2-5 黎明期の魔大陸

 魔国アンラ・マンユ。

 魔族によって築かれたこの国は今、黎明期を迎えつつある。


 本来魔族は衣服や工芸品には興味も持たず、それこそ種族毎に生活の水準といったものは大きく異なっていたが、魔都アンラ・マンユに集まる事で他種族に対する憧憬や自分達にとっても便利なもの、なくとも困らずともあれば便利になる道具など、初めて外の文化を徐々に受け入れ始めようとしているのだ。


 火付け役となったのは、やはり九尾の妖狐であるランが率いた〈獣人族セリアン〉もどきこと獣魔族達だ。


 人族と共に暮らした経験がある獣魔族の者達は、商業と工業に関する知識と利便性、文化的な暮らしに対する憧れにも似た思いがあり、ランの下でもともと町とまではいかずとも、魔大陸内では比較的文化的な暮らしを行っていたといった経緯もある。


 築き上げてきた衣服や工芸品や、ガダ率いる『鬼』の一族が得意とする鍛冶や農耕なども徐々に浸透し、町としての暮らしが成り立ちつつある。

 店を開き、貨幣の発行までは至っていないがそれぞれに狩った獲物などによる物々交換が始まり、町の治安はベルファータが率いる蜘蛛魔族と夢魔族が警邏隊を組織し、秩序もまた守られている。


 そしてもう一つ。

 悪魔公爵ことゾルディアの指揮の下、魔王軍は着々と魔族の人数を増やし始め、アゼルの指示によって人族大陸へと攻め込むべく準備を進めていた。


「――現在の魔王軍じゃ、まだまだ実戦で使える程の練度があるとは思えないけどねぇ」


 魔都アンラ・マンユより離れた平原で、訓練――とは言えその見た目は戦争のそれのような勢いと殺気でぶつかり合っているのだが――を行っている魔族の軍勢を見下ろした、小高い丘の上でランがぼやいた。


「それは重々承知している。今回は混成軍よりも種族毎にまとまった小隊同士を組み合わせ、大隊を作る形になるであろう」


「ま、それが無難だろうさね」


 ゾルディアとてランが言わんとしている事ぐらい承知の上だ。


 未だ魔王軍は完成したとは言い難く、種族間での揉め事も含めればまだまだ荒削りだ。骨組みそのものでさえ未だ不安定な状態である以上、無理に混成軍を作り上げるよりも、種族毎にある程度は纏まりつつ組み合わせていくのが妥当であると判断している。


「人族大陸へと攻め込む準備を進める事で、魔王軍としての士気を高めてはいるものの、いきなり他種族との信頼関係を培える程、種族間にある優劣関係は溝の浅い問題ではない。此度の戦で、そうした意識を少しでも拭えれば良い」


「ま、実際今回は演習も兼ねた戦争ってトコさね。なんせ魔王軍の栄えある初任務の標的は、アディストリア大陸じゃないってんだからね」


 そう、アゼルが指示した魔王軍の進軍目標は、現在イレイアが進んでいるアディストリア大陸ではなく、魔大陸から南南西に位置する島国であった。

 そこにある国――オルベク王国は『人族同盟』には加盟しているものの、海に囲まれた島国では救援はそう簡単ではなく、事実今回の遠征の目的はあくまでも演習のような代物だ。


 アディストリア大陸は、『人族同盟』にとっても主要となる大陸だ。

 今の魔王軍の完成度で相手にするぐらいならば、いっそ魔王軍としてではなく魔族として単純に攻め、多大な犠牲を払い、それこそ個の力を十全に活かして一斉攻撃でもしなければならないというのが実情だ。


