第196話 お兄ちゃんは、わたしにず~~~~~~~~っと愛されないと、だめなんだからね?

「ただいま~」




この日の秋月保育園でのアルバイトを終え、自宅に帰ってきた涼羽。


声変わりしているとはとても思えない、ソプラノな可愛らしい声が、高宮家の玄関に鈴が鳴るかのように響き渡る。




「おかえりなさ~い!お兄ちゃん!」




そんな涼羽の声を、今か今かと待ち望んでいたことがすぐに分かるほどに、まさに飛び出してくるという表現が相応しいほどの勢いで、ぱたぱたと可愛らしい音を立てながら、羽月が最愛の兄を出迎えるために、玄関に姿を現してきた。


兄を出迎える羽月の声は、それはもう嬉しさと幸せさに満ち溢れたものであり、そして、そんな声にマッチするかのように、その幼げな美少女顔に嬉しさと幸せさに満ち溢れた笑顔が浮かんでいる。




「ただいま、羽月」




そんな妹の姿が可愛らしく思えたのか、涼羽の顔にも優しげな笑顔が浮かんでくる。


そして、靴を脱いで丁寧に揃えると、玄関から家の方へと入ってくる。




「えへへ♪ん~…」


「!ん、んんっ!…」




家の中に入ってきた兄、涼羽の身体に、羽月がべったりと抱きついてくる。


そして、そうするのが当然と言わんばかりに、その小さな身体をうんと伸ばして、兄である涼羽の唇を奪い去るかのように、自分の唇で覆ってしまう。




妹である羽月の、いきなりとも言えるそんな行為に、涼羽は驚きを隠せず、甲高い声をあげてしまう。


そして、羽月に押されているかのように、身体がどんどん後ろに下がってしまい、家の壁の方にその華奢で小さな背中を預ける形に、なってしまう。




「ん~♪んん~♪」


「んっ!んうっ!」




羽月は非常にご機嫌な様子で、涼羽の唇から自分の舌を割って入り込ませ、涼羽の口腔内を味わうかのように動き回らせる。


そして、その中にある兄の舌に自分の舌を絡めて、どこまでも果てしなく膨れ上がっていくその愛情をぶつけるかのように、激しく睦みあう。


実の妹である羽月に、執拗に自分の口の中を味わわれ、さらにはその舌に執拗に絡みつかれて、思う存分にその愛情をぶつけられて、その度に涼羽の身体がびくんびくんと震えてしまう。


妹である羽月に、まるで色事を何も知らない無垢な少女が、初めて異性にそんなことをされてしまうかのように愛されて、涼羽は恥じらいと戸惑いにその顔を染めてしまい、しかし抵抗らしい抵抗など何もできずに、されるがままとなってしまっている。


まるで、その首筋から背筋までつっとなぞられているかのようなそんな感覚に、次第に身体の力が抜けてしまい、その膝が自分の身体を支えきれずにがくがくと、小刻みに震えてしまっている。




そんな兄、涼羽の反応が本当に可愛らしくて、もっともっとそんな反応を見たくなってしまうのと、兄、涼羽と本当に一つになれているかのようなこの心地よい感覚をもっと感じたくて、羽月はさらにその舌の動きを激しくしてしまう。




「!んんっ!ん~~~~~~っ!」




妹の舌が、より激しく自分の口の中や舌を味わいながら絡み付いてくるのを感じて、涼羽はその自分では言いようのない感覚が怖くて、いやいやをするようにその身を捩じらせて、少しでもその感覚から逃げようとするのだが、もうその身体にはそんな抵抗をするだけの力も残されておらず、ただただ、その身体を震わせて、一秒でも早くこの得体の知れない感覚を与えてくる時間が終わることを、祈るしかない状態と、なってしまっている。




そんな兄、涼羽のことをもっともっと可愛がってあげたくなってしまい、兄の願いに反するかのように、さらに羽月は涼羽のことを味わおうとせんがごとく、よりべったりと抱きついて、執拗に兄のことを愛してあげるのだ。




涼羽が例の花嫁モデルをして、その理想的な花嫁の姿を全国的に展開されるようになってから、羽月はことあるごとにこうやって兄の唇を奪い、その愛情をぶつけるがごとくにしてしまっている。


兄の本当に理想的な花嫁姿が、この世の老若男女問わず、多くの人間の心を奪ってしまっていることに、この自分にとってこの世で誰よりも愛していると自負できる兄が、誰かにとられてしまうという不安がどんどん大きくなってしまっているから。




