第3話
「あ、この曲!」
「美月ちゃん、ジャズ知ってるの?」
玲子が訊くと、
「ううん、でも、この曲って…」
「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」
と割り込んできたのは、賢太郎だった。
「サムデイ…?」
「邦題だと『いつか王子様が』、だ」
「そうそれ!私の大好きな曲!でも、なんか知ってるのとカンジが違うの…」
「お前、ジャズ知らないのか?なんでこの店に来たんだ?」
それに対しては玲子が笑いながら、
「あなただって、ジャズ初心者じゃないの」
「うるせーな」
賢太郎が悪態をつく。
玲子がそれをスルーしつつ続ける。
「ちなみに、この曲のタイトルの一部をとって、お店の名前にしたのね」
「そっか、マイ・プリンス…!」
美月はハッとした。
「ちなみに、ビル・エヴァンスのピアノ演奏よ」
「へ〜、私、好きかも」
「あたしもあたしも」
典子も同意する。
「良かったら、また来てね♡」
「は〜い!」
二人は声を揃える。
その後も、しばし玲子とお話ししてから店を出ると、二人はキャッキャッとはしゃぎ合っていた。
典子が、
「あの男の人、イケメンだったね〜」
「そこ!?私はジャズっていいなと思った、気に入った!あとカルピスうま!」
「カルピスはともかく、ジャズは確かにね〜」
「また来ようね!」
「そうだね〜。ガラガラで誰もいなかったし!」
「そこは言わない!」
美月はそう笑いながら、思っていた。これからも制服を着て、あの喫茶店に通おう。名付けて「制服ジャズ」だ。
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