 そこでアゼルが選んだ最初の標的は、オルベク王国となったのである。


 海洋国家であるオルベク王国は小国であり、魔大陸からもそう離れてはいない。

 魔王軍の門出には打ってつけの標的であった。


「アディストリア大陸では今、イレイアが動いている。アレは下手に指示をしても聞かないだろう。最悪の場合、イレイアとぶつかり合ってしまう事も考えられる」


「ぶつかる、ねぇ。『陽を跨ぐ者デイウォーカー』イレイアってのは、どんな性格してるんだい? アタシは特に面識がないからなんとも言えないけど、聞けば先代陛下の頃もそこまで戦おうとしなかったって話じゃないか」


 イレイア・ヴラド・アーゼアスの名こそ耳にした事はある。その実力は先代魔王ジヴォーグが生きていた頃にも一目置かれていた事は知られており、しかし活躍を目の当たりにした者は、現在を生きる魔族の中でも数はかなり少ない。


 当時を生きていたランが訊ねた内容は至極当然であったが、ゾルディアはランの問いかけに渋面を浮かべて嘆息した。


「――彼奴はほぼ我と同等の力を持っているであろう」


「そりゃタチの悪い冗談――って訳じゃあなさそうだねぇ」


 一笑に付すつもりであったランだが、しかしゾルディアの表情は硬く、真剣そのものであった。


 アゼルが姿を見せるまで、紛れもなく魔族内最強の名を有していた悪魔ゾルディア。その力の片鱗は、先日の魔王軍設立時に〈黒竜〉のエイヴァンに見せつけたばかりであり、魔王アゼルの右腕に相応しいとさえランは思ったものだ。


 そのゾルディアとほぼ同等の力と言われ、ランは俄には信じ難いとでも言いたげに、しかし真剣な面持ちで続けた。


「同等ってのはどういう意味だい?」


「遠距離からの魔法は強力な障壁によって防がれ、下手に接近すれば見目の麗しさとは程遠い膂力に引き千切られ、己の血の一滴すら武器にする。返り血の一滴でも浴びようものなら、我とて彼奴の力からは逃れられぬ。付け加えるのなら、彼奴の腹心である上級眷属の筆頭アルマは、単体での戦闘力だけでも〈黒竜〉のヴェクターとほぼ同等か、冷静かつ頭がキレるという点も踏まえればヴェクターでは届かぬであろうな」


「……シャレにならないじゃないか」


 純粋な戦闘力だけでもゾルディアに匹敵し、上級眷属は〈黒竜〉にも及ぶ。そんな存在は、魔大陸に棲まう魔族の中でも他にはいない。


 よもやそこまでの力がありながらこの三〇〇年沈黙を貫いてきたのは、偏に『不死王ノーライフ・キング』ギ・ジグが言う通り、イレイアが享楽的な性格をしているおかげだ。

 詰まるところ、魔大陸内の掌握などには一切興味を持とうともせず、己の館の中で怠惰に日々を過ごしていたからに外ならない。


 まさか『陽を跨ぐ者デイウォーカー』がそこまでの実力であるとは知らなかったと言いたげに顔を引き攣らせるランを横目でちらりと見て、ゾルディアはふっと微笑した。


「そんなイレイア嬢が、陛下に恋慕しているのだぞ? うかうかしていては、陛下を取られてしまうのではないか?」


「――んなっ!? い、いきなり何言ってんのさ、まったくっ!」


 顔を紅潮させながら視線を逸らし、九尾はそわそわと動き回る。

 一見すれば、さながら遊郭の支配者のようにも見える妖狐ランとは思えないような、さながら初心な生娘を思わせるような反応を前にゾルディアは苦笑を浮かべた。


「獣魔を率い、弱者を抱えながらも我らと対等に渡り合ってきた貴様らしからぬ反応だな。――いや、だからこそ、と言うべきなのであろうな」


 獣魔族の多くは〈獣人族セリアン〉もどきと揶揄され、淘汰され、追われてきた者達だ。

 人族には敵視され、魔族からは弱者と蔑まれ、それでもこの魔大陸で生きてこれたのは、妖狐であるランと彼女を支える氏族の者達の協力があったからこそだ。


 常に肩肘を張り続け、弱者と罵られる獣魔族を庇護下に置き、周囲からの羨望と憧憬をその華奢な身体で受け止めつつ、他の魔族からの重圧に晒され続け、それでも前を見据えて先頭に立ち、歩んできた――それが妖狐ランという女である。


