第26話 葛の花来るなと言つたではないか 飯島晴子
葛の花来るなと言つたではないか 飯島晴子
先日、と言っても去年の夏のことだが、ディズニーランドへ行って来た。
特にあのキャラクターに興味はないが、ディズニーランドはとても好きだ。
あそこは人々がとても優しい。たとえばある乗り物の列に一時間以上並ばされたからと言って、誰も苦情を申し立てるようなこともしない。
狭い通路の中で道行く人と肩がぶつかったからと言って、お互いに怖い剣幕になることもない。
あの場所には、常に一体感がある。全ての来園者が、あの場所を楽しもうとして来ている。そのために全ての来園者が、あの場所の雰囲気づくりに協力をしようとしている。争ったり苦情を言ったりするのは野暮である。雰囲気に合わない。だから誰もそんなことは言おうともしないのである。
それでは、来園者をそのような気持ちにさせるのは一体何だろうか。
それは「ワールド」であろうと思う。
ディズニーランドとは、単なる一つの遊園地ではない。そこには他の遊園地とは異なる、はっきりとした世界観がある。ディズニーランド「ワールド」とも呼ぶべき空気が作られている。
その「ワールド」を作るのは、並大抵のことではない。従業員一人一人の態度や姿勢、景色や景観作り、作業場や裏舞台を来園者の目に触れさせない徹底した気配り。それらがパーフェクトにこなされてこそ、あの一帯は一つの世界となりうるのである。
「ワールド」を持ったものは強い。ひとたびその「ワールド」に身を浸し満足した者は、再びその「ワールド」にどっぷり浸かりたいという気持ちになる。だから何度でも足を運ぶ。その「ワールド」の住人になる。
そんなことを考えていたら、それは俳句にも当てはまるのではないかという気がしてきた。自分なりの「ワールド」を持つ。自分ならではの境地を作る。見るもの聞く者を虜にさせる世界観を作り上げる。
それができれば、俳句作者としての確固たる地位は揺るぎないものとなる。
もちろんそこへ至るのは並大抵のことではない。どんなに努力を重ねても、凡人には実現し得ぬ境地だろう。しかし目標がなければなにごとも始まらない。
私なりの「ワールド」を、いつか完成させたいと思う。
気ままに一句鑑賞 矢口晃 @yaguti
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