第284話 じゃあ、お父さんとデートしてくれるよな!?

≪なるほど…それでうちに…リリィさんでしたね?いいですよ、泊まって頂いて≫

≪あ、ありがとうございます!ショウさん!≫

「そして、西条さん…だったね?親御さんには連絡はしているのかな?」

「は、はい!涼羽ちゃんのお家だったらいいよって言ってくれました!」

「そうか、それなら君も泊まっていきなさい」

「あ、ありがとうございます!涼羽ちゃんのお父さん!」


リリィにとって、日本に来てから初めてとなる、仲のいい友達との食事。

それも、涼羽が作ってくれたとても美味しくて、お腹に優しい食事をたくさん食べさせてもらえて、幸せな気持ちでいっぱいになっていた。


そして、この日同じように涼羽の家で食事をしていた美鈴と沙羅、そして涼羽の妹の羽月と一緒に夕食の後片付けを楽しく済ませ…

一人ずつ、涼羽がいつの間にか準備してくれていたお風呂に入ってその日の汚れと疲れを落とし…

後はひたすら、全員が涼羽にべったりと抱き着いて、涼羽を可愛がって幸せな思いに浸っていた。


ちょうどそこに、高宮家の大黒柱であり、涼羽と羽月の父親である翔羽が、長い休日出勤となるこの日の仕事を終えて、帰ってきたのだ。


いつもなら、最愛の息子と娘である涼羽と羽月だけのはずのこの家に…

もう何度もこの家に来ている美鈴、そして涼羽と美鈴のクラスメイトだが、この日初めて高宮家に訪れた沙羅…

加えて、一見涼羽達とは何のつながりもなさそうな、モデルばりの美人な外国人女性がリビングで、涼羽にべったりと抱き着いて甘えていたその光景には、さすがに翔羽も驚きを隠せなかった。


が、美鈴は遊びの帰りにこっちまで来て、いつものようにお泊りしていくのだろうと言うことはすぐに分かり…

沙羅の方はこの日初めて顔を会わせることとなったのだが、いくら極上の童顔美少女

な容姿であるとは言え、性別は男である涼羽にべったりと抱き着いているのを見て、それだけで涼羽のことが好きで好きでたまらないのだろうと思い…

同じようにこの日初めて会ったリリィも、もうすでに涼羽に甘えるようにべったりとしているのを見て、沙羅同様リリィも涼羽のことが好きで好きでたまらないのが伺えて…

さすがは最愛の妻、水月にそっくりな我が息子と内心で鼻高々になっていた。


そして、リリィが今、急な単身赴任でここ最近日本に来日し、元々が非常に寂しがりやなのに一人暮らしで職場も外も言葉が通じず、ホームシックになっていたところに涼羽と出会い、涼羽が母国語である英語で会話してくれて、羽月、美鈴、沙羅との仲も取り持ってくれたことを聞かされ…

翔羽は長い単身赴任の間に培っていた英語力を活かしてリリィとそんなやりとりをしつつ、ここに泊まらせてほしい、と言うリリィの懇願を快く、二つ返事で了承したのだ。


同じように、すでに涼羽と恋人のようなスキンシップを当たり前のようにとっている沙羅に対しても、涼羽の性格を考えれば懸念するようなことはないだろうと、あっさりとお泊りの許可を出したのだ。


ちなみに、涼羽の父である翔羽を一目見た沙羅とリリィは、その詐欺とも言える程の若作りな容姿に当然のように、翔羽を涼羽と羽月の年の離れた兄だと思ってしまったのだが…

当の本人である翔羽と、涼羽と羽月の『お父さん』と言う声により、その認識を正されることとなり…




≪ウ、ウソでしょ!?ほ、ほんとにリョウちゃんとハヅキちゃんのお父さんなの!?ど、どう見てもあたしと同年代くらいにしか見えないじゃない!!≫

「りょ、涼羽ちゃんのお父さん…美鈴がすっごく若くてイケメンって言ってたけど…これで四十超えてるなんて…詐欺だよお…こんなの、お兄さんにしか見えないよお…」




と、盛大に驚くこととなってしまう。


特にリリィは外国人と言うこともあり、自分達と比べて若く見える日本人とは言え、翔羽の容姿はまさに詐欺だと言えるもの。

リリィから見れば、まだ二十代前半である自分と同年代にしか見えない程に若々しい容姿なのに、実際の年齢は四十四だと聞かされ、まさに東洋の神秘だと思わされてしまっていた。