 他者に弱みを見せる事は赦されず、寄り掛かる真似などできるはずもなく、己を委ねられるはずもない。孤独で孤高な生き方を選び続けてきたからこそ、恋愛などする余裕すら持てなかった。


 そんなランだからこそ魔王城には逸早く駆けつけ、新たな魔王――アゼルを見極めようと考えたのだ。


 結果――ランは、アゼルに惹かれた。


 己が在るべき姿として常に目標としてきた、絶対的な力を持ったカリスマ。

 自分では獣魔族以外の者達を統べる事など到底できるはずもなく、まして夢魔族を傅かせるという真の魔王の在り方を、まるで自然体でやってみせるその姿に、魅せられ惹かれてしまったのだ。


 自分では辿り着けない場所にいるアゼルが、魔王として君臨した。ただそれだけで、今まで自分の中では常に生み出されていた焦燥感が消え去り、張り詰めながらも守り続けてきた幾星霜の日々が、救われたような気さえした。


 ――そうしたランの心情を、似たような境遇にあったゾルディアは理解していた。


 魔王亡き魔大陸、主なき魔族に憂いていたゾルディアは、決して自分から新たな魔王として魔族を統率するつもりなどなかった。それは心のどこかで、魔族を率いるべき存在は、ただの魔族である己の分水嶺を越えているからだと感じていたからだ。


 ――いつかまた、ジヴォーグと同じような魔王が生まれる。その時までは、せめてこの魔大陸に攻めてくるやもしれぬ人族から、この地を守る。


 静観を貫き、ただ静かに時を待ち続けていたゾルディアもまた、ランと同じくアゼルの登場によって救われたのだ。


「……獣魔の連中を背負い始めた頃は、周りに頼られてるって事に酔ってたのさ。それが時には重くも感じて……だから、頼り過ぎっちまうのは気が引ける。複雑な乙女心ってヤツかねぇ」


 ランは達観したような物言いで口にするものの、頬を紅潮させてぼやく姿は確かに恋する乙女のそれであった。珍しく素直に気持ちを口にするのは、ランもまたゾルディアが似たような境遇にあったのだろうと心の何処かで理解していたからである。


「陛下は頼られても頼らずとも、己の道を歩み続けるであろうよ」


「分かっちゃいるさ」


 お節介であろうと知りつつも告げるゾルディアの優しい心遣いに、ランは照れ隠しにそっぽを向きながらも柔らかく答えたのであった。








 ――――その一方、変革を迎えた魔都を見下ろす魔王城。


 その一室で今、アゼルは苛立ちを隠そうともせずに眉間に皺を寄せて玉座に腰掛けていた。


「陛下、御気分が優れないのですか?」


「……いや、そうではない。すまない、少しばかり気がかりな事があってな」


 ネフェリアに訊ねられ、アゼルは一つ嘆息してから答えた。


「気がかり、ですか。そういえば先日も、吸血女王イレイアが侵攻したと聞いた際も、苛立っているように見受けられましたが……。陛下にとって、今回のイレイアの独断専行はあまり歓迎するべきものではないのですか?」


「イレイアの件……? あぁ、それに対しては特に思う所はないな」


「そ、そうなのですか? 私はてっきり……」


 ネフェリアはイレイアの勝手な行動に対して、アゼルの意に反しているのではないかと考えていたのだが、そうではない。アゼルのこの数日の苛立ちは、を成就させるにはどうするべきか、その緒が掴めていなかったせいでもあるのだが、その心を知る者はアゼル以外にはいない。


