閑話:リパーゼ幻想

 こんばんは。

 夜に予定が入ったので、昼食の話でご勘弁ください。


 昼食はロッテリアで肉タワーってのがあったんでデブならこれだろという使命感でダブルを齧ってみたのですが、あれ、知らなかったんですけど野菜ゼロなのね。で、なんかちょっと迫力ある演出されてるじゃあないですか。

 ところが野菜がないので、見た目がなんというか、思ってたより薄いんですね。チーズは溶けているので、なんか存在感ないし。

 まず袋が「こんなもん?」というサイズで、袋を開けるとより寂し〜い感じがしてしまう。うーん、残念。モスとかの方が当たり前ですけどうまいですね。ちょっと時間と諸々の都合でロッテリアにしたんですけども、やはりファーストフードを昼飯にするとちと物寂しいなということになりましたので、まあまたちょっと検討します。



 さて本日は、俺の体質の問題点をもうひとつ語りたいと思ったのだが、これはひょっとしたら問題点ではないのかもしれず、しかし書き上げてしまったものなので、以下ではまず体質の問題点と従来されてきたものについて語りたいと思う。

 疑いながら読んでください。疑念を胸に秘めながら。


 体質の問題点2:コレステロールに弱い。


 確かあれは成人したばかりのころ。俺はとにかく酒に溺れていた。耽溺と言ってもいい。しかも酒を知らないので、大五郎とかそんなんよ。量だけあればそれで良いですというシステム。ただただ水と氷で薄めて飲み続ける。深夜、いや、早朝に眠って昼に起きる。頭痛がする。迎酒をする。なんだか楽しくなってくる。うたったり踊ったりをして、気がついたら深夜あるいは早朝になっているので眠る。起きたら頭が痛い。迎酒をする。


 マジでこんなんよ。

 俺は酒に弱い人間なんですけどね。弱いからこそ溺れたのでありましょうか。酒豪じゃあなくてよかったですね。


 しかしある時所用があって、俺は一念発起その用足しに出掛けたところ、昼になってなんだか手が震えてくる。あれっ? おかしいな? なんつって、非常に喉が乾く。なんか焦ったような気持ちになる。なんだこりゃあ。と思いながらも心当たりがあった。まさかな、と思いながらも、適当なラーメン屋に飛び込み、ビールを呷る。いやぁ、このビールのうまいこと。そんで気持ちがすっきりする。手の震えも次第におさまる。


 はい。なるほど。これはアレですね、物質依存症ですね。はい。よくわかりました。


 こらぁマズイでしょうということになり、俺は酒を飲まない知人の家に転がり込んだ。そうして言った。俺が酒を飲もうとしたら止めておくんなまし、と。


 辛く苦しい日々が始まるかと思ったが、そうでもなかった。当時の俺を救ったのはスーパーボンバーマン2である。とにかく酒が飲みたいなぁと思ったら、知人にひとをあと二人呼びなさいと命じ、スーパーボンバーマン2の対人戦に勤しむ。夢中になり、呵々大笑し、いつの間にか時を忘れて遊び倒している。眠くなったら寝る。

 1週間くらいでいわゆる禁断症状がおさまり、俺はすっきりした気持ちで「帰るね」と言った。


 そしたら知人がこう言う。帰るのは良いけど、礼というものはないのか。

 なんたらがめついやつだと思った。あんなに楽しいボンバーマンライフを送れたのは誰のおかげだと思っているのか。それこそがなによりの礼だろうにと思った。


 しかし俺は温厚温和でならした人間である。ことを荒立てるのは好まない。そうか、どうもありがとうと伝えたところ、知人が行動で示せという。行動ってなんだいと俺は聞く。お前さんの慰みものにでもなれば良いのか。


 ならんで良い、というのでそれは少々ほっとしたが、血を寄越せという。めちゃくちゃ、怖いんですけど。

 でもまあ仕方ないんで、良いとも持っていけと言い、手首を切ろうとするが、そういうこっちゃあないと言われる。じゃあどういうことよ?


