2-8 邂逅

 草原を突き抜けるように伸びる街道から僅かに外れた、林の奥。

 流れる清流のせせらぎと、パチパチと爆ぜる薪の音。夜鳥の鳴き声や、風が木々の葉を揺らす音が静寂を埋める中、鳴るはずのなかった足音に気が付いたロザリーは一つ嘆息した。


「……まだ寝てなさいよ。戦場は近いんだ、寝不足で動けないなんて笑えないわよ」


「目が覚めてしまったの」


 深夜の見張り。二人で交代して行う形となっていたはずだが、まだ交代して一刻程度しか経ってはいなかった。初夏とは言え、未だに夜闇が覆う中で起きてきた青髪の少女――シルヴィ。

 焚き火を挟んで正面に座った姿を見て、ロザリーも二度寝を勧めるのは諦めたようだ。ポットに淹れていたコーヒーをカップに注ぐと、ロザリーは器用に己の武器である布を巻いた槍の先端に載せると、淀みない動作でシルヴィの手前へと差し出した。


「ありがとう、ロザリー。相変わらず器用ね」


「これぐらい、誰でもできる」


 ぷいっと明後日の方向を見ながらぶっきらぼうに答えてみせたロザリーであるが、炎の燈色を受けても目立つ程度に頬は紅くなっているようだ。相変わらず、褒められる事にはどうにも慣れていないらしい親友の姿に、シルヴィはくすくすと微笑んだ。

 どうにも見透かされているようで、居心地が悪く――同時に温かなものを感じながら、ロザリーは改めて視線を戻した。


「……アイツは?」


「すっかり眠っているわ。私達が無理に引き離すような素振りを見せていない事もあるし、明日には戦場に着くもの。さすがに寝不足で戦場に出るような愚は犯さないみたいね」


「お前が言うのかよ……」


「あら、わたくしはすっかり眠ったもの」


 たかだか一刻程度の睡眠ですっかり眠ったという表現は如何なものかと思いつつ、ロザリーは焚き火の近くで毛布に包まりながら熟睡しているもう一人の少女――ノエルへと視線を向けた。

 揺れる炎に照らされた顔は、にへらと笑みを浮かべているようだ。口元にはだらしなく涎が垂れているのだが、そんな姿がかえってノエルには似合っている。


「ノエルぐらい……とは言わないけど、せめてもう少し寝た方がいいんじゃないか?」


「ふふ、ノエルみたいに無防備に眠るような真似はできないわ。少なくとも、今は部外者がいるもの」


「ま、それはあたしも同感だけど。って言っても、シルヴィが見張りをしてくれている内にしっかり寝たけど」


 部外者と称されたのは、先程も話題に出ていた男――エドワルドについてであった。

 いくら神聖騎士団に所属しているとは云えど、シルヴィにとってもロザリーにとっても、そして今は熟睡しているノエルにとっても、エドワルドは部外者でしかない。


「――あたし達は、でいい」


 舞い上がる炎に瞳を揺らしながらぽつりと呟くロザリーの言葉に、シルヴィは何も語ろうとはしなかった。今更、語る言葉など必要なかったのだ――――。




 ――――アールスハイド神聖国に庇護を求めたとされる『勇者の末裔』達とは違い、『本物の勇者』と呼ばれるだけの実力を有したシルヴィやロザリー、ノエルらはアールスハイド神聖国によって保護されている。

 保護されていると云えば聞こえは良いが、その実は軟禁状態にあると言っても過言ではなかった。


 幼い頃、まだ自らの力の片鱗が目覚めたばかりのシルヴィは、寒村でひっそりと暮らす両親によって、アールスハイド神聖国に

 両親は飢えを心配せずに暮らしさえも保障される事に喜び、シルヴィには「シルヴィは特別よ。これはとても素晴らしい事なの」と言い聞かせる母。しかしそれは、ただ自分達の暮らしが改善される事に対する喜びばかりであって、シルヴィの能力を心から喜んでいるようには見えなかった。