 アゼルもまたそれを打ち明けるつもりはなかったのか、改めてネフェリアとの会話に意識を向けた。


「現在のアディストリア大陸の状況はどうなっている?」


「はっ。現在は吸血女王イレイアによる南部からの混乱が広がっているようです。さらに北部ではリッツバード王国に対しエルセラバルド帝国が進撃を開始。これに乗じれば、北部の戦力を壊滅できるかと」


「……この状況で戦争を?」


「はい。潜伏させていた夢魔から上がってきた報告によれば、戦争開始前、アールスハイドの枢機卿の一人がエルセラバルドで目撃されたようです」


「アールスハイドと言えば、勇者を擁しているという光神教を国教にしている宗教国家だったか。となると、戦争はアールスハイドの介入が関係してるのか?」


 ネフェリアを通してこの世界の国家や光神教の在り方は学んでいたが、アゼルはまだ知識としては理解しているが、全容を理解している訳ではない。

 本来ならば戦争はもちろん、人族同士の争いには決して関与しないアールスハイド神聖国の在り方まではアゼルも知らなかった。


 そうした情報をネフェリアから与えられ、アゼルは口元に手を当てた。


「――という事は、エルセラバルドをけしかけたのはアールスハイドではない、という事か?」


「恐らくは、戦争を止めようとしたのではないでしょうか。あの帝国を束ねる女帝イザベラ・エル・エルセラバルドは『鮮血女帝』――《レッド・エンプレス》と呼ばれる女。何を考えているのか分かったものではありません」


「『鮮血女帝』か。それはまた、ずいぶんと物騒な呼び名だな」


「経歴が経歴ですから。エルセラバルド帝国の先帝が身罷り、当時齢十三にして戴冠。それから十五年程で周辺の小国を次々と呑み込み、今ではリッツバード王国と正面から事を構えられる程の強国へと導いたようですが、血塗られた道を率先して歩むようなやり口、苛烈な帝国内の粛清などから畏れられ、そう呼ばれているようです」


「齢十三で即位か。何者かの傀儡と化しているのではないか?」


「その可能性も捨てきれず調査してきましたが、粛清によって当時の貴族の多くは首を落とされています。今では呑み込まれた国の元王族から元小国貴族、果ては元平民などが重用されており、その可能性はほぼ有り得ないと考えても良いかと」


「……なるほど」


 ――あまりに大きすぎる称号を背負うのであれば、修羅で在れ。

 自らがそう在るべく駆け出したばかりの自分とは違う。たかだか十三で帝国を背負い、苛烈と周囲から畏れられようとも歩み続けてきた女帝。十五年もの歳月を歩み続けたイザベラという存在は、アゼルにとっては随分と興味深い存在でもあった。


 アゼルにしては珍しく興味を抱いたかのような反応を示した事に、ネフェリアはぴくりと柳眉を歪めた。


「陛下、『鮮血女帝』に興味が?」


「ないと言えば嘘にはなる」


 心のどこかで、ネフェリアはアゼルがイザベラに興味を抱くやもしれないと考えていた。アゼルがかつてアレンへと告げた己の在り方と、イザベラの経歴はどこか似通った部分があり、そこに惹かれてしまうのではないか、と。


 ネフェリアもイザベラの容貌については知っている。

 色香を振り撒く熟れた果実のような肉体に長い赤髪。容姿には自信あるネフェリアだが、それ以上にイザベラは情欲を駆り立てるような淫靡さすら、女性であるネフェリアにさえそれを思わせる程であった。


「――が、少々時期が悪いな。今の状況で更に新たな火種を放り込むとは、俺を挑発しているつもり、か?」


「……挑発、でしょうか?」


「そもそも俺を脅威として見ておらず、「自分達が脅威だと認識できる程度まで暴れてみろ」といった挑発だ。アディストリア大陸の北部であるという点もあり、これがある意味人族らしく平和ボケしているという意味では、妥当な答えかもしれん」


