7.防衛機制 - 見づらい色がある
駐車場スカスカでしょ。クリエイターズハウスの利用者しか使わないからね。
さっきも説明したけど、こっちの住宅街にはもうほとんど人が住んでいないわ。騒音気にせずバーベキューとか宴会ができて気楽よ。
うん、そう。けっこう宴会とかするよ。私も頻繁に参加してる。
意外? ご明察。私は大学の宴会にはほとんど出てないわ。
大学って均質すぎるのよね。学類もサークルも、互いが似ている前提で話が進んでやりづらかった。勉強は面倒だとか、先生は敵だとか、そういう前提を受け入れないと会話が上手くかみ合わない。どんなに私の主義主張と反していても、マジョリティに頷かなきゃ話が進まない。だから面倒で行きたくなかったの。
適当に合わせときゃいいじゃんって? そうなんだけどね。感覚が他人と違うのを気にするあまり、かえって強情になっちゃってるんだろうね。自分が自分であるというプライドを守ろうと。情けない話だわ。
でも、ここの宴会は楽しいわ。ここには均質じゃないという前提がある。専門の技能も違う。着ている服も仕事へのスタンスも違う。性格も年齢も違う。違うことが当然。みんな互いが違う前提で振る舞うから。
すごく、楽よ。
運転あんまり上手じゃないからシートベルトはきちんとね。
アーレンレンズ――サングラスみたいなこれね――のおかげで運転もだいぶ落ち着いたけど。
私、裸眼だと青い車を認識できないのよ。変な話でしょ? もちろん目の前を走っていれば分かるのだけれど。何て言えばいいかしら。他の青、例えば青い数字や青い気配がある物との、重要度の差をつけられてないのかな。見落としたり近づきすぎたり、何度もヒヤリハットがあったわ。
一度だけ事故を起こしたのだけれど、それも青い車が相手だった。
その事故がきっかけだったかな。私の見ている世界が普通と違うこと、そして……このままでは危険なことを、受け入れたのは。
医療の道を諦めたのもその直後ね。
つらかったと思う。強めの向精神薬が必要になったから。その時期のことはあまり思い出したくないわ。
てんかんの人が車を扱う職業に就いて大事故起こすの、何度かニュースになったじゃない? ああなってしまう気持ち分からなくはないのよね。無意識に言い聞かせてしまうのよ。大丈夫なはず、大丈夫なはず、自分は普通なはずだ、って。
でも同情はしないわ。本当に危ないことだから。
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