第6話 わたしだけのお兄ちゃん…
「ん…あっ…」
日が沈み、夜も深くなる午後八時過ぎ。
人間としての一日のルーチンワークとなる夕食も、その後の片付けも終えた後。
六畳一間の広さの四角で造られた一室。
この家の長男である、涼羽の私室。
その部屋の中に、妙に艶を含んだ声が淡く響く。
「ん…ちゅう…」
決して広い、というほどでもない部屋の中。
中央にしかれた布団の上。
その上に兄である涼羽が仰向けに体を横たわらせ。
妹である羽月が、涼羽の体に覆いかぶさるように抱きついている。
そして、その華奢で儚げな上半身が露になっている涼羽の胸に顔を埋め。
母親の母乳を求めるかのごとく、その胸の飾りに吸い付いている。
「あ…羽月、も…もっと優しく…」
「ちゅう…ん…」
幼い少年のような、少女のような危うい可愛らしさに満ちた造りの顔。
その顔に、妹に対する慈愛と、胸から来る刺激に対する被虐のような何かが共存している。
夕食と片付けを終えた直後、羽月に手を引かれて自室に来ると、いきなり兄である涼羽の上半身の衣服を脱がし…
すでに整然としかれていた布団の上に押し倒し…
その露になった華奢な肢体にぎゅうっと抱きつき…
まさに母親の授乳を求めるかのように、兄にその行為を求めたのである。
突然の妹の行為にわけも分からず、ただされるがままだった涼羽。
しかし、最終的にはそんな羽月の行為も受け入れ…
妹の小柄な体を包み込むように抱きしめ、頭を撫でてあげている状態だ。
「ん…お兄ちゃんのおっぱい、おいしい」
「ひゃっ…あ、味なんかないだろ…」
幼さの色濃い、人並み以上に整った可愛らしい羽月の美少女顔に至福の表情が浮かぶ。
涼羽自身気づいてはいないが、実際に母乳が出てはいないにも関わらず、その胸の飾りからはほんのりとした甘さが存在している。
それがなぜか、と聞かれても答えることはできないだろうが。
それに加え、涼羽自身のほんのりと甘い感じの、思わず吸い込みたくなるような匂い。
さらには、その男子としては小柄で華奢な体で、妹を目いっぱい包み込む包容力。
もともと家事全般を好んで、とまではいかないが積極的に取り組み。
長男であるからか、年下の子供に対する面倒見もよく。
そうして嬉しそうな顔を見せる子供に対してふと見せる、心底嬉しそうな表情。
基本的に女子力の高い涼羽であるがゆえに存在するであろう、その母性と慈愛。
そんな兄のそれらを独占するかのごとく、羽月は兄の体を離そうとする素振りすら見せることもない。
「おいしいもん。だから、わたしお兄ちゃんとこうするの、すごく好きなんだから」
自分が生まれた時にはすでに母親はこの世におらず。
父が再婚することもなかったため、母親の愛情を与えてもらえなかった羽月。
そんな羽月は、母の愛情を無意識のうちに心底求めるようになっていた。
そして、ようやくそれを与えてくれる存在にめぐり合うことができた。
まさかそれが、男である実の兄であろうとは、思わなかっただろうけど。
しかし、その兄が与えてくれるものは、まさに羽月が求めていたものだった。
だからこそ、ここまでに兄を求め、兄に甘えてしまう。
その兄の愛情を求めるがごとくに、再び涼羽の胸に吸い付き始める。
「!ふあっ…」
涼羽の口から、抜けるような声が漏れ出す。
涼羽自身、体が過敏といえるほどに敏感なためか、どうしても過剰な反応になってしまう。
涼羽にとっては、そんな反応をしてしまう自分を妹に見られてしまうことに、羞恥を感じてしまう。
本当は、こういうことはあまりしてほしくはない。
でも、妹がこんなにも可愛らしく甘えてくれるのを拒絶することもできない。
それに、妹をこうして優しく包み込むことには、言いようのない幸福感を得てしまう。
そんな混沌とした心境が、涼羽の羞恥を煽るスパイスとなっているのかも知れない。
「や、やあっ…は、羽月…あんまり激しくしないで…」
「ん~♪ちゅうっ」
羽月も、羞恥に打ち震えながらも自分の望むままに甘えさせてくれる涼羽の姿が、あまりにもいとおしくて、あまりにも可愛すぎて、ずっと見ていたくなるほどなのだ。
自分がその胸の飾りを味わい、母乳を吸いだすかのようにすることで見られる、その被虐的で艶っぽく、それでいて可愛らしい兄の姿。
三つも年上で男である兄の、そんな姿。
それを見れば見るほど、羽月は涼羽のことがもっともっと好きになる。
それを見れば見るほど、羽月はこの兄を自分だけのものにしたいという、そんな独占欲に満たされる。
実際、涼羽に初めてこの行為をお願いして、それを受け入れてもらってからというもの。
羽月の涼羽への愛情はとどまる事を知らぬほどに膨れ上がっている。
自分が求めていた愛情を自分が望んでいた以上の形で与えてくれる兄を心底求めてしまうのとは別に…
もう絶対にこの兄を自分だけのものにしたい、といった独占欲がとめどなく溢れてくる。
「ちゅううっ…ほにいひゃん、らあいふき♪(お兄ちゃん、だあい好き♪)」
「!ひあっ…口に含んだまま、しゃべらないで…」
とめどなく溢れてくる兄への愛情を、兄の胸に吸い付いたまま言葉にする羽月。
そんな不意打ちのような刺激に、またしても涼羽の胸を、甘い痺れのような刺激が襲う。
兄の衣類を脱がせて上半身裸にし…
兄の体を押し倒し…
兄の体に覆いかぶさって抱きつき…
兄の母乳を吸いだすかのように胸に吸い付く…
「(えへへ♪お兄ちゃんのおっぱいおいしい♪お兄ちゃん、大好き♪)」
もはや羽月は、兄離れなどできないところまできてしまっているのかも知れない。
今では、兄がそばにいないだけでとてつもないほどに寂しさを感じてしまうのだ。
兄が与えてくれる愛情を。
兄が自分だけに見せる、可愛らしい部分を。
そして、何よりも兄自身を。
狂おしいほどに、求めてしまう。
そんな妹に甘えられ、求められ…
時にはこんな風に辱められ、困らされ…
それでも、涼羽の中でどんどん大きくなっていく母性が…
涼羽にこの妹を拒むことをさせてはくれなくなるのかも知れない。
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