沙羅の方も、自分の父親が翔羽よりも三つも年下なのに、哀愁漂うくたびれたおじさんな容姿と言うことも手伝って、かつて美鈴が言っていた『TVドラマの主役で出てくるようなイケメンさん』の言葉そのものだと思わされてしまう。


≪それにしてもショウさん!!≫

≪?何か?≫

≪その見た目で四十四なんて、いくらなんでも凄すぎます!!母国のTVドラマに出てくるようなトップのアクターと比べても見劣りしないくらい、ハンサムでスタイルもよくて…アクターはされないんですか?≫

≪い、いやいや…俺はもうただのおじさんですし、演技なんてとてもとても…≫

≪な、なんてもったいない!!ショウさんなら、TVに映るだけで多くの女の子が虜になっちゃうのに!!こんなハンサムで若々しいパパをいつでも見られるなんて…リョウちゃんとハヅキちゃんが羨ましいわ!!≫

≪ははは…俺は妻一筋ですし、その妻の忘れ形見である涼羽と羽月がいてくれれば、それでいいので…≫

≪!!こ、こんなイケメンが一途で子供大好きなんて…素敵すぎるわ!!≫


と、リリィはまるで日本の秘境を見たかのようなキラキラとした目をしながら、外国人特有のオーバーリアクションも交えつつ、ただただ翔羽のことを絶賛し続けている。


「ほ、ほんとに涼羽ちゃんと羽月ちゃんの、お、お父さん…なんですか?」

「ん?そうだよ?」

「……ぜ、ぜ~ったい嘘!!嘘だよこんなの~!!」

「?な、何が?」

「だ、だってだって!!どう見たって『お兄さん』にしか見えないもん!!ウチのお父さんなんか、涼羽ちゃんのお父さんより三つも年下なのにすっごくおじさんしてるし!!涼羽ちゃんのお父さんの方がウチのお父さんよりずっと年下に見えちゃうもん!!」


もちろん、この日初めて翔羽を見る沙羅も、物凄い勢いで翔羽のことを大絶賛してしまう。


「は、はは……そ、そんなことは、ないんじゃないかなあ?……」

「あります!!TVに出てる俳優やアイドルでも、涼羽ちゃんのお父さん程若々しくてカッコいい人なんてそうそういないもん!!こ~んなイケメンなお父さんなんていたら、絶対デートとかしたくなっちゃうもん!!」