だからこそ、もう息をするかのように当然の行為として、それまでずっと離れ離れだった恋人が、奇跡的に再会を果たして、もうその抑え切れない愛情をお互いにぶつけ合うかのような、そんな激しい愛情を兄、涼羽にとにかくぶつけていっている。




この兄は自分だけのお嫁さんだと、言い切ってしまっているだけに、そのお嫁さんである兄の唇を奪って、一つにつながりながら懸命に愛そうとしてしまっている。


自分がそんな風に愛する度に、初々しく可愛らしい反応を見せてくれる兄、涼羽のことがますます大好きになってしまい、ぶつけてもぶつけてもその愛情は膨れ上がっていく一方となってしまっているのだが。




「ん…ふう…」


「ん…はあ…はあ…」




羽月にとっては、まさにこの世の幸せが全て来ていると言えるほどに、幸せで心地よい時間。


涼羽にとっては、まるで身動き一つすら許されずに、自分の中の何かを奪われ続けていたかのような時間。




そんな、お互いにとってはまるで感じ方の違う数分が終わりを告げ、涼羽と羽月の唇を、羽月の名残惜しさがそうさせるかのように一筋のブリッジがつないでいる。


もはや立っていることもできず、膝を崩して腰を床に下ろしてしまい、息も絶え絶えな様子で、顔を恥じらいに染めている兄、涼羽の姿があまりにも可愛すぎて、羽月はそんな涼羽をぎゅうっと抱きしめ、幼い子供のような無邪気な笑顔でにこにことしながら、兄のことを独り占めできているという実感を堪能する。




「えへへ♪お兄ちゃん、ほんとに可愛い♪可愛すぎて可愛すぎて、もっともっと大好きになっちゃう♪」


「は…羽月…も、もうこんなこと…やめ…」


「や♪お兄ちゃんはわたしだけのお嫁さんなんだもん。だから、お兄ちゃんはわたしがめ~っちゃくちゃに愛してあげないと、だめなんだもん♪」


「そ、そんなこと…ない…」


「ううん、あるの♪だからお兄ちゃん?お兄ちゃんは、わたしにず~~~~~~~~っと愛されないと、だめなんだからね?分かった?」




もはや息をするのと同じくらい、当然としている行為である、兄、涼羽にべったりと抱きついて甘えるという行為。


もともとが幼さの色濃い容姿であり、兄の前では口調や性格まで本当に幼い感じになってしまう羽月。


まるで、涼羽がアルバイトに行っている秋月保育園で、涼羽が本当に幸せそうにお世話をしている園児達のように幼く、無邪気に兄を独り占めしている羽月のその姿。


それは、傍から見れば非常に微笑ましくもありながら、これでもかというほどの独占欲を感じさせるものとなっている。




「や…やだ…」




最近は、いつもこんな感じで妹である羽月に主導権を握られっぱなしで、まるで自分が溶けてなくなってしまいそうなほどの恥ずかしさを常に感じさせられていることもあり、妹の愛する宣言に対して、どうしてもいやいやをするかのような、儚い抵抗の言葉を発してしまう涼羽。




「もお!お兄ちゃんったら、妹のわたしがこんなにもお兄ちゃんのことが大好きで大好きでたまらないのに、そんないけずなこと言うなんて!」




当然、涼羽のそんな抵抗の言葉は、羽月が望んでいるものではなく、むしろ羽月のお兄ちゃん大好きな心を余計に刺激してしまうものと、なってしまっている。


どれだけ妹である自分が、兄である涼羽のことを愛しているのかを、これでもかと言うほどに言葉でも、行動でもぶつけているのに、それを袖にするかのようなことを言う兄が本当にいけずに思えて、ムキになって玄関をあがったところの壁に背を預けてくったりとしている涼羽を、床の方に押し倒してしまう。




「は…羽月?…」


「そんないけずで、わからずやなお兄ちゃんなんか、もっとも~~~~~~~っと愛してあげるんだから!!」


「!や…やめて…」


「や!お兄ちゃんのいけず!ん…」


「!んっ!んうっ!…」




いきなり押し倒されて、何が何だか分からないといった感じの涼羽の上に、覆いかぶさるかのように乗っかかってくる羽月。


涼羽の、自分の兄に対するどうしようもないほどの愛を拒否されるかのような言葉に抵抗するかのように、またしても涼羽の唇を、自らの唇で奪ってしまう。




兄を押し倒して、その唇と、その口腔内を味わい、兄と本当に一つになれたかのような感覚を思う存分に堪能していく羽月。


妹に押し倒されて、その唇を奪われ、その奥まで味わわれて、まるで自分の恥ずかしいところを容赦なく見つめられているかのような、顔から火が出てしまいそうなほどの恥ずかしさを感じてしまうが、それでも抵抗らしい抵抗もできずに、妹にされるがままとなっている涼羽。