 ――しかし、『鮮血女帝』とまで呼ばれている者が、そのような浅慮な真似をするとは思えない。


 アゼルはそう付け加えると、考え込むネフェリアへと向けて続けた。


「恐らく『鮮血女帝』とやらは、この機にを表舞台へ引き上げるつもりなのだろう」


「何か、と言いますと?」


「有り得る可能性の中でも最も大きな狙いと言えば、俺――つまりは魔王と魔族だろう。混乱に乗じて北部を一気に攻め込む隙を見せ、俺達を一網打尽にするといった策を考えている可能性もある。そういう意味で挑発と言ったんだ」


「では、戦争自体が偽りである、と?」


「可能性は否定できないが、それは静観してみれば分かる事だ。そもそも、これが本当に俺に対する挑発と決まった訳ではない。俺以外のを表舞台に引きずり出すため、という可能性も棄てきれていない」


 同じ穴の狢だからこそ、アゼルにはイザベラがただの狂気や自分達を軽んじて戦争を仕掛けるような事はないと確信していた。

 戦争という、本来ならばそれそのものが大きな出来事であるにも関わらず、更にその先に何かを見出しているような、そんな気がしてならないのだ。


「ネフェリア。アールスハイド神聖国は勇者を擁していると言っていたが、具体的にはどういう意味だ? それほどの大国なのか?」


「いえ、アールスハイド神聖国は国の面積などで言えば小国でしょう。しかし、勇者の血脈に連なる者はみな、アールスハイド神聖国の庇護下に収まっております。元々は勇者と呼ばれる常人ならざる力を持つ者を、戦争や国の戦力として使う事に異を唱えていた神聖国側が勇者を保護すると二百年以上前に世界へと宣言したのがきっかけだったと聞き及んでおります」


「二百年以上前ということは、先代魔王ジヴォーグが斃れた後、か。なのにわざわざ勇者を保護したのか?」


「はい。確かに勇者は我々魔族に特化した加護を持った存在で、その力はあくまでも魔族にしか通用しません。とは言え、剣術などは天賦の才能を持つ者が多く、身体能力も比較的に高い者達ですから、利用価値はあったのでしょう」


「……あの程度で、か。どうにもそこまでの力があるようには思えなかったが」


 アゼルが実際に対峙してみた感想としては、敏捷さは夢魔族に劣り、膂力はヴェクターに劣っていると言った印象でしかない。

 そもそもアゼルはまともにアレンと戦いらしい戦いに発展する事もなく、まさに鎧袖一触といった一方的な戦いで勝利を手にしている以上、剣術に天賦の才能があったかどうかさえ定かではない。


「……さすがに比較対象が陛下では、いくら勇者が相手とは同情を禁じ得ないというものですが……」


 ネフェリアとしても、さすがにアゼルと勇者を比べるとなれば勇者の方が可哀想であると言うのが本音であった。


 アレンはバロムと加護の力の恩恵があったとは言え渡り合ってみせた。

 そう考えれば、アレンもまた人族の中では優秀な剣士であり、同時に魔族にとっては脅威である事は間違いない。


 ネフェリアの冷静かつ常識的な言葉はアゼルには届いていなかったようで、アゼルは「ふむ」と短く告げると、虚空を見つめながら思考を巡らせた。


「……ネフェリア、アールスハイド神聖国の監視を強化するよう、レナンに伝えてくれないか?」


「アールスハイドを、ですか?」


「あぁ。ネフェリアが言う通り魔導帝国エルセラバルドに接触したと言うのなら、この戦いをアールスハイドがただ静観するだけとは思えないからな。もしも『鮮血女帝』とやらが俺ではなく、他の何かを引きずり出そうとしているのなら、俺にはそれがアールスハイドにあるように思えてならない」


「畏まりました」


 もしもアールスハイドが動き出したその時は、自分もまた動く事になるだろう。

 そんな予感を胸にしながら、アゼルは静かに拳を握り締めた。






 ――――その予感は、遠からず的中しようとしていた。




 

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