資本論、または豆 vs. カレー
ようやくというかなんというか、午前3時くらいまでかけて豆を煮た。
前回は小鍋しか持ってないのに1 kgの豆を全部戻すという愚行をしてしまったので、3倍量の水にどうやって浸けるんだよってなるわ、戻った豆が鍋の蓋を持ち上げてコンロ上に散乱するわ、死ぬほどサポニン(灰汁)が出るわふきこぼれるわで大変だったが、俺はそれなりに賢い。32年間の人生経験もある。今回は250 gくらいにしてもろもろの行程を踏んだので、大きなパニックもなく、煮えるのもわりと早かった。
で、250 gであっても、水を吸った結果大量の豆が出来るので、半分くらいはタッパに入れて冷凍し、残りをちょっと齧って、しかし3時にがっつり料理をするのも食べるのもアレなのでとりあえずそんなところにして眠って起きて。
さてどうするかなと思った。もちろん一番良いのは純豆料理、たとえば豆スープ的なもの。トマトとコンソメとベーコンいれてミネストローネっぽくするとか、ひじきとかをいれて和風にするとか。でそれだけを食べるのが安定である。
しかし「米はそんなに悪いものではないぞ」ということを証明したいというのもこれある。昼を外で食べるとどうしても肉とか油とか大量の米、という感じになってしまうかサラダチキンになってしまうかで、とにかく極端なので、昼は弁当を持参するというのを常にではないにせよ定期的にやるのは今後の人生にとっていいと思う。ところがこのときに、米やパンを封じられるとどうなるかというと、弁当箱が埋まらない。いや一日二日なら出来るよ。でもずっとはムリ。いや米をOKにしてもずっとはムリではあるが、ムリの頻度は下がる。というわけで、せめて雑穀米は大丈夫ということを確認しておきたい。
であるからして、米に合わせて食う豆メニューが良い。何があるかなあ。
俺は豆が入っていた袋をうらっかえして、裏に書いてあった説明を読んだ。
③カレー、煮物、煮豆などに適しています。
カレー。なるほど。カレーね。いいじゃないカレー。
カレーと言えばデブ、デブと言えばカレーである。もちろん俺もカレーは好きだ。
確かにゴリゴリにカレーを食えばこれは太る、そのくらいは俺にもわかる。
でもカレーの何がダメかっていうのを冷静に考えると、これはしょっぱいので米がもりもり食えてしまうところであって、カレーそのものが超絶高カロリーということではあるまい。まあなんかカレールーに油は入ってそうな感じはあるが。
であれば。
まずカレー自体のたんぱく質は豆を主体とする。つまり肉はいれない。
ジャガイモはどうしてもいれたい。だからまあこれは目をつぶって投入する。
あとはなんか適当に野菜を入れる。たまねぎとかにんじんとか、あときのことか。
米は雑穀米にし、キッチンスケールはないが、ご飯茶碗0.8杯分くらいできちんと計量する。
でこれだけだとおかわりしたくなっちゃう可能性があるので、葉物を買ってきて、そっちにも豆を投入してサラダにし、なんならちょっとしたスープも作って、とにかく結構満足目の飯にする。これならどうだ。
これならどうだ、って、これが仮にOKだったとしても、このセットはどう考えても弁当にはできないので、本来の目的からは逸脱しつつあるが、とにかくここまで言い訳すればカレーを食ってもいいのではないかなと思った。カレーを食うのにここまできちんと言い訳する、この精神こそがダイエットであると思った。もう痩せたも同然。
というわけで、効果測定のためにもきちんと体重を計測し、
2018年02月13日 08時59分の測定結果
体重:89.35kg
体脂肪率:29.00%
筋肉量:60.15kg
体内年齢:42歳
俺は銀河の果てを目指す流浪の旅に出た。
というのは嘘で、近所のスーパーに買い物に行った。
ここからが本題である。資本論の話だ。
なぜ私はかくも肥満なのか( https://kakuyomu.jp/works/1177354054881038781/episodes/1177354054881098507)の冒頭でも書いたとおり、俺はジャワカレーが好きで、特に中辛が大好きである。カレー自体としては辛めの方が好きではあるが、これが不思議とジャワカレーの辛口だとなんかちょっと違って、中辛、にしてガラムマサラとかを足す、というのが好みのセットである。