完全に男女逆となってしまっているそのやりとりは、涼羽がそのあまりの恥ずかしさに涙目になっても許してもらえず、むしろそんな兄を見て余計に羽月がそのお兄ちゃん大好きな思いに火をつけられて、一回目よりもさらに長い時間、続けられることとなってしまうので、あった。








――――








「えへへ~♪お兄ちゃん♪」


「あ~…涼羽~」




さんざん、羽月が涼羽を押し倒してめっちゃくちゃに愛してあげて、ようやくといった感じで涼羽が解放された、ちょうどその時に父、翔羽が帰宅。


一日の仕事を終えて帰宅し、玄関を開けてすぐに最愛の娘が、最愛の息子の上に覆いかぶさるように乗っかかっている光景を見せられることとなり、その瞬間はさすがに驚きを隠せなかったものの、すぐにお兄ちゃん大好きで大好きでたまらない羽月が、いつものように涼羽にべったりと甘えていたのだと分かり、そんな二人が可愛すぎて、その頬をゆるゆるにしてしまっていた。




涼羽も羽月も、年齢よりも幼さの色濃い容姿で、しかも道を歩いていれば誰もがその目をそちらに向けてしまうと言い切れるほどの美少女な容姿なのだから、そんな二人がべったりとくっついていちゃいちゃしている様子など、本当に美少女同士の甘いやりとりにしか見えず、世の可愛いもの好き達からすれば、まさにこの世の幸せをそのまま形にしたかのような、本当に心を癒されるものとなっている。




実の妹である羽月に押し倒されて、めちゃくちゃに愛されていたところを、父である翔羽に見られて、もう消えてなくなってしまいそうなほどに恥ずかしがって、そそくさと着替えに二階へ上がっていったのだが、そんな涼羽も可愛すぎてたまらないという羽月と翔羽の声が聞こえてきて、涼羽はすでに恥ずかしさで真っ赤になっているその顔を、さらに恥ずかしさに染めてしまっていた。




そんな自分の顔を見られたくなくて、着替えを終えてから人目を忍ぶかのようにこそこそと一階に下りてきて、すぐさま自分の城とも言えるキッチンに飛び込んで、食事の準備を始めたのだ。


もちろん、そんな涼羽の恥ずかしさに頬を染めながらも、甲斐甲斐しい新妻のようなテキパキとした料理の様子を、翔羽と羽月は嬉しそうに、幸せそうにじっと見つめていたのだが。




料理を終えて、食事を出す頃には、その恥ずかしさも落ち着いていたのか、普段のようにふんわりとした笑顔を浮かべながら、いそいそとリビングのテーブルに料理を盛り付けた皿などを置いていく涼羽だったのだが、羽月の『お兄ちゃんって、本当に可愛いお嫁さん!』という言葉に、またしてもその恥ずかしさを思い返すこととなってしまい、せっかくのふんわりとした笑顔が消えて、またしてもその顔がどうしようもないほどの恥ずかしさに染まってしまうことと、なったのだ。




食事中も、涼羽のことが本当に大好きで大好きで、可愛くて可愛くてたまらない羽月と翔羽が、モデルをする前以上に涼羽にべったりとしてくるようになり、その度に涼羽はちゃんと食べよう、などと注意をするのだが、そんな涼羽も可愛いのか、二人はますます涼羽にべったりとするようになってしまい、食事をしながらも、これでもかというほどに涼羽のことを可愛がるようになってしまっていた。




食事を終えて、逃げるようにキッチンに飛び込んで後片付けに取り掛かる涼羽だったのだが、そんな姿も、翔羽と羽月は後ろから覗き込むようにじっと見つめて、その頬をゆるゆるにしていたのだが。




ようやく、と言った感じで、一日の一通りのルーチンワークを終えて、少しゆっくりしようと思っていた涼羽に、まず羽月がべったりと、いつものようにその華奢で柔らかな胸に顔を埋めて、思いっきり甘えだすと、それに続くかのように翔羽が、涼羽と羽月の二人まとめて、その長身痩躯な身体ですっぽりと包み込むかのようにぎゅうっと抱きしめてしまう。




