粒の氷でないと無理なのでこれは諦める。その代わり、端を融かしてはスポンジかなんかで水をぬぐい、また融かす……というのを繰り返して、氷の内部まで熱が通るようにする。

 そんで、テンパリングというのか、アニーリング(焼きなまし)というのかわからないけど、とにかくそういう風にやっていくと、トゥルトゥルだった氷の塊が、ちょっとずつざらざらな感じになってくる。空気が入るのかねえ。そしたらしめたもので、ここを聖剣伝説におけるマトックみたいなピッケルで(単にピッケルでよかったのでは?)叩くと砕け散る。まあ、先の尖ったスコップでもいける。スコップの方が氷を貯める袋とかに入れやすい分楽かもしれない。

 「氷にも包丁の入る目があるんどす」シッシッシッ「まあジェフ! 氷を切れるようになったのね!」みたいな感じで(これが何みたいな感じか分からない方は美味しんぼ2巻「包丁の基本」を読み返してきてください)、一旦割れ目が入ると、それを起点に端の方からばきばき割れる。で、割れてって地面から浮いたところなんかは「空手の試し割りに使われるトリックと一緒(石と下の鉄床との間を少しだけ空けとくんです。そうして叩くと素人でも割れるんですわ)」で、しかしそれをアスファルトと氷でやるんですからねェ……。いやいいんだけど。ぜんぜん何も問題なかった(こっちは美味しんぼではなく、バキの最強死刑囚編です)。


 とにかくそういう感じで細かくできる。で、もうどこ叩いても割れませんってなったら、また端のほうから炙ってって変性させる。割る。細かくしたのは袋にためるなり、ネコに入れるなりして、最終的に融雪溝みたいなところにもっていけば良い。


 だから、炎系能力者は、ただ炎だけ使えるのは二流で、まあ炎が使えれば風も使えるだろうと思うので、むしろそっちのコントロールに専心するというのが水系能力者への一つの対抗手段となろう。今日はなんか漫画の話ばっかりするが、めだかボックスでもvs雲仙冥利のときに言ってたでしょう。「爆発は爆熱よりもむしろ爆風の方が危険」って。だから風を操るというか、風の方向性をコントロールするために熱を利用するくらいの気持ちでいた方がいい。

 それから、やっぱある程度の質量を持った氷にただただ炎で対抗しようってのは結構大変なので、ついでに岩石も操れるようになるといいと思う。だからマグマですよね。マグマグの実はメラメラの実の上位互換みたいな話で。あるいはもうジョジョネタも恥も外聞もなく使うけども、アース・ウインド・アンド・ファイアーもといプラネット・ウェイブスみたいに、「燃え尽きる隕石をレンガに当ててアレする」みたいな感じで、熱い岩の塊をぶっ飛ばす的な。これなら氷弾にも対抗できると思う。


 ということで、炎系能力の開花を目指す皆様の参考になればこれ幸いである。

 なお体重は、

 2018年03月04日 21時11分の測定結果

 体重:89.35kg

 体脂肪率:28.10%

 筋肉量:60.90kg

 体内年齢:41歳


 変わらなかった。まあバーナーで炙ってただけだからね。ガッシガッシ除雪をしたかったぜ。

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