 それは正しかった。シルヴィの両親は喜んでシルヴィをアールスハイドへと差し出した。本人の意思など一切無視して、ただシルヴィが特別だと認められた事にかこつけて喜びながら、一方的に。


 どこかぶっきらぼうで男勝りな口調が特徴的なロザリーもまた、似たような状況でアールスハイドへと保護された少女である。

 貧民街で両親からも棄てられ、それでもなんとか生きていたロザリーを、同じく貧民街に棲まう者達が金欲しさにアールスハイドへと情報を流し、売りつけた。

 昨日まで仲間だと、家族だと思っていた者達が、幾ばくかの金を手に喜色を浮かべていたあの姿を、ロザリーは忘れていない。


 シルヴィとロザリー。

 形は違えど、大事な存在によって棄てられるように、酷い裏切りによってアールスハイド神聖国に保護されるに至った二人。お互いの境遇を自然と話し合う内に、お互いがお互いを認め、いつしか二人は信頼し合えるようになったのはごく自然な流れであった。


 そんな二人の元へとやって来たのがノエルであった。

 何も知らない、純心で無垢な少女。

 その人懐っこさも相俟って、当初はシルヴィとロザリーも敬遠していた程であった。人の醜い部分を見てアールスハイドへとやって来た二人には、どうしてもノエルの純粋さを許容しきれなかったのだ。


 しかし――ノエルもまた歪んだ来歴を持っている少女であった。


 奴隷落ちした女の娘であり、奴隷として生まれ育ってきた少女。しかし奴隷商によって、敢えて奴隷らしい教育はせずに天真爛漫に育てられた。

 それは愛情でもなんでもなかった。純真無垢な少女の心が手折れる瞬間を何よりも好むという、好事家の貴族に売り払う為に育てられていたという、歪な環境で育てられてきた少女――それがノエルであった。

 しかし、あまりに何も知らないからこそ、『本物の勇者』の力が覚醒した際、惨劇が生まれた。彼女は自らの手で奴隷商も、買いに来た貴族も――母さえもその手で殺めてしまったのだ。

 そこに一切の良心の呵責もなければ、愉悦もない。さながら玩具で遊ぼうとしていたら壊れてしまったかのような、ただそれだけでしかなかった。




 ――――周囲の大人によって、欲望によって。

 望まぬ称号を、『本物の勇者』という称号を背負わされ、飼い殺しにされる日々。

 三人は三人だけの世界の中で今日という日までを過ごしてきた。


 そんな現実を今更ながらに思い返し、珍しくも感傷に浸るロザリーの気持ちはシルヴィにも分からないではなかった。


 此度のエルセラバルド帝国とリッツバード王国間で起こった戦争。

 そこに出陣する形となったのは、シルヴィやロザリー、そしてノエルにとっては千載一遇の好機なのだ。


 これまでアールスハイド神聖国の監視下に置かれ、望まないままに繋がれた鳥籠の中で過ごしてきた数年の歳月は、この戦争での活躍如何で終わらせる事ができる。

 同じ痛みを知る仲間と出会えた事は感謝しているし、ノエルという可愛い妹分ができた事も感謝こそしているが、アールスハイドはあくまでもシルヴィやロザリーにとってみれば、望まぬ場所なのだ。

 アールスハイドにいる限り、どうしてそこに至ってしまったのかを思い出さない夜はない。


 この戦争で圧倒的な力さえ見せつけてしまえば、各国が『本物の勇者』という存在を認識さえしてしまえば、アールスハイド神聖国だけが『本物の勇者』という名の最終兵器を囲い続けるのは難しくなる。

 かの『国崩し』の魔王――アゼルという脅威に対抗できるという期待を寄せられるのは、至極当然な流れなのだから。

 そうなれば、今回のように監視が同行する可能性は否めないが、それでも今よりはずっと自由になれる。かつての過去に縛られたままではなく、自らの足で進む事だってできるかもしれない。


