体重不平等起源論
こんばんは。
半額の長芋があったので、それを短冊にしてめんつゆをつけて食べています。おや、なかなかのヘルシー。
普通、スーパーに売っている半額商品って、「余裕で食えますけど、法律? 条例? 的にはダメってことになるんで、仕方ないんで半額ですよ」っていう感じですけど、この長芋はもう、「ああ半額ですねそれは」という見た目であったので、さっさと消費せなと思いますので、すいません、米を炊いています。そしてとろろ飯にして食います。
ヘルシー、とは言いながら、イモはイモなのでそこそこ糖質と炭水化物は入っているようで(100 gあたり、大体米の半分くらい)、これに米が足されるわけで、もう何食えば炭水化物カットできるんだぉ……(肉とか魚ですよ)。
真野絡繰氏には、「昼飯にはゆでたまごとチーズ、あとコンビニのフライドチキンを食べる」という提案をされましたが、いや、まあ、こっちから教えてくれって言って教えてもらったものなので、いつかは一回はやりますけどね。やってみますけど、うーーん続く気がぜんぜんしないよぉその食事……。
という訳で悩みつつ、以下本題です。
これまでの話を簡潔にまとめると、
・俺はデブである。95 kgくらいかな~ と思ってたら、97 kgでした。うおお。2 kgもサバを読んでしまった。
・ただしそれは、世間の人が思うような、怠惰で欲望にかまけた生活、によって生じるものではないということを論証しようとした。
ということであった。
・欲望の問題については、
「世には腹が減っていなくても飯を食うタイプの人がいる」ことを解説し、しかしこれらの人は、まあ何かしらの理由でそれによってストレスを解消しようとしているだけのことであって、「暴力」とか「支配」とかを選択していないだけ、社会的であることを論証した。
そりゃあ、「スポーツ」とか「読書」とかに比べれば、不健康であるかもしれないが、他人を傷つけない範囲においては趣味に偉いも偉くないもなく、だからそこにある精神性については、スポーツマン・サーファーとか、可憐で薄幸な読書好きの少女とぴったり同じところにあることを示した。ただ肉体に及ぼす影響が違うだけである。
よって、「腹が減ってなくても飯を食う」という人間に対し、デブは欲望に駆られすぎだ、と評するのは酷というものである。急に「酷」という情緒的判断が出てきてしまったが、それを差し引けば完全な論理学的判断と言えよう。
また怠惰の件については、これは俺に関してであるが、
・脳がなんか大変
・リパーゼがない
・筋肉もなんか変
という点を示した。
ただし、
・リパーゼはないほうが痩せる説
・筋肉量については、トレーニング方法が誤っていた説
もある。
ていうか体重計を買ったのであるが、最新のタニタ体重計による測定だと、「筋肉量は多い」と表記されていた。ので、だとすると、ちょっと待ってくれ、ということは俺は単に……欲望と怠惰に負けた……理性のない我欲にまみれたデブだというのか……!?
で、脳の方も、一度きりの計測でしかなかった訳だし、何しろあれから十年近くも経っているから、科学の進歩によって何かこう、特効薬が出来ていたり、トレーニング方法が確立されてきていたり、しているのかもしれない。
そうなるとやはり俺がデブであることは、俺の、俺だけの責任なのか。
俺が自堕落で、食いすぎで、欲にまみれた生活をしているからなのか。
自己管理ができない、意志薄弱な人間であることが、太る原因なのか。
いや、じゃあ仮に百歩譲ってそうだとしましょう。
それの何が悪い?
うわ~開き直った~~なんだこいつ~~。
いや、というのは、こういう欲に弱い人間、自己管理ができない、意志薄弱な人間がいることが、人類にとってプラスになる、という側面だってあるからである。
ねえよ。
返事が早すぎるわ。あるって。おちつけおちつけ。あせるなあせるな。
今からその話をするからさ。
と言うことで、工業暗化という現象について話をしよう。
wikipediaを見れば話が早いのであるが、何が言いたいかをここでも簡潔に話すことにしよう。
オオシモフリエダシャク(名前が長いので、以下「シモフリ」と略することにしたい)(デブだけに)という虫をご存じだろうか?