 と、俺はその知人の勤める某所に連れ込まれる。そうして幾つかの書類にさらさらさら、ぽんぽんぽぽんと署名・捺印し、気がついたら注射器で血を吸い上げられておった。


 そして、何やら丸薬を渡され、これをとにかく朝晩飲めと言われる。


 はぁい、と言って素直に俺は丸薬を飲み続けた。1週間の時が流れ、白い清潔な部屋に呼び出されたかと思ったら、またぞろ血を抜かれた。


 そんで、しばらく腑抜けた顔をして待つ。このまま俺は、バッタがなんかと合成されて改造人間になるのかなぁ、とか思いながら。


 そしたらなんかあたりがばたばたと忙しくなって、何やら偉そうなひとが現れた。おっ、いよいよこれは改造手術か、と思ったら、とにかく帰りなさい、そんで1週間後にまた来て、と言われ、いくばくかの金をもらって俺は帰った。


 なんだか狐につままれたような気分になった。知人に連絡してみたところ、ふうん。そう。とだけ言われ、まあ、帰っていいなら帰れば? 良かったね。と言われる。


 良かったのかしら。

 悪の組織と戦う覚悟はできていたんだけどなぁ、と首をひねりながら家に帰り、残っていた酒を流しにどばどば流して、また茫漠とした日々に戻った。


 で1週間後。またそこに行くと、また偉そうな人がいて、直々に血を抜いてくださる。しばらく待てと言われ、はあい、と口を半開きにして待つ。


 そんで、偉そうな人が何やら書面を持って戻ってくる。

 で、開口一番こう言った。


「あなたね、リパーゼがないですね」


 リパーゼがない。リパーゼってのは確か生物で習ったやつだ。なんか分解酵素ですよね。


 それだ、と言う。それがないったらどうなりますか、と尋ねる。


 脂肪が分解されん。

 その人は答えた。


 どうもこういうことだったらしい。

 そのクリニークでは、悪玉コレステロールと言われるやつを減ずる薬を開発せんとしていた。どうやってか?


 善玉コレステロールをぶちこむことによって、である。俺が呑んでいたのは善玉コレステロールの塊であったらしい。


 善は必ず悪に勝つ。

 悪は必ず滅ぶのだ。


 そういう理屈であったらしいが、どうもこれは、俺には合わなかった。合わないというか、まあ、もうちょっと理屈を言うと、善玉コレステロールが体外に排出される過程で悪玉コレステロールもついでに連れていく、ということを見込んでいたらしい。

 廬山亢龍覇の理屈である。ドラゴン紫龍(善玉コレステロール)が、カプリコーンのシュラ(悪玉コレステロール)とともに大気圏外に出るという形である。

 ところが俺のセブンセンシズ(リパーゼ)は弱く、ドラゴン紫龍を大気圏外に押しやるほどのパワーがないとこう言うんですね。

 まあそうでしたか、さっすがぁ、と太鼓を持つくらいしかないので俺はそうした。


 さっすがぁ、じゃあないと言われた。

 つまり、俺は善玉コレステロールも排出出来ない人間なのである。呑んでた丸薬に入ってたコレステロールは全部まるまんま体内に残ってるんだという。だからね、と偉そうなひとは言った。


 脂質のある食べ物食べるのは控えた方がいいよ。コレステロール出て行くの、すごく時間かかるんだから。


 はぁい、と言って俺は帰宅し、それきりそのことは忘れていた。そして静かに太っていった。忘れなければ良かったなぁ、と今となってはそう思う。


 でもまあそういうわけで、俺は他人よりコレステロールの排出が困難な人間なのである。そりゃあ太る。いや因果関係は実は知らないけど、コレステロール、ってなんかデブっぽいじゃあないですか。別に食いすぎたりごろごろしすぎたりしている訳ではなく、怠惰に身を任せている訳でもなく、ただただ俺の消化酵素が悪いのである。


 誰が俺を責められようか?


 汝らのうち、リパーゼを持たないものだけが、石を投げよ。





 というのが俺の言い訳であったのだが、どうも、

 http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201309/532640.html

 なんかを読むと、リパーゼを阻害して痩せようという薬があるらしいので、とすれば俺はむしろ太りにくいのか。おやおやぁー? 言い訳がひとつ潰れてしまった。つまり単に食い過ぎ、怠惰が原因ということであるのかもしれぬ。えー! マジかよー!! 聞いてねえよー、それは。


 真相は藪の中である。

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