 レオンツィオがシルヴィらを外に出す事について危惧を抱いていたのは、まさにそんなシルヴィとロザリーの心情を見抜いていたからこそだ。 


「――魔王に、感謝している程だわ」


 ただの戦争だけだったなら、決して自分達が外へと出る事はなかっただろうとシルヴィは当たりをつけている。此度の戦争、早期終結を目論む理由は間違いなく、魔王アゼルの圧倒的な力をアールスハイドが危険視しているからこそだ。故にこそ、自分達はこうして外に出られたのだから、シルヴィとしてはアゼルに感謝すら抱いている。


「けれど、魔王を討つのはあたし達だ」


「えぇ、もちろん。誰からも認められ、誰にも干渉されない為に。そのために――私達は魔王を討つ必要がある」


 空を見上げれば、すでに夜闇は藍色へと僅かに染まり、夜が明けようとしている。

 それはまさに自分達の未来へと続く光景のようだと、シルヴィは柄にもなく感傷的な気分を抱きながら、未来を想って微笑んだ。









 ◆ ◆ ◆ 










 リッツバード王国、ストラング砦。

 エルセラバルド帝国の猛攻に耐えつつ反撃を行い、互いに痛み分けとなっては夜を明かしてと繰り返すような日々が続く中、今日もまた、朝陽が昇って間もなくエルセラバルド軍による侵攻が始まろうとしていた。

 砦から弓や魔法が届かない位置へと下がっていたエルセラバルド軍が姿を見せると同時に、警鐘が鳴り響くストラング砦。リッツバード王国の兵士達が駆け足で持ち場へと向かっていく。


「帝国の連中め、あの鋼鉄人形を直しているのか」


 見渡しの良い平原の向こう側からやってくるエルセラバルド軍の兵士達。その横に並ぶ漆黒の鋼鉄人形――〈アルヴァ〉は、確かに三十という数からは減ったようにも見えるが、明らかに撃破報告との帳尻が合っていなかった。


「はっ、上等よ。いくらでも撃ち抜いてやるってもんですぜ」


 カーマインの呟きに横合いから答えたのは、ストラング砦に取り付けられた魔導大砲マギカノン砲撃隊の隊長、ラルフだ。

 無精髭を生やしているどこか軍人らしからぬラルフと、れっきとした軍人らしい性格をしているカーマイン。水と油のように混ざり合いそうにはないと思いつつも軽口を叩いたラルフであったが、カーマインは特にラルフの口調などを叱りつけるでもなく、小さく笑みを浮かべた。


「それは頼もしいものだ。期待しているぞ」


「お? なんだい、お固い軍人らしくねぇな。俺みてぇなのは苦手かと思ったんだがな」


「なに、共に肩を並べて命を懸けて戦う戦友に礼儀など求めぬよ」


「へぇ、意外だったぜ。ま、その方がありがたいってのは事実だがな」


「礼儀で戦争に勝てるというのなら求めもするがな」


「ちげぇねぇ。――さて、お喋りはここまでだな」


 徐々に近づいてくるエルセラバルド軍が、魔導大砲マギカノンの射程外から散開しようとした、その時であった。


「……なんだ、あの三人組」


 両軍が睨み合う中、いつの間にやら三人組の少女――双剣を手にする白髪の少女、槍を構えた赤髪の少女。そして、細剣を手にした青髪の少女ら三人がストラング砦とエルセラバルド軍の間に佇んでいた。


「こっちに背を向けてるってこたぁ、敵じゃあなさそうだがな……。いつの間にあんなトコに出てきやがった……?」


 エルセラバルド軍が相手ならばすぐにでも砲撃隊の隊員に指示を出して攻撃を開始できたものだが、年端もいかぬ少女三人の背を撃つような真似はラルフとてできるはずもなかった。