仮に知っている場合、たぶん工業暗化の件で知っていると思うので以下の説明はまったく読まなくていいが、ようするに蛾である。このシモフリには、白いのと黒いのがいる。
で、昔は白いシモフリが多かった。ところが、産業革命がおこり、街が煤に塗れるようになると、黒いシモフリが増えた。これが工業暗化である。
どういうことか。賢い君ならもう大体のところを察したと思うが、説明を加えたい。
もともとシモフリは、木の幹とかに止まって暮らしていた訳である。白い樹皮の木に止まっていると、白いのは目立たず、黒いのは目立つので黒い奴ばっかりが食われていく。よって、白いシモフリの方が多い。
ところが、街が煤に塗れ、木にも煤が付き、壁とか蛾が止まりそうなところは大方黒くなる。そうするとどうなるかと言うと、白いシモフリが目立つようになり、今度は白いシモフリが食われてしまうのである。
ダーウィンが言った、かどうかは知らないが、こういう言葉がある。
「より食べたものが生き残るのではない。より脂肪を蓄えたものが生き残るのでもない。変化するものが生き残るのである」
えっと、こういう言葉はないですね。すいません。
でもまあ、種全体、ということを考えるとこういうことになる。
これを自然選択とかそういう風に呼ぶわけだ。
ところが、考えてみるとちょっと不思議なことがあり、それは、産業革命前は白いシモフリばっかりだったはずなのに、なんで産業革命後に黒いシモフリが増えることができたのか、ということである。
まあ不思議でもなんでもないと言えばなんでもなく、黒いシモフリは食われるからそりゃあ数は少ない、が、ゼロではなくって、だから黒い方が有利になったら増えましたよとそれだけのことである。
ここから我々が学ぶべきことは何か?
それはつまり、現代の社会状況に適応しない形質を、軽んじてはいけないということである。そりゃあ、このご時世、痩せている人(白いシモフリ)の方が社会適応度は高いでしょう。医者にかかることも少なく、成人病の可能性も低い。ご立派なことである。羨ましい限りである。
ただ、デブ(黒いシモフリ)が突然覇者になる日が来ないとも言えないのである。
Madmax Fury roadは皆さんご覧になったものと思うが、あれは核戦争かなんかで荒廃した世界の話である。で、もうなんというか凄い世界になっている。
荒廃し、暴力が支配する世界の中に、鉄馬の女たち、というバイク乗りの老婆の集団がいる。この老婆と夜を明かすと、老婆は、「昔はテレビってものがあってね……」としみじみと語ってくれる。
えーーーーー! 地続きだったのーーーーー!! せいぜい今から50年後とかの話かよぉーーー!! 世代交代してないのーーー!!(まあ、旧Madmaxシリーズはそういえばそうでしたもんね)
となる訳だが、まあそういうことだ。
どういうことだよと言われる前にもう少し具体化しておこう。
例えば急に隕石が落ちてきて氷河期が始まる。寒い。
こういう時代ではデブの方が強い。痩せている君は残念ながら寒さに負けて生き延びられない、かもしれない。
だから、今の社会的にはそりゃあデブは困ったさんで軽んじられるかもしれないが、そうやってデブを軽んじ、デブを滅ぼそうとすると、長期的に人類種が生存し続ける可能性を低下させることになる、という訳である。
すべてのデブがものすごく努力をして、血の吐くような思いをして痩せた結果、突然隕石が振ってきて、デブがデブでなかった、がために人類という種が消失してしまうということも、ないとは言えないのである。
デブ、頑張ったのにね。かわいそう。
最近の大気汚染に対する関心の高まりによって、また、白いシモフリが増えてきたとも言う。だから、言ってみればこの白いシモフリも、頑張ってた訳ですよ。日々同胞が鳥に食われていく。何故俺は黒いシモフリに生まれなかったのか? そう嘆きながら日々を過ごし、子を為し、そして、なんとか生涯を終えた、悲痛な蛾生を送った白いシモフリたちの犠牲のもとに、現在の白いシモフリ社会が成立していると言えるわけである。
だからまあ、つまり、俺が太っているというのは、そういうことなのである。
人類という種を存続させるための尊い犠牲なのだ。そう思って欲しい。
まあだからそういう訳で、「デブ」あるいはなんでもいいが、特別な人間の形質を責める、排除することはつまり、自然選択によって人類が滅びる可能性を高めることであるので、理屈で言うとしない方がいいですよ、そういうことは、という話であった。
この話をもって、この純粋脂肪批判を終わりにし、デブと中肉中背と痩せが手に手を取り合ってお互いを認め合う社会の礎にしてもいいのではあるが、だが、しかし。
俺は、まだ、諦めていない。
「デブの存在を許容する」ことが人類に貢献することである、というのが伝えられたのは良かった。それだけでも報われる。
ただ。ただ、である。
やっぱデブはデブじゃん。ちょっと「デブ」っていうだけでコミカルな響きになっちゃうじゃん。軽く腹でも触りましょうかみたいな感じになるじゃん。
その背景には、どうしても、デブは結局、だらしねえ奴なんだよなあ、という侮りが存在するというのはこれはもう事実と言って良い。
ただだらしない訳じゃあないんだって~~、というのが俺の主張であったが、これは根拠が薄弱であったりするから説得力がない。
おっしゃるとおりである。
だからこうしましょう。事実を以て語らしめる。それしかない。
ということで、序論はここでいったん幕引きとし、明日からは、
「破論:これからの「贅肉」の話をしよう」という形で、新章をはじめていきたいと思う。
「痩せたら負ける」ダイエットの話をしようと思う。
それではまた明日。今週も頑張りましょう。
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