13.人は蝙蝠になれない - 楽譜の色
実は、楽譜を読むのは苦手だったの。楽譜にも色がついてしまうから。音符の上下位置によって色が違ってしまうのよ。しかも聞こえるドレミの色とずれてる部分があって。だから吹奏楽器じゃなく打楽器に惹かれたんだと思う。
楽譜に色が見えちゃう体質、ドラムセット用の楽譜では逆に重宝したわね。
ドラムセット用の楽譜は見たことある?
普通の楽譜の、ラの位置にバスドラム、ミの位置にスネアドラム、シの位置にハイハットシンバル、みたいに書いてあるのよ。普通の楽譜みたいに音符を上下に追わなくていいの。真横にスライドしながらリズムを把握すればいいのよ。だから色が付いているのは、どの楽器に対する指示か間違えにくくて良かったわ。
鉄琴や木琴のときは、同じ曲の演奏テープを見つけてきて、耳コピーしたわね。ついでに他人のパートまでコピーして鳴らして遊んじゃうからクソ疎まれたけど、恨みつらみは置いておこう。
色といえば、音楽に色がないとなると、あなたは音楽の何を楽しんでいるの?
音か。そっか。まあ、それは、そうよねぇ……。なんて言おうか困るよね……。
お互い首を捻りあうしかないわね。互いの世界をおぼろげに想像することはできても、互いになることはできないもんね。知識として知ることはできても、それを体感することはできないものね。超音波で距離を測っている蝙蝠や、舌で匂いを感知している蛇にはどう頑張ってもなれないみたいに、ね。
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