 困惑する自らの率いる部隊員達に手をあげて指示を待たせつつも独りごちるラルフは、ちらりとカーマインに視線でどうするかと問いかける。


「……やめておいた方が良かろう」


「まぁ、相手があんな小娘だしな。撃ちたくはねぇけどよ――」


「――いいや、そんな理由ではない。らには生半可な攻撃は通用しないだろう」


 漸く口を開いたカーマインの口を突いて出てきたのは、明らかな警戒のそれであった。

 思わずといった様子でカーマインを見やれば、カーマインは僅かに顔を強張らせながら、目を見開いている。


「おいおい、どうしたってんだよ……」


「始まるぞ」


 一瞬を見逃すまいと前方を見つめるカーマイン。

 ラルフが再び少女らに視線を向けるとほぼ同時に、三人組の二人が一斉に大地を蹴って疾駆した。


「――な……ッ!?」


 遠い位置からだからこそ、白髪の少女と赤髪の少女の動きはまだなんとか追えていた。およそ常人とは思えぬ程の速度で駆け出した二人が、エルセラバルド軍の最前列に位置する〈アルヴァ〉へと向かって肉薄。

 吹き抜ける一陣の風を思わせるような速度で肉薄した二人の少女が〈アルヴァ〉の目の前を駆け抜けたかと思えば、〈アルヴァ〉は鋼鉄の瓦礫と化してその場に崩れ落ちた。


 たった一瞬の内に、数体の〈アルヴァ〉が崩れ落ちる姿に唖然とするカーマインらへと向かって、唯一佇んだまま動こうとはしなかった青髪の少女が、くるりと振り返る。


「リッツバード王国の皆さん。私達はアールスハイド神聖国所属の者ですわ。此度の戦を止めるためにやってきました」


 青髪の少女――シルヴィの声は、ストラング砦から戦場を眺めていたカーマインの耳に、確かに聞こえていた。


 アールスハイド神聖国。

 此度の戦、リッツバード王国国王ヘルゲンが早期終結を望んでいるという事についてはカーマインも耳にしていた。『聖女』の来訪と時期が重なっている上に、人族間での戦争についてはアールスハイドも難色を示しているらしく、いざとなればアールスハイドからの援軍が送られるであろうとも、カーマインはヘルゲンより直接言葉を賜っている。

 しかし始まってみれば、多大な兵力を投じたリッツバード王国に対し、エルセラバルド帝国は新たな兵器を投入して迎撃に成功し、戦局は膠着状態を迎えつつある。


 そこにやってきた、たった三人の少女。

 リッツバード王国の兵士達を一蹴してみせた鋼鉄兵士でさえ、事も無げに鎧袖一触に切り刻んでみせた実力。

 真横で愕然としたまま固まるラルフを他所に、いっそカーマインは納得さえしていた。


 冒険者やレアルノ王国兵と共に魔大陸へと渡ったアレンが偽物とまでは言わないが、それはあくまでも常人の域を出る代物とは到底言い難い。

 明らかに常人とでは一線を画する実力。

 それこそ、レアルノ王国の王城を一刀両断してみせた魔王アゼルと同様に、常識さえもが通用しない、本物。


 ――「なるほど、アレが噂に名高い『本物の勇者』という訳か」、と。


「ここより先、この場での一切の戦いは禁じさせていただきますわ」


 シルヴィが続けた言葉に、ラルフは小首を傾げた。


「そうは言っても、エルセラバルドがそう簡単にゃ止まってくれねぇとは思うんだがな」


 いくらアールスハイドが介入したとは言え、そもそもエルセラバルドが攻めて来るのでは「はいそうですか」と大人しくしていられるはずもない。

 そうしたラルフの独り言が聞こえていたかのように、シルヴィは薄く笑みを浮かべたまま続けた。


「――御心配には及びません。禁じさせていただいたのは、あくまでも。わたくし達に歯向かうと言うのであれば、ですわ」


 涼しく告げられたのは、純然たる事実であった。

 カーマインらは「あれを御覧ください」と短く告げたシルヴィの声につられ、視線を再び戦場へと戻し――思わず目を見開いた。


 双剣を携えたノエルと、槍を肩に担ぎ退屈そうに佇むロザリー。

 その周囲には明らかに〈アルヴァ〉が――否、〈アルヴァ〉であった物が転がっていた。


「……おいおい、化け物かよ……」


 エルセラバルド帝国軍の進軍。リッツバード王国が奥の手とさえ言える魔導大砲を用いてようやく止められたはずの進撃が、たった二人の少女を前に明らかに停止しているではないか。