でね。カレールーにも値段の差はあって、例えばプレミアムなんとかはちょっと高かったりするし、その時々で安売りをしているものがある。ここまでは分かる。これはしょうがないというか、そういうもので、原価が違うであるとか、スーパー自体がどれに力を入れているかとか、仕入れの段階で「いっぱい入れれば安くしますよ」ってなんかそういうのがあるとか、色々な計算・思惑のもとで商品の価格は決まる。消費者たる我々は、その価格に納得すれば買えばいいし、納得いかなければ買わなければ良い。こうして需要と供給がかみ合う点でものの価格は定まる。神の見えざる手、というやつだ。
だからまあ、価格差があること自体は受け入れる。そういうものだ。ちょっと安いカレールーで我慢するならそれも良し、いやそれでも特に安売りをしていないジャワカレー中辛を食うんだ俺は、と決断するならそれも良し。なんだったら、ジャワカレーが安いスーパーを探して放浪するという手だってある。ついでにちょっと痩せるかもしれない。
その時俺が行ったスーパーの、最安値のカレールーは、とろけるカレーの181円だったと思う。で、ジャワカレー辛口が209円。ここまではいい。これは分かる。そういうもんでしょうスーパーの棚というのは。
ここで、「同じカレールーなのになぜ30円も違うんだ! 詐欺だ!!」と騒ぐほど俺だって世間を知らないわけではない。原価が違ったりさ。今月ちょっととろけるカレーを推していこうというのが、メーカーか卸かどっかであったりさ。色々なことがあるんだろう。それくらいは分かる。ここまでは納得した。
ジャワカレー辛口が209円で、ジャワカレー中辛が289円ってある?
ほんとなんだって。目を疑ったもん。
なんか価格表示の札がズレてたりすることあるじゃあないですか。ちょっと探したんだけどどこにもないんだよね。パッケージサイズが違うのか? 辛口のは小さいとか。そんなことない。同じ。
ジャワカレーの辛口が209円、で中辛が289円。間違いなくそう書かれている。80円って。お前。同じメーカーの味違いでそういうことがある?
いやまあ、80円だ100円だでぎゃあぎゃあ言うのもどうかとは思う。100円、150円出してコーヒーだのなんだのを買ってしまうわけだから、そういうのに比べたら大したことはない。
ただよ。ただね。確かにジャワカレー中辛はうまい。で、辛口とは何かちょっと違う。俺は昔、確かにそう書いた。書きはした。おそらくこれは間違っていなかったんだと思う。つまり、ジャワカレーは中辛が特異的にうまい。それで特異的に売れる。だから中辛は値下げしないで、メーカー希望価格(税込み343円らしい)に近い値段で出しても大丈夫で、辛口はちょっと売れ行きが悪いので値段を下げる。アダム・スミスは正しい。それを神のみえざる手と呼ぶ。我々はその価格に納得すれば買えばいいし、納得いかなければ買わなければいい――。
そうなんだけど。おっしゃるとおりで、どこにも破綻した論理はないんだけど。
でもさあ、同じメーカーの同じ名前の商品の辛味違いで、80円違うって、しかも隣に並んでるって、これすごいことじゃあないですか? そんなピンポイントで、俺が欲しいものだけ価格を上げてくる。いや正しい。それが資本主義というものだ。しかし。
amazonが全ての買い物を支配した未来を俺は幻視した。
メーカーはある程度の価格を提示して、しかし最終的な価格の決定権はほとんどamazonがあるとして。
amazonには俺の購入履歴が記録されていて。
次に俺が欲しがるものは、amazonには筒抜けで。
もちろん俺には他の商品を選ぶという選択もできる。誰も俺にそれを買えとは言っていない。でも、買えない程度の差ではないし、何しろ俺はそれが好きで。
……多様であるって大事だなあ。僕はそう思いました。
なんかあまりにびっくりして、俺はついとろけるカレーを買ってしまった。
とろけるカレーも普通にうまい。っていうか家でカレー食べるのすごい久しぶり。結構偉くないですかそう考えると。
で、豆 vs. カレーの結果であるが、
2018年02月14日 00時59分の測定結果
体重:89.60kg
体脂肪率:28.90%
筋肉量:60.40kg
体内年齢:42歳
微差でカレーが勝ってしまった……。(+250 g)
いやでもまだ。まだ明日の分もあるから。決着は明日の夜だ。
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