まさに、翔羽も羽月も、涼羽は自分だけのお嫁さんと言わんばかりに、これまで以上にべったりと抱きついてきたりしてしまうのだ。




やはり、羽月同様、翔羽も最愛の息子である涼羽の、あんなにも世の男達にとって理想以外の何物でもないほどの素敵で、清楚で可憐な花嫁姿が、全国的に展開されてしまってからは、いつもいつも涼羽が誰かにとられてしまうのではないのか、とか、あの可愛くて可愛くてたまらない涼羽が、誰かのところに嫁に行ってしまうのではないか、などと、本気で心配するようになってしまっている。


当然ながら、自分の会社の中でも、『SHIN』と『SUZUHA』という、今まさに時の人となっているモデルの話がトレンディとなっており、特に男達の『SUZUHA』を見る目が、まさに理想の花嫁に恋焦がれるものであったり、自分にとってのアイドルを見るようなものであったり、さらには、男として、純粋に理想的な女性である『SUZUHA』を肉食獣のごとく見つめる、欲望に満ち溢れたものであったりと、『SUZUHA』の正体である涼羽の父親としては、本当に気が気でならない日々が、続いている。




うちの可愛い子をなんて目で見るんだ、と言えたら、どれほど気が楽になるだろうかと考えたことも、一度や二度ではなく、たまに本当に口を滑らせてしまいそうになったりしているのが、今の翔羽だったりする。


だが、自分の息子である『高宮 涼羽』としてではなく、その名前以外は全てが謎に包まれているモデル『SUZUHA』として展開されたからこそ、涼羽にそんな男達の視線が向くことはないのだと思うと、この秘密を暴露することは、まさに自分の首を絞めるようなものであり、なおかつビジネスパートナーとしてお世話になっている会社に、これ以上ない迷惑をかけるようなものだというのは、百も承知だから。




ゆえに、会社ではそんな社員同士の話題も聞かぬフリをしており、ひたすら忍耐の日々が続いている。




だからこそなのか、家ではその反動もあって、今まで以上に涼羽のことを誰の目にも触れないようにすると言わんばかりにべったりと抱きしめて、包み込んで、とにかくその可愛い息子を思う存分に可愛がるように、なってしまっている。




「も…もう離して…」




自分がどれほど、周囲の人間から好意の目や、欲望の目を向けられる存在なのかを全く分かっていない涼羽は、そんな父と妹のやきもきした心を知る由もなく、いい加減離して欲しいという声をあげる。




自分がモデルをしてからというもの、とにかく父、翔羽と妹、羽月が自分に以前よりもべったりとしてくるようになっているのは、さすがに気づいてはいるのだが、それがなぜなのかまでは、全くと言っていいほどに分かっておらず、本当に自分の愛されっぷりにまるで自覚がない状態となっている。




「や~♪お兄ちゃん大好きだから、ぜえ~~~~~ったいに離したくないもん♪」


「そうそう!涼羽が可愛すぎて、大好きすぎてたまらんから、絶対に離したくないもんな!」




ゆえに、どこまでも無自覚愛されキャラな涼羽のことを、この二人が離そうなどとするはずもなく、もうこれでもかと言わんばかりに羽月は涼羽にべったりと抱きついて、その胸に顔を埋めて甘えてくるし、翔羽はそんな羽月もろとも、涼羽のことをぎゅうっと抱きしめて、離そうとしない。




まさに一家の団欒と言えるこの時間帯、ここ最近は翔羽も羽月も、まさに自分達がどれほどに涼羽のことを愛しているのかをアピールするかのごとくに、涼羽のことを可愛がってしまう。


自分達に可愛がられて、本当に恥ずかしそうにしている涼羽がますます可愛らしく見えて、もっともっとと言わんばかりに可愛がってしまう。




どれほどに、この世の理想を形にしたかのような、清楚で可憐で、綺麗で可愛い花嫁姿を全国的にお披露目する形になって、世の中の多くの人間が涼羽に首っ丈な状態になっているとしても…


むしろ、だからこそこの可愛いの化身と言えるほどに可愛い存在である涼羽を、自分達が独り占めするかのごとくに、めちゃくちゃに愛してしまうのが、翔羽と羽月なのである。




そんな二人に、この日もこれでもかと言えるほどに可愛がられ、愛されることとなってしまい、その顔に恥ずかしさに満ち溢れた表情を浮かべながら、ひたすら恥ずかしさに頬を染めることとなり、しかし抵抗らしい抵抗などできるはずもなく、ただひたすら、父である翔羽と、妹である羽月の二人に可愛がられ、愛され続けることとなってしまう涼羽なので、あった。

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