「!!そ、そうかな?」

「そうです!!わたしのお父さんがこんなにもカッコよかったら、絶対デートしてっておねだりしちゃいます!!」


そして、沙羅のそんな言葉に心を揺さぶられたのか…

いきなり、羽月とリリィにめちゃくちゃに甘えられている涼羽の方を向いて、せっかくの人並み以上に整った若々しいイケメンフェイスをゆるゆるにしながら声をかけていく。


「!!な、なあ…涼羽……」

「?なあに?お父さん?」

「も、もしお願いしたら…お、お父さんとデートとか、してくれるかな?」

「!!な、何言ってるのお父さん!?俺、男だよ?息子だよ?なんでそんなこと、俺に聞くの!?」

「そ、そうか…涼羽はお父さんのこと、嫌いなのか……」

「!!ち、違うよ!!そ、そんなことは……」

「ないのか?じゃあ、お父さんのこと、好きなのか?」

「!!うう……い、言わなきゃ、だめ?」

「お父さん…涼羽の口から聞きたいなあ~…」

「う…うう…す、好き、だよ?」

「そっかあ!!じゃあ、お父さんとデートしてくれるよな!?」

「!!な、なんでそうなるの!?だから俺男で、お父さんの息子だよ?」

「お父さんは涼羽とデートしたい!!涼羽がお母さんそっくりでめちゃくちゃ可愛いから、デートしたくなるんだ!!」

「!!だ、だからそんなこと言わないで!!」


最愛の妻、水月と瓜二つと言える程の美少女な容姿をしている長男、涼羽に翔羽はデートをおねだりしてしまう。


当然、自分が男で、翔羽の息子であることを強調し、全力でそれはおかしいと言わんばかりに拒否するのだが…

そんな涼羽の態度に、翔羽はまるで涼羽に嫌いだと言われたような気がして、しょんぼりとしてしまう。


そんな父が可哀そうに思えて、ついつい涼羽はその顔を恥じらいに染めながらも父の望む言葉を口にするのだが…

その言葉に、翔羽はまるでどんよりとした空が快晴になったかのようにぱあっとした喜びの表情を浮かべつつ、さらに涼羽とデートしたい、などとゴリ押ししてくる始末。


そんな父に、涼羽はもう恥ずかしくて恥ずかしくてたまらず…

その両手で自分の顔を覆ってしまう。


「えへへ…恥ずかしがってるお兄ちゃん、ほんとに可愛い♡」


その頬を真っ赤に染めて恥じらう兄、涼羽が可愛くて可愛くてたまらず…

羽月は涼羽によりぎゅうっと抱き着いて、その頬を涼羽の胸にすりすりとしながら甘えてしまう。


「でも、お兄ちゃんとデートするのはこのわたしだもん♡」

「!!は、羽月まで…」

「お兄ちゃん♡お兄ちゃんが、妹のわたしとデートするなんて、当たり前のことなんだからね?だから、嫌なんて、言わないよね?」

「そ、そんなの…」

「お兄ちゃん、だあい好き♡お兄ちゃんがデートしてくれなきゃ、わたし悲しくなっちゃう♡」

「だ、だからそんなこと言わないで…」

「じゃあ、デートして?」

「!!~~~~~~~も、もお……」


兄の胸の中で甘えながら、兄にデートをおねだりしてくる羽月。

ただでさえ、父、翔羽にデートをおねだりされて恥ずかしくて恥ずかしくてたまらないところに、妹である羽月にまでデートをおねだりされて、涼羽はますます恥ずかしくなってしまっている。


「あ!ずるいぞ羽月!涼羽!もちろんお父さんとも、デートしてくれるよな?」

「!!だ、だからそんなこと言わないでってば…」

「こんなにも可愛くて可愛くてたまらない涼羽がデートしてくれたら、お父さんめちゃくちゃ幸せになれるんだ!」

「!!~~~~~~~は、恥ずかしすぎるよお……」


いつものように羽月が涼羽を独り占めしようとしているところに、翔羽が割り込んでくる。

羽月ばかり涼羽を可愛がって、涼羽にべったりしているのが羨ましくて、ついつい翔羽も欲望丸出しの発言が飛び出してしまう。


そんな翔羽の発言に、涼羽はますますその羞恥心を刺激され…

その極上の童顔な美少女顔を両手で覆いながら、いやいやをするように俯いてしまう。


「…ねえ、美鈴」

「?どうしたの?沙羅?」

「涼羽ちゃんのお父さんって、いつもこんな感じなの?」

「うん!いつもこんな感じで、涼羽ちゃんに大好き大好きってべったりしてるの」

「…わたし、涼羽ちゃんすっごく羨ましい」

「え?なんで?」

「だって、こんな素敵なお父さんにこんなに愛されてるんでしょ?わたしだったらもう、絶対わたしの方からべったりして大好きってしちゃうもん」

「それは私も分かる~」

「それに、お父さんにこんなに愛されて恥ずかしがってる涼羽ちゃん、食べちゃいたくなるくらい可愛くて…ほんとに涼羽ちゃん可愛すぎ♡」

「でしょ?このお家に来たら、いっつもこんなやりとり見せられて…私いっつも涼羽ちゃんが可愛すぎてたまんなくなっちゃうもん♡」


そんな、涼羽と翔羽と羽月のやりとりをそばで見ている沙羅と美鈴は、とても幸せそうな表情を浮かべて、涼羽を可愛がりたくてたまらなくなっている。


≪はあ…♡このファミリー、なんて可愛くて素敵なのかしら…♡ショウパパもカッコよくて可愛いし、リョウちゃんとハヅキちゃんはめちゃくちゃ可愛いし…あたしも混ぜてほしいなあ…♡≫


そして、美鈴と沙羅よりもさらに近い位置で、涼羽、羽月、翔羽のやりとりを見ているリリィもとても幸せそうな、それでいて羨ましそうな表情を浮かべながら…

自分もこのやりとりに混ぜてほしいと、思ってしまうのであった。

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