 愕然とした様子で、ただこの状況を眺める事しかできなかったリッツバード王国軍の視線を背に受けながら、シルヴィの薄い桜色の唇が僅かに笑みを象った。


 ――自分達は、特別なのだ。

 シルヴィは圧倒的な強さを誇ってみせた、自分と同じ境遇にいる二人の姿を見つめて改めて実感する。

 かつての魔王を斃した初代勇者の力と同等とさえ言われる、ただただ血脈を受け継いできただけのとは違う、本物。その力はまさしく一騎当千であり、誰にも止める事などできない。








 ――――そう、思っていた。








「――懐かしい気配がするかと思えば……、どうやらイレイア様に相応しい玩具がいるようですね」


 それは凛とした、涼やかな声。

 戦場に不釣合い過ぎる、あまりにも穏やかな声色だとも、普段のシルヴィならばそんな事さえ考えていただろう。


 そう、真後ろから唐突に告げられさえしなければ。


 慌てて振り返り、距離を取ったシルヴィは――眼の前に佇む美しい女性を前に、みるみる目を見開いていく。


「――……その姿……ッ! まさか、あなたは……ッ!」


「あぁ、二番煎じは結構です。私はアルマ。吸血鬼の真祖であるイレイア様に仕える、筆頭侍従長です。どうにも人族には、私が吸血鬼の真祖であると情報が伝わっていらっしゃるようですが……それは限りなく不愉快な勘違いです。お間違いなきよう」


 藍色の神を団子状に結い、お仕着せに身を包んだ美麗の吸血鬼――アルマ。

 人族に伝わる吸血鬼の真祖と呼ばれた、かつて人族に恐れられた大いなる災厄の一角が今、『本物の勇者』を前に一切の気負いや緊張も、敵意さえも見せようともせずにぴしりと背を延ばして佇んでいた。

 もっとも、アルマが口にしたのはアディストリア大陸内で一度耳にした、己に関する間違った情報を訂正するという、どうにも場違いな一言。決して敵対心を抱いているようにさえ見えなかった。




 それでも、シルヴィには動く事さえできなかった。

 シルヴィだけではない。

 唐突に姿を現したアルマに気が付いたノエルは目を見開きながらかたかたと身体を震わせ、ロザリーは握り締めた愛槍が頼りなくさえ思える程に、思わず身を縮こまらせてさえいた。




 リッツバード王国の兵士も。

 エルセラバルドの兵士達でさえもアルマ――ではない。




 その奥から悠然と歩んでくる、銀色の長い髪を揺らしている、アルマに負けずとも劣らない美貌を有した女を見つめて――ただただ恐怖していた。





「――面白そうなの、みーつけた」





 シルヴィらにとってみれば、は凶悪なまでの魔力を身に宿し、周囲の全てを呑み込もうとする闇そのもののように見えた事だろう。


 にたりと笑みを浮かべる、闇の中心は――続けた。


「あなた達なら、私の退屈を埋めてくれるでしょう?」


「…………な、にもの、です……」


「あら、自己紹介がまだだったかしら。私はアルマの主、イレイア・ヴラド・アーゼアス。もっとも――」


 ――これから死ぬあなた達には、名前を知ったところで意味なんてあるのかは分からないけれど。


 続けられた言葉は、ストラング砦いるカーマインにも。

 そして、エルセラバルド帝国軍を率いていた、ブルーノにさえも、鮮明に聞こえてさえいた。



 今ここに、魔族の中でも最強の一角を担うゾルディアに自らと互角と言わしめた、『陽を跨ぐ者デイウォーカー』――イレイア・ヴラド・アーゼアスが姿を現したのであった。


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